脛骨後方滑り方向へのMWMS~半月板損傷の治療~

2019年10月16日 | 治療の話

膝が痛むとご来院のクロスフィッターのAさん。

2ヶ月ほど前にスクワットで傷めて以来、スクワットやロークリーンでボトムまでしゃがむとカリコリと音がなるようになり、
 
膝裏に引っかかるような抵抗感と鈍い痛みが走るようになったそうです。
 
膝裏の痛みは立ち際に鋭い痛みに変わるんだそうで、まともなトレーニングができないまま…
 
調べてみると、外側半月板の損傷が見つかりました。
 
(徒手検査での判断なのであくまで「疑い」ですが、まず間違いなく半月板損傷です)

膝関節の曲げ伸ばしにおける脛骨(スネの骨)の正常な動きは
 
「曲げ終わりに内旋(爪先が膝に対して内に向く)」
 
し、
 
「伸ばし終わりに外旋(爪先が膝に対して外に向く)」
 
します。
 
Aさんのスネは外旋したまま内旋しない状態でした。
 
こうした制限では膝の曲げ終わりで「膝裏に物が挟まった感じ」の抵抗を感じることがあります。
 
なので、まずは脛骨の内旋方向の動きをつけました。
 
具体的には大腿二頭筋と腓腹筋内側頭の緊張を解きます。
 
一手加えた時点でいったん症状の変化を確認します。
 
予想では「あっ!痛くない!」と笑顔を見せてくれると思っていたのですが、Aさんの顔は曇ったままです。
 
聞けばまだ痛みも雑音も残るとのこと。
 
こうした時は、患部がまだ急性期(炎症が残る)にあるのか、慢性期にあっても損傷が深くてまだ動作の負荷に耐えられないか、そんな理由が考えられます。

しかし、まだ「見落としがあるために痛みが消えていない」という可能性も残りますので
 
念のためAさんの膝をもう一度調べ直します。
 
もう脛骨の回旋はきれいです。
 
しかし、膝の曲がりを調べたとき、スネの後方への滑りにわずかな抵抗が見つかりました。
 
抵抗感の小ささからAさんの痛みの訴えに見合った原因としては心もとなく感じないこともなかったのですが、
 
わずかな制限が大きな故障の原因だったケースを今までになんども診てきましたので、
 
今度はこの問題に対して手を加えてみることにしました。
 
手法はモビリゼーション・ウィズ・モーションズ(MWMS:運動併用モビリゼーション)をチョイス。
 
結果やいかに!?
 
私「もう一度スクワットしてみてください」
 
Aさん「あ、痛まないです!」
 
今度は笑顔のAさん。
 
れき音も抵抗感もなくなったと喜んでくれました。
 
良い結果ですから喜ばしいことなのですが、
 
見落としだったということですので、内心は嬉しさとくやしさは五分五分といったところ。
 
ともあれ、一先ず自重でのスクワットはクリアできました。
 
しかし、これで怪我前の重量を扱えるかはまた別の話。
 
Aさんには「ここからリハビリが始まる」ことを伝え、セルフケアをお伝えしてこの回の治療を終えました。
 
MWMSという手法は今までも散々使ってきた道具でしたが、半月板損傷にここまで効くとは少々驚きました。
 
もちろんAさんの膝がMWMSに反応できる状態だったからこその結果であって、
 
半月板損傷の相談全てに同じ効果をもたらすと断言することはできません。
 
ですが、それを差し引いても非常に興味深い症例となりました。
 
治療の世界に足を踏み入れて20年。
 
まだまだ新しい発見はあるものですね。

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