オーケストラの人びと 原田三朗著
2016年2月18日(木)
この本は、日本におけるオーケストラの小史ともいえるべき書です。主に人びとの営みについて書かれています。
NHK交響楽団の前進は日本交響楽団、更にその前進は新交響楽団で、近衛秀麿が1926年に創設しました。日中戦争が1937年に始まりますので、戦前のオーケストラの歩みは戦争と共にあったといって過言ではありません。それでなくてもオーケストラの運営は厳しいのに、戦争の中にあって、人々は貧乏に苦しみました。
しかし、先人は大変な苦労をして、オーケストラを守り抜いてきました。戦後最初の日本交響楽団の演奏は1945年10月に行われています。あの混乱の中で奇跡的なことと思います。
今日本は、経済的に裕福になり、多くの傑出した若い演奏家を輩出しています。(最近のTVで誰かが言っていましたが、ウィーンでも日本ほど若い演奏家はいないということです。)多分、演奏技術も各段に向上していると思います。作曲家の池辺晋一郎さんによると、「(N響について)基本的な音楽の技術のレヴェルは物凄く高いです。多分世界一高いぐらい高いと思いますね。指揮者によってその指揮者の音になるという、その凄さがあると思います。サワリッシュが振った時のN響とデュトワが振った時のN響は違う音がしますよ。だけどN響の音なんですよ。それが出来ちゃうのが凄いと思いますね。」(注 これはN響のCDのPR映像で語っていたものですので、割り引く必要があるかも知れません。)昔に比べると全てが格段に向上したことは間違いないと思うのですが、でも、私は何か違和感を感じていました。
そのような違和感を感じる中で、私がこの本を読んで良かった(いや解ったと言うべきか)のは、次の記述なんです。
「ゆたかな時代に、音楽もゆたかなんだろうか。オーケストラはいっぱいあるけども、むかしのひたむきに音楽をするこころは、うすくなったのではないだろうか。」
私は、先人の苦労に学ぶということが大切と思います。
この本は楽友に借りたものです。thanksです。
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