走ると痛くなるんです(泣) - 「腸脛靭帯炎」

2009年06月19日 | Weblog
マラソン愛好家のMさん(50代・男性)は走るのが大好きです。

仕事が忙しくても、週に4日は必ず走るのだそうです。(今となっては「走っていた」が正しいのでしょうが…)


マラソン大会にもコンスタントに出場されていたそうですが、

半年ほど前から(不調はもっと前からのようですが…)走りこむと左膝の外側が痛むようになり、

とうとう歩くことも困難なほどの痛みに変わって行ったそうです。

整形外科では「腸脛靭帯炎」との診断が下されました。

以来、走ることを制限し、

痛くなるとシップを張って痛みが過ぎ去るのを待つのですが

痛みが治まっては走り

走ってはまた痛くなり

を繰り返すようになってしまったそうです。

確かに走らずにいるとじきに痛みは落ち着くのですが、

走るとすぐに痛みが舞い戻るようになってしまい

その間隔も痛みの程度も徐々に悪化し(めぐりめぐって)

当院へご来院されたのでした。

(そんなになるまで走るなんて…

走ることの苦手な私にはとてもまねできそうもありません。

でも、そんな私も腸脛靭帯炎は経験済みです♪ 

あれは痛い…)


人生の楽しみを奪われ、虚ろな表情のMさんを調べてみると、

なるほど腸脛靭帯(膝の外側にあり、骨盤と脛をつないでいる靭帯です。)の緊張が強く

その下の外側広筋と大腿骨の外果の間に癒着も生じているようです。

治療としては、手技療法の技術で癒着を剥がし、腸脛靭帯の緊張をとり

正しい動き方を膝に(下肢に… 骨盤も… 体幹も… 腕も…って全部ですね…)覚えこませるための運動療法を行いました。


私の治療院の名前は「とよたま手技治療院」と申しまして

「手技療法」が売りなわけですが、

この手の故障(スポーツ障害やRSI)の治療では、この運動療法がミソなのです。


と、申しますのも、

この腸脛靭帯炎、走っている際に膝が外にグラつく人に起こりやすいのです。

どういうことかって言うと


↑上の写真では左膝が足首と腰よりも外にあるのが判ると思います。

このとき腸脛靭帯は引き伸ばされ、腿の骨(大腿骨)の外側の出っ張り(外果)との間で摩擦を生じます。

走るたんびにゴシゴシこすれるわけです。

間に挟まれた組織(滑液胞であったり筋肉であったり)が炎症を起こせば

立派な「腸脛靭帯炎」の出来上がりです。

走る時の「フォームの狂い」が原因のひとつにあるものですから

運動療法による「ランニングフォーム」へのテコ入れが

再発予防にとても重要な意味を持つのです。


写真の姿勢になる理由として、

痛んだ膝(写真では左膝)に染み付いた癖:関節を取り巻く筋肉や靭帯のアンバランスな固さやゆるさ

が悪さをしている方もいますが、

意外や意外、

右膝が内に入りやすくなったせいで左膝が外に押しがされていたり

固く縮みこんだ右胸が、走る際に上半身を左へと押し込むように動く結果であったり

と、

同じ症状でも千差万別です。

手技治療での介入は個々の状況に合わせて行う必要がありますが、

運動療法による介入は基本的には同じになるのがこれまたミソ!


なぜでしょうか?


手技療法では主に、

意識しても正しく動くことを邪魔する固くなった組織を和らげ、

「そうしようと思えばそう動ける」

といった土台を用意することがその目的となります。

なので、「正しい動きが出来ない要因はなにか?」を個別に判断することから始まります。


運動療法は、正しい動きを出来るようにすることが目的となります。

正しい動きとは、その関節が持つ構造上、一番支えやすい位置で使うということです。

であれば、その方法はターゲットとなる関節の、構造上一番無理のない動き方を繰り返すこととなります。


私が行う運動療法では「介助運動:正しい方向に動けるように手を添えながら動いてもらう」

から始まります。

そうすることで、たとえ多少の固さが残っていても取れてしまいますし

その後に続く機能訓練にスムースに移行することが出来るのです。


Mさんのケースをとっても、正しく動こうにもカチコチに縮んだ筋肉や靭帯、

へばりついてしまった筋肉と靭帯(もしくは滑液胞や骨)が

正しくも何も、動くに動けない状況を作っていたわけです。


なので、手技療法の技法を利用して「動ける」ための下準備をしてあげる必要があったのですね。

でも、あちこちの強張りのせいでいままで使われることのなかった筋肉は弱っているわけですし、

膝をかばった使い方が染み付いてしまっていた場合、

「動ける下準備」だけでは足りない場合が多いのです。

間違った(腸脛靭帯に無理をかける)走り方で走ればまたじきに症状が顔を出してくるのは明白です。

そこで、運動療法。

弱った筋肉に手を貸しつつ、二人三脚で「正しい動き」をもう一度思い出してもらうわけです。

詳しくは6/27にセミナーを致します。

ご興味のある方はこちらをご覧下さい。





さて、話は戻ってMさん。

週1回の間隔で治療し、3回目の治療のあと(私に何の相談もなしに)2時間ほど走ってみたそうです。

(走るのが好きな人って、だいたい3回目あたりで走っちゃう人が多いんですよね… 

ね、Nさん♪)


1時間ほど走ったところで若干痛みが出てきたそうですが、

今までのような強い痛みではなかったそうで、2時間走りきることが出来たと

GOKIGENでした。

4回目の治療では走り方の修正に着手しました。

って、

何を変えようとしたのでしょうか!?

ウォーキングでカラダをいためる方にも多いのですが、

地面に踵を強く叩きつけ、次いで跳ねるように蹴る走り方を変えることを目標にしました。

一週間後に5回目の治療をし、現在は2週に1度に治療間隔をあけています。

今のところは順調に回復しているようです。

次回に会うとき、「いやぁ~、ちょっと無理しちゃって…」

なんてことがないことを祈っています。

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