広島交響楽団 第25回廿日市定期演奏会
2022年04月19日(火)
17日、広島交響楽団第25回廿日市定期演奏会へ行って参りました。
ムソルグスキーの「展覧会の絵」は、死ぬまでにどうしても聴いてみたい曲でした。
原曲はピアノ曲ですが、ラヴェルが編曲したオーケストラ版の方がよく聴かれるようになっています。それはもちろん、オーケストラの魔術師と言われたラヴェルの腕前によるものだと思います。
中ホールです。
オケの団員が所狭しと座っている感じでオケには少々舞台が小さいです。
低域の残響がよく響くホールと感じました。
フルートのお二人はいつも練習をしておられます。
第10曲のトランペットのソロが長く続く部分がこの曲のハイライトです。広島交響楽団には金井晶子さんという名トランペッターがいるのですが、この日は、プログラムを見ると恐らく多分ゲストトランペッターを迎えたのだと思います。超難技巧と思われ正直息切れを感じる部分はありましたが、トランペットの煌びやかな音色がこの曲に金色の色彩を与えます。
僅かに手が動いているので、音を出しているのだと分るヴァイオリンのピアニッシモには驚愕しました。目でしか聞こえない音を出す!のです。
小太鼓のクレッシェンドには、その連打のスピードの技巧もさることながら、フォルテッシモの限界を超える音があることを知りました。
楽器群の掛け合いも見事でした。金管群が圧巻の音量で圧倒すると、音量では金管には叶わないが「この音の厚みはどうだ!」と言わんばかりに弦群がユニゾンの分厚い音で対抗します。
圧巻はもちろん、キーウの大門です。指揮の飯森範親は、スロウテンポで、それはともすると間延びになりがちですが、飯森は溜めに溜めて爆発に持って行きます。一瞬の休止符の後のシンバルのガラス破片が飛び散るような一撃で、身体が硬直し、周りからの拍手で、ハッと我に返りました。
最後にお辞儀をするのが広響の礼儀です。
ウクライーナでの戦争を念頭に置いたアンコールでした。
このたび、改めてピアノの原曲版をリヒテルの演奏で聴いてみました。1958年にブルガリアのソフィアで演奏したライヴ音源です。初めて聴いたのは二十歳の頃音楽喫茶「ムシカ」でした。ミスタッチも多く完璧な演奏とは思われないのですが、その畳みかけるようなアップテンポに衝撃を受けました。リヒテルが最高のピアニストと思った瞬間です。
リヒテルはウクライーナ出身のピアニストで、他には、ホロヴィッツ、ギレリスがいます。旧ソ連のピアニストといえばあとは、アッシュケナージくらいしか思い当たりません。ピアノ以外では、作曲家のプロコフィエフ、シマノフスキ、ヴァイオリンのオイストラッフやミルシュタインなどがいます。
プーチンはロシア聖教の敬虔な信者と言われていますが、そのロシア聖教も発祥はキーウと言われています。音楽でも宗教でも、ウクライーナの存在が大きく、それにプーチンは嫉妬しているのではないかとも思います。
「死ぬまでにどうしても」と思って聴いたのですが、改めてもう一回は聴いてみたいと思うようになったのです。こう思わせる「魔術」にもかかったようです。(ハハハッ)