お世話になっている音楽座ミュージカルさんは、企業研修のワークショップも行っている。数年前にフリーで見学できる会に参加させてもらった。「ある会社で社長が急逝し、その後を継いだ娘が株主総会でどういう挨拶をすべきか」という課題を参加者が考え、役者さんがやってみる … という形だったかな。そのときの高野菜々の「模範演技」は、その頭の下げ方ひとつに目頭があつくなった記憶がある。役者さんとはそういうものだ。 どう語るか、どう振る舞うかは、役者さんになれるほどの天分を持たない一般人も、学習によって身につけなければならない。それが人として生きていく力であり、「まず心だ」という人もいるが、どちらが先という問題ではない。心ができてない状態でも、謝るという所作をとらないといけないとき、そうすることで心が醸成されることもある。感謝したい気持ちにあふれていても、それを表す身体的な形を身につけていないために、感謝の気持ち自体が減じてしまうこともありうる。
だから本気で申し訳ないと思っている女優さんが、それを身体表現させたなら、舞台作品を凌駕することさえあるなと思った。