萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第33話 雪灯act.7―another,side story「陽はまた昇る」

2012-02-07 23:10:17 | 陽はまた昇るanother,side story
真実、山の秘密




第33話 雪灯act.7―another,side story「陽はまた昇る」

涙が頬を伝っていく。
この涙は自分の涙?それとも14年を想うひとの涙?
もうどちらの涙なのかも解らない、なぜ涙が流れてしまうのかも解らない。
ただゆっくりと、ふたりの涙がとけあって周太の頬を伝っていく。そして山の雪へと雫になって消えた。

  …3分間にね、俺の14年間の想いを閉じ込めるよ
    この先もきっと君に片想いする。俺の命と誇りを懸けて君に話して接するよ
    そしてこの3分間は俺の真実だ、だから俺達だけの秘密にしてほしい

そう言って国村は自分を抱きしめた。
抱きしめて14年の想いを告げて、きれいに笑って涙を見せて抱きしめてくれた。
そうしていま重ねられた唇から14年の想いが純粋なままに自分の心へ墜ちていく。

  …森の精ドリアード…その姿を一目見てより恋に悩み、心は騒ぎ、涙はあふれ
    山桜のドリアード、俺は待っていたよ?…やっと逢えたね、俺のドリアード
  
重ねられた唇から伝わる想いと、降りかかる涙の想いが温かい。そして哀しくてならない。
唇の想いも涙の想いも14年の想いの歳月がとけこんで、深く心に響いてしまう。
その14年の間に自分は英二に出会ってしまった、そして唯ひとつの想いを抱いてしまった。
その想いの為に自分は知らずにきっと、この美しいひとを傷つけてしまっている。
きっと今こうして抱きしめる瞬間すら、手離す時間の訪れに国村の心は傷ついていく。

  …14年前の雪の森での出会いは心から幸せだった。やっぱり『山』で俺は唯ひとつの想いも見つけた

昨日の朝におきた冬富士の雪崩。
その雪崩に今、抱きしめてくれる肩は怪我を負った、そして怪我に傷ついた誇りと英二の体を天秤にかけた。
それが哀しくて自分は銃口をこのひとに向けた、その銃口の前に微笑んで14年の想いを告げてくれた。
真直ぐに見つめて命と誇りを自分に預けて14年の想いを告げてくれた。

  …君に俺の命も誇りも預けて話したいんだよ。そして全部信じてほしいんだ
    純粋な想いに生きる君だから大切なんだよ。だから泣かないでよ、笑ってほしいんだ
    14年間ずっとね、君の笑顔に逢いたかったんだ。だから笑ってほしいよ?

14年前に出会っていた、それなのになぜ離れてしまう運命だったのだろう?
抱きしめられて唇と涙を重ねて伝えられる、ひたむきに14年温めてくれた想いが切なくて哀しい。
もしもっと早く再会していたら? もっと早く逢ってもっと長く逢えていたら?
もし英二と同じときに出会っていたら、自分は誰と心を重ねていたのだろう?

いま抱きしめられる胸に伝わる国村の鼓動が早い。
ふりつもった想いがすこし果たされる喜びのときめきが伝わってくる。
そして言葉にならない想いの声がキスのはざまから伝わってしまう。

  …俺のドリアード、唯ひとり恋して愛している
    14年間ずっと君だけ想っていた、そしてこれからもずっと、いちばん大好きだ
    ほんとは、いちばん欲しかった。でも君の望みのままに生きる姿はもっと欲しいんだ、そうやって君を守りたい
    山ヤの誇りと自由と同じくらい俺には君が大切なんだ。君は俺の大切な山桜のドリアードだから

心にふりかかる涙と想いが温かい。
純粋無垢なままに想ってくれる恋も愛も透明でまぶしくて、温かい。
温かな14年の想いが自分の心にもゆっくりと降りて積もっていく、ふりつもる想いが響いていく。

  …俺の大切な山桜のドリアード。ずっとずっと愛している、ずっと笑顔を守ってみせる

雪の森にふる木洩陽が額にふって温かい。
梢から雪がときおり落ちて砕けるやわらかな音が起きていく。
雪音と陽ざしが日中南時の近さをしらせて時の経過を告げてくる。

約束の3分間は涯て、くちびるは静かに離れた。

「ありがとう。これで俺、下界に戻れるよ?…ドリアード、」

周太を抱きしめていた長い腕を国村はすこしずつ緩めていく。
まだ腕を周太の体にかけて底抜けに明るい目が静かに微笑んだ。

「泣かないでよ、ドリアード。笑ってほしいよ?14年間ずっと君の笑顔に逢いたかった、そんな俺が目の前にいるよ?」
「…ん、」

ちいさく頷いて周太は微笑んだ。
涙の痕を白い指で拭ってくれながら、紅潮した頬に遺した涙のまま国村が笑った。

「よし、笑ったね?うん、やっぱり笑顔が良いね、きれいだよ、いちばん可愛い」

率直な子供のままの笑顔で周太に笑いかけてくれる。
この笑顔が贈ってくれたキス、そして受けとめた純粋無垢な想い。もう周太の心の深くへ甘やかな潔さに遺されている。
透明に美しいこの想いに応えてあげられたらと想ってしまう、けれどもう自分は英二への想いを抱いてしまった。
これからどうしたらいいのだろう?解らない、けれどせめて笑顔でいたい、きれいに周太は瞳から微笑んだ。
そんな周太の瞳を覗きこんで国村が明るく笑ってくれた。

「さて、ドリアード?君を下界では何て呼ぶことが俺には許される?」
「…俺の、呼びかた?」

訊き返す周太に底抜けに明るい目が笑ってくれる。
周太の瞳を見つめて愉しげに笑いながら国村は口を開いた。

「うん。ほんとうは『周太』って呼びたいけどさ、きっと君の嫉妬深い婚約者がそれは許さないよね?
でも今までの『湯原くん』よりは、すこし近づいた呼び名が俺は欲しいよ、だってキスを貰ったんだからさ」

底抜けに明るい目が誇らかな自由に笑ってくれる。
周太の英二への想いを尊重してくれながら国村は、自身の想いを堂々と示してねだってしまう。
こんな大らかな想いを自分に与えてくれる、ただ想いが温かくて周太は微笑んだ。

「…そんなふうに言われるとね…恥ずかしくなるよ?…でも、名前で呼ぶのは英二が怒るから…」

自分は英二の婚約者になったから、もう国村の求めるような伴侶にはなってあげられない。
けれど友達になることは出来るだろうか?そんな想いのなかで周太は訊いてみた。

「同期とかは、『湯原』って呼んでいるけど…あの、友達ではいてくれる?」
「うん、『湯原』はいちばん妥当だね。でも、友達にはなれない。そんなの無理だね」

透るテノールの声ではっきりと国村は拒絶した。
そして底抜けに明るい目で笑いかけてくれた。

「ドリアード、君を友達だなんて想えない。言っただろ?俺はずっと片想いし続けるよ。
君は俺にとって永遠に最愛の人だ。たとえ抱くことが出来なくってもね、心は誤魔化せないだろ?
だから許してほしいよ、片想いし続けながら君を見つめて生きることをさ。でもね、なんにも俺に遠慮はいらないよ?」

細い目を温かに笑ませて周太を見つめてくれる。
やさしく見つめて愉しそうに口を開いて国村は言ってくれた。

「俺はね、君が幸せな姿を見つめたい、幸せな笑顔を見ていたい。
だからね、君がいちばん愛するひとの元へ君を帰してあげたいんだ。だから俺に遠慮はいらない。
愛するひとの隣はさ、いちばん幸せな笑顔になれるだろ?そんな君の笑顔をね、俺はひとつでも多く見たいよ」

大らかにくるんでくれる想いが、言葉の1つずつから伝わってしまう。
こんな愛情が自分に向けられることが不思議で得難くて、畏むような想いすら起きてくる。
そんな周太の瞳に明るく笑って悪戯っ子の目で国村が言葉を続けた。

「ま、そりゃね、君の愛するひとの隣がさ?俺の隣じゃないのは、まあ悔しいけどさ。でも仕方ないだろ?
それに俺はね、宮田も大好きだ。あいつは俺の最高の友達でアンザイレンパートナーだ。
一緒に最高峰に立つ運命のパートナーだよ。だから俺はね、あいつの事だって大切にしてやりたい。
だから下界ではね、俺は君の『友達』ってフリするよ?すぐ近くで笑顔見たいからね。だから『湯原』って呼ぶよ、いいね?」

「…ん、はい」

微笑んで素直に周太が頷くと、満足げに底抜けに明るい目を細めて国村は笑ってくれる。
そして穏やかに温かい眼差しで、きれいに笑って国村は言った。

「けれど君は本当はね、俺の山桜のドリアードだ。
俺の唯ひとり最愛の人だよ。俺の命と誇りをかけて変わらない、ずっと愛していく。
そして君が俺のドリアードだということはね、俺と君だけの『山』の秘密だ。『山』の秘密は誰にも話してはいけない、いいね?」

率直で純粋な想いの告白が心に明るく響いてくれる。
こんな大らかな恋愛もあるのだと不思議で、そしてなんだか周太は納得していた。
だって山の申し子の国村ならば、こういう『山』中心の大らかな恋愛が自然だろう。
その対象が自分だということが不思議で途惑う。それでも、応えられないならせめて素直に頷きたい。微笑んで周太は頷いた。

「はい、」
「うん。じゃ、遠慮なく俺は片想いを愉しむからね?よろしく、俺のドリアード」

きれいな笑顔で国村はうれしそうに幸せに笑った。
この笑顔が求めてくれる想いと違うけれど自分も国村が大好きで、だから笑顔はやっぱり嬉しい。
けれど、すこし心配で遠慮がちに周太は訊いてみた。

「でも、あの…英二はね、すぐに俺を独り占めしたがる、よ?…そういうときは、見てるの、辛くないの…?」
「うん、そうだな?たまに嫌な時もあるかもね、」

答えてちょっと国村は考えた。
そしてすぐ明るく笑って答えてくれた。

「でもそういう時はさ、あいつ転がして遊ぶから大丈夫。それでストレスなんか飛んじゃうよ。
 またはドリアード、君を転がさせてもらうよ?転がす君はね、きれいに真赤になって可愛いからさ、ほんと眼福なんだ」
「がんぷく?」
「そう、見て嬉しくって癒されるってこと。俺はね、君が笑っている顔も恥ずかしがってる顔も、大好きなんだ」

うれしそうに笑って周太を見つめてくれている。
けれどふと思い出した顔になると悪戯っ子の目になって国村は訊いた。

「ちょっとね、確認だよ?もし宮田のほうからさ、えっちしたいって俺に誘いが来たらね、どうすればいい?」

まっしろになって周太は止まってしまった。
そんなこと訊かれても困ってしまう、首筋が熱くなって頬にも昇ってしまう。
それでも考えて答えないと?ほっと1つ呼吸すると周太は答えた。

「ん、…お互いにね、したいって望むのなら、いいです…」
「うん?ヤっちゃって良いんだね。ほんとに良いの、ドリアード?嫌じゃないの?」

あんまりストレートに訊かないで?
気恥ずかしくて俯きそうになりながらも周太は、温かな細い目を見つめた。

「ん。決めているんだ、…英二には望みのまま自由に生きて心から笑っていてほしい。
きれいな笑顔を見ていたいから…最高峰を望んで登るのを見送るようにね、英二が望むように生きることを、止めたくないんだ」

底抜けに明るい目が周太の瞳を真直ぐ見つめてくれる。
ふっと国村は和やかに微笑んで周太に言ってくれた。

「うん、やっぱり俺のドリアードだね…
やさしすぎる君がね、俺は大好きだよ?純粋でさ…きれいだ。
よし、解ったよ?もし、宮田が望んで俺に誘いかけてきたらさ。あいつをそりゃ満足させてね、良い笑顔にしてやるよ」

からり笑って国村は周太に頷いてくれた。
そして真直ぐ周太の瞳を見つめて笑って「おねだり」をしてくれた。

「さて、俺からひとつ君に『おねだり』だよ?俺のこともね、君に呼び捨てしてほしいんだ。
俺はもう君に告白したんだ、だから『国村さん』なんて距離のある呼び方はもう嫌だね。
もっと近づいた呼び名がほしい。ほんとは『光一』って名前を呼んでほしいけどさ、君の嫉妬深い婚約者はさぞ怒るんだろね?」

いつもの飄々と明るい口調で愉しげに笑ってくれている。
こんな明るさが自分も好きで、一緒に笑えることが楽しいなと素直に想える。
素直に微笑んで周太はすこし考えて答えた。

「ん、…じゃ、『国村』って呼ばせて?それでいいかな…」
「うん、いいよ。あと俺はね、2人の時はドリアードって呼ぶよ?ずっと心ではそう呼んできたからさ」

“ドリアード”はフランス語の発音になる。
さっき国村がくちずさんだドリアードの詩もフランスの詩人のものだった。
周太も父の蔵書でフランス文学は原書で読んでいる、共通の興味の話が出来るかもしれない?周太は訊いてみた。

「フランス文学とか好き?」
「うん、結構読むかな。おやじが文学青年だったんだよね、大学も文学部だったらしい」

話しながら少しずつ国村は腕をほどいていく。
すこしずつ愛しむよう離れながら周太に微笑んで答えてくれた。

「で、俺はね、おやじの形見の本を読んで大きくなったわけ。おかげで結構ロマンチックなセリフも言えるだろ?」

からり笑って国村は腕を開いて、静かに周太から離れた。
そして真直ぐ周太の瞳を見つめて優しく微笑んでくれた。

「さ、ドリアード?下界に降りよう、君の婚約者がきっと待っている。…でも、その前にちょっと、」
「ん、?」

なんだろうな?そんなふうに見上げた周太に温かく細い目が笑んでくれる。
温かに微笑んだ唇でそのまま国村は、そっと周太の耳元にキスをしてくれた。

「…っ、くにむら?」

驚いて周太は瞳を大きくして国村をみた。
そんな周太に愉しげに笑って国村は言ってくれた。

「うん、呼び捨てイイね? で、今のは友達のキスだ。フランス文学じゃよくあるだろ?
これくらいは許してよね、ドリアード?君のために俺は人生を懸けちゃうんだしさ。じゃ、下山しよう」

笑いながら国村は登山ザックを背負うと、狙撃で外したままの登山グローブを嵌めなおした。
そして銃火器ケースを携行すると右掌を周太に向けて差し出してくれた。

「行こう、…湯原?」

苗字を呼び捨てで呼んでくれた。
どこか寂しげで、けれど底抜けに明るい目で笑って見つめてくれている。
頷いて周太は銃火器ケースを持つと左掌を国村に預けた。
周太の左掌を大きな右手で受けとると、きれいに笑って国村は周太に念押しをした。

「威嚇発砲のこともね、秘密だよ?誰にも言っちゃダメだ、解ったね」

警察官の理由なき発砲は許されない。
だから周太の威嚇発砲は抵触することになる、それを国村は黙っていろと言っている。
けれど周太は処罰を受けるつもりでいた、驚いて見上げると国村は温かく笑んで軽く首を振った。

「あのポイントは反響しやすくて谺が続くんだ。だから谺だと思われているはずだ。気にしなくていい」

確かに周太もそれを狙って谺に紛れるように威嚇発砲をした。
でもそれは「万が一の時」のためだった、それが不要になった今は正直に申し出たい。周太は口を開いた。

「でも、俺、」
「いいんだ、言っちゃいけない。俺がそう決めたんだ、だから従ってもらうよ?」

立ち止まって国村は周太に向き直った。
底抜けに明るい目は真摯な想いを映しこんで周太の瞳を真直ぐ見つめてくれる。

「俺を自殺に見せかけるつもりで、谺に紛れるように発砲しただろう?ならそのままでいい。
鑑識実験で威嚇発砲が行われたなんて話になれば唯では済まない。君に射手を依頼した吉村先生にも迷惑がかかる。
それにね、ドリアード?君はね、万が一の時は罪を背負ったまま宮田の隣で生きて、あいつを支えるつもりだった。そうだろう?」

言わなくても解ってくれていた。
どうして国村は解ってくれるのだろう?ひとつ息を吐いて周太は口を開いた。

「…ん、本当は…そんなことしたくなかった、
でも…英二を独り残すことも、出来なくて…だから罪を背負っ…てでも…そばに、居たくて…それで、っ、」

話ながら涙があふれて声が詰まってしまう。
そんな周太に微笑んで国村は片手で器用に登山グローブを外すと、そっと白い指で涙を拭ってくれた。

「うん、解っている…俺はね、全部わかっているよ?
だからお願いしたいんだ。俺を殺す罪を背負う覚悟をしていたのなら、威嚇発砲の罪を背負う覚悟をしてほしい」

罪を背負って。その言葉が重たく怖い、涙の瞳のまま周太は国村を見あげた。
その瞳を底抜けに明るい目で受けとめて、しずかにテノールの声が言ってくれた。

「大丈夫だ、心配しなくていい。俺が命令したんだ、黙っていろって。
俺は警部補なんだ、ちょっとした事情で特進してね。だから階級も2つ上だ、そして高卒任官だから4年先輩だよ。
さあ、この縦社会の警察組織ではね、君は俺の命令には逆らえないはずだよ?これは俺の命令だ、従ってもらう。解ったね?」

俺の命令だから構わない、君は従うだけなんだ。
そう言って国村は周太が犯した罪を被るつもりでいる。周太は頭を振って涙をこぼした。

「…だめ、そんなの…あなたは、何も悪くない…俺だけでいい、罪は俺だけが背負うから、だから、そんなこと言わないで?」
「そんなの嫌だね、」

底抜けに明るい目が大らかに笑って周太の瞳を見つめてくれる。
繋いだままの周太の左掌を優しく握りしめてくれながら、透明なテノールの声が笑ってくれた。

「大丈夫だ、もう俺は君に命令しちゃったからね。
さっき命令した瞬間すぐにね、君と一緒に俺は罪を背負ったんだよ。
そして命令したのはこの俺だ、だから罪の大半は俺が背負っている。俺が勝手に命令して君に押しつけたんだ、何も君は悪くない」

「…そんな、…」

もう何も言えない、周太はただ隣に立って見つめてくれる秀麗な顔を見つめた。
自分がしたことの重さが改めて知らされる、いま優しく見つめる眼差しにただ涙だけがこぼれてしまう。
見つめる想いの真ん中でテノールの声が低く周太だけに透っていく。

「そしてもう1つ命令だよ、最後の狙撃についてだ。
俺は、最後の狙撃で「2連射した」んだよ。わかったね?
その2連射目で俺はザイルを撃ち落とした、俺は君には交代しなかったんだ。いいね?
俺がね、いつも射撃訓練で連射する癖でさ、連射しちゃったんだ。俺がそう証言したらね、君は絶対に否定しちゃいけない」

空薬莢の数がこのあと確認される。
その弾丸数が狙撃回数と合致しなければ「理由なき発砲」が曝されてしまう。
だから国村は周太が撃った最後の一発を、自分が連射したことにして狙撃回数と弾丸数を合せようと言っている。

…いつも射撃訓練で連射する癖で連射した、って言った…まさか、

いつも国村は片手撃ちノンサイト射撃で拳銃を構え、訓練では早く終えるために連射する癖がある。
今日の国村は最後の方に片手撃ちノンサイト射撃に構えて狙撃した、それはこの言葉を言うための布石だった?
最初から周太の意図を察していて、周太を庇う為の備えとしてこの言葉を言う準備をしていた?
それに気付いた今は既に「国村が責任と罪を背負った」ことは動かせない、国村は「命令」してしまったから。

どうして自分の為に?そんな質問の隙すら無い緻密なやり方だった。
そんなふうに国村はきれいに笑って周太の罪を軽やかに背負ってしまった。
どうしたらいいのだろう?周太は国村の目を真直ぐに見つめて、そっと言葉を押し出した。

「…最初から、気付いていたの?…射撃訓練と同じ構えをしたのは…俺が、あなたを、」
「言っただろ、ドリアード?俺はね、君を絶対に守るって」

言いかけた周太の言葉を国村は笑って遮った。
やさしい眼差しで周太を見つめて笑いかけてくれる。そしてテノールの声が穏やかに言ってくれた。

「君にはね、望みのままに恋して愛して、幸せに笑ってほしいんだ。
だから今日もね、宮田のところへ無事に帰してあげたい。
君の幸せな笑顔が見たいんだ、14年間それだけを待っていたんだよ?だから俺の言うこと聴いてね、ドリアード」

底抜けに明るい目で笑って周太を見つめてくれている。
もう何を言えばいいのだろう?ただ涙をこぼして周太は明るい目を見つめた。
そうして見つめる細い目が悪戯っ子に笑うと愉しげにテノールの声は説明した。

「それに発砲の管理なんてさ、人間の規則の話だからね?
俺には大したことじゃない、俺が遵守すべきは山のルールだ。あの峻厳な掟だけが俺を動かせるよ。
だからね、人間が決めた罪くらいならさ、俺は軽く背負えるよ。大して重たくも無い。
だから君が気にする必要なんて何もない、君の笑顔を俺が見たいだけだよ。さ、もう解ったろ?素直に俺に従ってね、」

もうそれで決まりだよ?目だけでそう言って秀麗な顔が微笑んだ。
底抜けに明るい目には誇らかな自由が愉しげに周太を見つめてくれている。
その目にうつる純粋無垢な想いに、周太の心がつきんと痛んだ。

“国村は最高のクライマーを嘱望される最高の山ヤの魂を持った男” いつも英二はそう話してくれる。

そんな美しい生き方をするひとに、自分の罪を背負わせてしまう?
自分はこのひとが求める想いの全てには応えることすら出来ないのに?
どうしたら自分はこの美しいひとに何か少しでも応えられるのだろう?
どうしていいのか解らない。ただ想いに涙をこぼしていく周太を、やさしい白い指で涙拭ってくれる。
そして底抜けに明るい目が笑って周太に言った。

「さあ、湯原巡査?これは国村警部補の命令だ、目上の命令は聴いてもらうよ?
君はただ黙って立っていればいい、肯定も否定もいらない。俺が言っていることを君は横で聞いているだけだ。解ったね?」

肯定も否定もしない。そうすれば虚偽の証言をした偽証罪に問われない。
国村は周太を守る為に「黙秘の命令」をしている、そうやって自分が全ての罪も責任も被るつもりでいる。
そんなことは出来ない、止まらない涙に周太は声を押し出した。

「…そんなこと、出来ない…だめ、」
「嫌だね。君には俺に命令なんか出来ないはずだね、そうだろう?」

明るい目で笑って強く押してくる。
それでも周太は真直ぐに国村の目を見つめて言葉を押し出した。

「俺が自分でやったこと…それなのに。
あなたに罪を負わせたりなんて、俺には出来ない…あなたが大切なのに、俺だって、あなたを守りたい」

涙の向こうで細い目がうれしそうに微笑んだ。
うれしそうな微笑のままで国村が愉しげに口を開いてくれた。

「うん、…そんなふうに言って貰えてさ。うれしいよ、ドリアード?
でもね、ほんとに大丈夫だよ?俺はね、君の罪を背負えてうれしいんだ。君を背負えて俺はね、幸せなんだよ?」

ほんとうに幸せだよ?目でも言って周太に笑いかけてくれる。
そして幸せそうな笑顔できれいに笑って国村は言った。

「俺のドリアード。俺はね、ずっと君の笑顔を守ってみせるよ。何をしたってね。
さあ、俺の言ったことを素直に守るんだよ?そして君は婚約者の隣へ無事に帰るんだ、で、幸せに笑うんだよ?わかったね、」

そう言って優しく笑いながら国村は全ての責任を被ってしまった。
もう何を言えるのだろう?周太はきれいな明るい眼差しを見あげて、ゆっくり瞬いた。
瞬いて国村を見つめると心にひとつ覚悟が納まって、周太は微笑んだ。

「ごめんなさい、そして、ありがとう…幸せに笑うよ?」
「よし、約束だからね?そして全ては秘密だよ、絶対に人に言っちゃダメだ。わかったね?さ、行こうか」

きれいに笑って国村は周太の左掌をひいて歩き出した。
下山していく雪道は明るい木洩陽がふりこぼれていく。
風に揺れる針葉樹の梢から光が明滅して、白銀と蒼い翳が交錯しながら道を照らしてくれる。
締り雪の踏むアイゼンの音を聴きながら周太は国村に訊いてみた。

「どうしてね、美代さんには、怪我をしたこと言わないの…?」
「うん?ああ、心配させるとさ、美代は怒るんだよね。で、おっかないからさ。言わないよ」

可笑しそうに笑いながら登山グローブ越しに繋いだ左掌をそっと握りしめてくれる。
やさしく掌にこめる力の感触が切なくて、心に涙が溜まりそうになる。小さなため息を思わず周太は吐いてしまった。
ほっと白く靄が唇からこぼれた時、ふっと国村が立ち止ってくれた。

「うん…ドリアード?そんなふうにね、俺を哀しまなくていいんだ」

底抜けに明るい目で微笑んで、しずかに屈んで国村は周太の瞳を覗きこんだ。
瞳見つめてすこし首傾げると大らかに笑って国村は言ってくれた。

「俺はね、ドリアード?また君に逢えた、それだけでも幸せなんだ。
もう二度と会えないかもしれない、そう思っても俺は14年間ずっと待つことを止められなかったんだ。
だからね、こうして逢えて、思い出してもらえて幸せだよ。手を繋ぐことも出来る、ほんとうに幸せなんだよ?
俺は君が愛するひとを支えることが出来る、そして君を近くから見つめて守ることも出来る。
それで俺は幸せなんだ、だから哀しまなくていい。笑ってほしいよ、きれいな笑顔を見せてよ、ドリアード?」

純粋無垢なままの想いが底抜けに明るい目で見つめて笑いかけてくれる。
この明るい目が自分も好きだ、だからせめて望むように笑顔でいよう。
ちいさな決意と覚悟を目の前の人の為に心におとして周太はきれいに笑った。

「…ん、…ありがとう、」
「よし、笑ってくれたね?これでいい。
まあ、それにさ、たまに友達のキスはさせて貰うしね?これはね、許可は貰わないよ。
俺はね、したい時に勝手にしちゃうからさ。ま、こんな俺に惚れられた不可抗力だと諦めてよ、ドリアード?」

からり笑って国村は言ってくれる。
「許可は貰わない 勝手に 不可抗力」そんな言葉で周太に罪悪感を持たせないよう気遣ってくれる。
やさしいひと、大らかな想いで自分を本当に守ろうとしてくれている。心から感謝しながら周太は微笑んだ。

「ん、諦めるんだね?…ありがとう、ね。…でも、美代さんってそんなに怖い?」

おだやかな想いを抱いて周太は、話題を下界の現実に戻した。
そんな周太の想いを抱きとめるように微笑んで国村は体を起こすと、また雪道を歩き始めた。

「うん、怖いなあ。明るく笑いながらね、俺が苛々するツボを突いてくる。だからさ、怪我のこと美代には言わないでくれるかな?」
「そうなの?…そういう美代さんって、俺、想像つかないな?」
「だからね、湯原?美代はさ、結構おっかないんだよ。それもあって俺、言えないんだよね」

呼びかたが「湯原」に変わっている。こんなふうに国村は「もうじき下界に戻るね?」と周太に笑いかけてくれる。
もうじき英二に逢える期待がうれしくて、そして国村の純粋無垢な想いが切ない。けれどもう哀しむことじゃない。
きっと自分が哀しめば英二も国村も不幸にするだろう、だから幸せを感謝で抱いて微笑めたらいい。
大切な二人の為に周太は覚悟と想いをひとつの呼吸と呑みこんで、きれいに笑って答えた。

「ん。俺の口からは言わないよ?でもね…たぶん美代さん、気づいてると想うよ?昨日の電話がなんとなく…」
「美代、何て言ってた?」
「ん、…気晴らししたいから一緒にカラオケ行こう、って言われて…」
「うわ、カラオケ。まずいね、そりゃ俺、怒られてるな。困ったなあ。で、湯原?俺、そこに参加すべき?」
「ん、…そうだね?きっと美代さん、それを待っているって気がするな…」

雪の道を曲がった所で急に視界が開けた。
白銀におちる木洩陽に、華やかな長身の姿が明るく照らし出されて登ってくる。
その姿に心の深くから周太の想いが大好きな名前を呼んだ。

…英二、

また無事にこの愛しいひとの姿を見れた。
心からの喜びに周太は微笑んだ、そのときに左掌がそっと解かれて自由になった。
今まで繋がれていた隣を見あげると、やさしい底抜けに明るい目が温かく微笑んだ。

「うん、帰ってあげるんだよ…それで幸せに笑って?ほら、名前を呼んでやりな、」

このひとは心から自分を愛してくれている。
やさしい温もりを眼差しと言葉で受け取って周太は素直に頷いた。
そして登山道の向こうを見つめて想いのままに周太は微笑んだ。

「英二?…迎えに来てくれたの?」

見つめた想いの中心で、大好きな切長い目が大きくなった。
この顔かわいくて好きだな?うれしくて笑いかけると、泣きそうな顔で英二が笑った。

「周太!」

名前を呼んで駈け寄って、掴まえるように長い腕で抱きしめてくれる。
深い森のような香が懐かしい、見上げると切長い目が泣き出しそうに見つめてくれる。
そんな顔をしなくって良いのに?周太は微笑んで英二に笑いかけた。

「英二、お迎え嬉しい、ありがとう」
「だいじょうぶ、周太?何も無かった?国村になんかされてないよね?」

なにも無かった、そんなふうには言えないだろう。
しずかな山懐の雪の森。
そこで14年前と今の想いを見つめてきた。
そして自分はいくつかの約束を、山の化身のようなひとと結んできた。
けれど英二に話すことは少しも出来ない、すべてが「山」の秘密と言いわれたから。
英二は「山」を愛している。その「山」から固く結ばれた約束を、英二を愛する自分が破ることは出来ない。

…だから、この「山の秘密」だけを、生涯ずっと英二に抱いていく、唯ひとつの秘密にしよう

ほんとうは全て話して解ってほしい、そんな想いもある。
けれど「無償の愛」に渇望してきた英二には、大らかな国村の愛情はまだ理解できない。
国村が自分に向けてくれる愛情こそ「無償の愛」だろう。
ただ受けとめ守って笑顔を祈り、その笑顔の幸せを守れるなら隣にいる権利すら望まない。
そんな国村の愛し方を英二はきっと理解できない、英二は自分の全てを掴まえて離さず隣にいたいと願っているから。

だから許してほしい、英二に。
もう自分は望まれるまま英二に全てを与えている、だから唯一つだけは国村に与えることを許してほしい。
なにも求めない国村に唯一つ「山の秘密」だけは与えてあげたい。
そして14年間ひとり見つめ続けてくれた純粋無垢な想いに少しでも報いてあげたい。
その唯一つだけで国村は、これから先の時をも全て自分を愛して守ろうとしているのだから。

聴かなくていい事、踏み込むべきではない領域。
きっと「山の秘密」はそういうものだろう。この「山の秘密」は自分だけが山と結んできたものだから。
ちいさな覚悟をまたひとつ静かに心へ落して周太は、ただ微笑んで英二を見あげた。
見あげた英二は周太の微笑みに、うれしそうに笑い返してくれる。
そんな英二に横から国村が思い切り額を小突いて、からり笑った。

「なあ、おまえ?俺になんかされたって、なにをさ?言えよ、宮田」

底抜けに明るい目がいつものように笑ってくれる、その間に「山の秘密だよ?」と明るく密やかな問いかけが見える。
すこし微笑んだ周太を隣から英二が抱きこんで笑いながら想いを国村にぶちまけた。

「国村ってさ、周太のこと大好きだろ?しかも周太って、かわいいけど色っぽいだろ?
おまえ色っぽいの好きだからさ、変な気を起こしたら困る。手出しされたらって嫌なんだ、俺。
だから俺、エロオヤジのおまえに嫉妬したよ?周太の手を取って一緒に山登れて、羨ましくってさ」

「あーあ、仕方ない男だね?せっかく俺が楽しく湯原とデートしていたのにさ、邪魔しちゃって。嫌だね、嫉妬深くてさ」

さらりと国村は「湯原」と呼び捨てで周太を呼んだ。
英二は周太の右掌を左手にくるむと周太に笑いかけて、雪道に歩き出した。

「なに、国村?周太のこと、『湯原』って呼び捨てにすることにしたんだ?」
「そうだよ?ほんとは名前で呼びたいけどさ、そんなことしたら宮田は怒るだろ?ね、湯原?」

急に話をふられて周太はすこし困ってしまった。
けれど答えは解っている、微笑んで周太は唇を開いた。

「ん。でも、俺もね?『周太』って呼び方は、英二だけ。だから、だめ」

ね、やさしい美しいひと?ここは下界だから今は「山の秘密」の時じゃない、だからこれで良いでしょう?
そんな想いに細い目を見あげると温かく笑って頷いてくれた。
これでいいんだ、きちんと出来たことが喜びで微笑んだ周太の隣で、英二がうれしげに笑ってくれた。

「そうだよ、周太。俺だけの呼び方だよ?ほら、国村?おまえはね、美代さん見てればいいの」
「はいはい、仕方ない男だね、ほんとにさ。あー、でも美代なあ、怒ってるんだろな、困ったなあ」
「雪崩のこと、美代さんに話すか?」
「嫌だね、話すわけないだろ?美代はさ。細かいことなんか訊かないよ、でも勘づいたら怒るんだよね。
 で、怒ると気晴らしにカラオケ行きたがるんだ。まあ、めったに無いことだけどさ?俺、怪我したのなんか初めてだしね」

それで美代はカラオケに行きたいんだな?納得して周太はちいさく頷いた。
たぶん今夜あたり行きたいと連絡が来るだろう、昨日も哀しそうだったから出来ればつきあってあげたい。
けれど、と心がちいさく躓いてしまう。さっき国村に告白された自分への想いと美代への想いが、少しだけ詰まってしまう。

…でも、もう、決めている。逃げたくない、どの想いからも…

英二との「絶対の約束」の想い、国村との「山の秘密」の想い。そして美代との温かで楽しい友情。
どれも大切な自分の宝物の温もりになって、心を温めてくれる。
これは贅沢な望みかもしれない、それでも自分は与えられた想いを全て大切にしたいと願う。
自分は13年間ただ孤独の冷たさを抱いて生きていた、母だけが温かな存在で、父の幸せな記憶すら忘れていた。
だから今はもうどれも手離したくない、きちんと大切にして見つめていたい。
その為に自分は強くなれたらいい。

このあときっと英二と時間を過ごす、そして美代から連絡が来るだろう。
たぶんカラオケに行って話を聴くだろう、そこへ国村も来ることになるだろう。
それから明日は御岳駐在所に行く、英二と国村と自主トレーニングを3人でするのだろう。
どの時にも自分は少し考え込むかもしれない、けれどどの瞬間も大切に見つめて記憶していきたい。
きっとどれもが、大切な宝物の温もりになってくれる。

―宮田くんの隣、大切なら手放さないで。そこで一瞬を大切に重ねなさい
 大切な一瞬を積み重ねて行ったなら、後悔しない人生になるわ  

卒業式の翌朝に母が言ってくれた言葉が、なつかしく心に甦る。
ほんとうに母が言う通りだと思う。あの朝から3ヶ月半以上が過ぎて今、たくさんの大切な一瞬が積まれてきた。
この日々を自分は「生きていた」と心から想えてしまう、今までの人生のいつよりも。
このこと本当は母に話せたらいいなと思う、けれど「山の秘密」だけは話せない。
でも話せることは話したいな、食事も作ってあげたい。そんな楽しい考えと雪道を歩いていると、2人の会話が聞こえてきた。

「おまえだってさ、最高に別嬪のくせにエロだろ。どうせまたこの後もね、湯原にエロいお願いしちゃうんだろ?」
「あ、やっぱり解るんだ?その通りだよ、昨夜はセーブしたからね、」

このふたりいったいなにはなしてるの?
もう2人の顔を見なくたって解る、きっと今すごく愉しくて仕方ないって顔している。
もしかして、このふたりっていつも自分のことそういう話題で盛り上がっているの?
みるまに首筋から熱が昇ってくる、もう顔だけじゃなく体が熱い、恥ずかしい。

「あれ、周太、どうしたの?」

きれいな低い声に訊かれて、もう登山グローブのなかで掌まで熱い。
そんな周太の頬は赤くそまって俯きながら、ちいさい声で訴えた。

「…ばかえいじそんなことひとにいわないでよ…もうばかしらない…ばか」

真赤になる周太を見て国村が愉しげに笑った。
そのまま底抜けに明るい目でさも嬉しそうに口を開いた。

「ほんとかわいいね、湯原?マジ、宮田の気持ちが解っちゃうな」

透るテノールの声はあかるかった。
けれど少しだけ切なくて周太は俯いたまま瞑って、ゆっくり見開いた。
このひとの14年間の想い、これからの想い。どれも満足には応えてはあげられない、けれど出来るだけ大切にしたい。
そうして少しでも与えてくれる温かさを自分も返してあげて、このひとも温もりに幸せになってほしい。
おだやかな願いに周太はきれいに微笑んだ。



(to be continued)

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