水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

脳の代謝

2017年06月12日 | 学年だよりなど

 

  学年だより「脳の代謝」

 関東大会、インターハイ予選が続いている。部活によっては夏休み、二学期と試合が続く。
 今やるべき勉強をこなすには、いくら時間があっても足りないという感覚を抱く人も多いはずだ。
 「あれもやらなきゃ、これもだ、やべ時間が足りない」という毎日と、「ぼおっとしてたら、けっこう時間が経っていた」と感じるのと、どちらが幸せだろう。
 次から次へといろんなことをやりつづけた(やり続けざるを得なかった)日は、夕方の段階でその日の朝が遠い過去になっている。逆に何も予定がなかった休日、気づいたら、何もしてないのに一日が終わっていたということはないだろうか。
 「年をとると一年が早く感じる現象」というものがある。なぜ、そうなるのか。
 それまで生きてきた年月に比して、一年の比率がどんどん下がっていくからだという説が昔からあるが、生物学的には別の理由が考えられると、福岡伸一先生は述べられている。
 人間の細胞の分裂・分化はすべてタンパク質の分解と合成のサイクルによってコントロールされている。タンパク質の新陳代謝速度が、体内時計の秒針に該当するという。


 ~ そしてもう一つの厳然たる事実は、私たちの新陳代速度が加齢とともに確実に遅くなっているということである。つまり体内時計は徐々にゆっくりと回ることになる。しかし、私たちはずっと同じように生き続けている。そして私たちの内発的な感覚はきわめて主観的なものであるために、自己の体内時計の運針が徐々に遅くなっていることに気づかない。
  … タンパク質の代謝回転が遅くなり、その結果、一年の感じ方は徐々に長くなっていく。にもかかわらず、実際の物理的な時間はいつでも同じスピードで過ぎていく。だからこそ、自分ではまだ一年なんて経っているとは全然思えない、自分としては半年が経過したかなと思った、その時には、すでにもう実際の一年が過ぎ去ってしまっているのだ。
 そして私たちは愕然とすることになる。つまり、歳をとると一年が早く過ぎるのは「分母が大きくなるから」ではない。実際の時間経過に、自分の生命の回転速度がついていいけていない。そういうことなのである。 (福岡伸一『動的平衡』木楽舎) ~


 加齢とともに、脳の代謝スピードも遅くなる。ただし、その個体差は身体の差以上に大きい。
 相当のご高齢で知的生産物を次々とものにされている方もいれば、実年齢は若いのに凝り固まった考え方しかできない人もいる。身体以上に、脳は自分でなんとかできる部分が大きいからだろう。
 毎日「ヒマ~」と過ごしている人と、詰め込んで生きている人とでは、時の流れが違う。
 脳の代謝スピードを自分で落としていると、あっという間に時は過ぎ去ってしまうのだ。
 今みなさんが過ごすべき時間は、脳がばりばり代謝している時間だ。
 さすがにゲームをしている人はもういないだろうが、「とりあえず」スマホに手を伸ばしている時間は、脳の代謝が極端に落ちる。気づいたら数日間LINEもtwitterも見てないという毎日を過ごさないと、いろんなことは到底間に合わなくなる。

コメント
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