クイックフィクスは事故の元

2010年04月02日 | 治療の話
治療の世界にも「一撃必殺(←殺しちゃまずいですね)」的な幻想があります。

患者さんの「痛み」を一発で取り去りたい。

という想いは治療家であれば誰しもが抱く夢でしょう。

これを「クイックフィクス」ともいいますが、

この言葉、じつは戒めとして使われる言葉なんです。

なぜ戒められるのかと申しますと、

時には「事故の元」になることもあるからなんですね。

目の前の「痛み」という訴えだけに気を取られてしまうと、

えてして客観的な病態の把握ができなくなってしまうものなんです。

そこが危ない。

事故の元なんです。

例えば、

痛みの原因が筋肉の痙攣であれば、非常に強い痛みを訴えていた患者さんが

「ケロリ」と回復されることもあります。

こういったとき患者さんからは

「あなたの手は『神の手』だ!!」

と、最大級の賛辞をいただくことになります。


でも、痛みの原因が組織の「炎症・損傷」といった「ケガ」による痛み

であった場合はどうでしょうか?

身体の奥深くでブッツリと切れた組織が、マッサージやストレッチで瞬時につながる

ようなことなどないことは、誰しもが理解に難くないでしょう。

こういった時には、身体がキズを癒やすまで待ってあげる必要があるんですね。

こういったとき徒手医学では、傷ついた部位に無理がかからないよう周辺の関節機能を整えたり、

必要以上に血液やリンパの循環がとどこおらないように、患部の過度な緊張を抑えたり

キズが治りやすいような環境を整えて、身体自身が傷ついた組織を治しやすいように

手助けすることを第一目標に治療を展開します。


この場合、上手に手を入れることができたとしても「キズ」自体は残るわけですから

残念ながら

「その場でスッキリ」

とはいかないものなのです。


ただやるのとやらないのとでは回復までの期間が

変わってくる可能性が考えられます。


要するに、カラダの状況によって治療の方向性が大きく変わるわけなんです。


それが、ですよ。

『むむむ、まだ痛むとな!?

しからばこれでどうじゃ!

秘技●×▲※■~!!!』

と、傷口をこねくり回してしまったとしたらどうでしょう?

傷が悪化することはあっても、癒える道理がないと思いませんか?


私が修行時代、師匠のDrはこの

「クイックフィクス:一撃幻想」

をよく戒められたものです。


最近どういうわけか、

「 長年苦しめられてきた神経痛が、魔法のように治るそうじゃないか。

ASTRという治療法をやってくれ。」

と、ご相談をいただくことが増えています。

何でも、ある健康雑誌にASTRの特集が組まれており、

そこにそういった話があるというのですが…


少なくともそれを書いたのは私ではありませんし、

ASTRはよい治療法ですが魔法ではありませんので、

一発で長患いが消えてなくなるというのは難しいと思われます。

ましてや、明確な神経の故障や、長期にわたって形成された

組織の変性があるものに対しては回復にも時間がかかりますから、

一撃でなんて無茶な話です。


この場合「健康」を取り戻すのに大切なのは、

計画的に治療を進めることではないでしょうか。


たしかに魔法のように痛みが消えるケースもあります。

それはASTRという技術でなくとも、です。

技がどうこうではなくて、すぐに治るにはそれなりの道理があったということでしょう。

その痛みは治るべくして治ったんです。

そして、すぐに治らないものにもその道理があると思います。

大切なのは身体の「道理」にそって正しい回復を積み重ねてゆくことだと

そう考えて日々臨床にあたっています。


なんとも夢のないことを言ってすみません。

でも、出し惜しみなく「良い仕事」を日々心がけ治療にあたっております。

お困りの際はお気軽にご相談いただけましたら幸いです。

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