水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

風船作り

2022年10月25日 | 学年だよりなど
2学年だより「風船作り」




 トレーニング場でバーベルをあげているみなさんを見て、うらやましいと思うときがある。
 やればやっただけ、面白いくらいに筋肉がつく年齢だからだ。
 そして本校の設備はきわめて恵まれている。大人になって同じくらいの設備で好きなだけトレーニングしようと思ったら、相当のお金もかかる。
 トレーニングしほうだいだ。もちろん今は勉強もしほうだいだ。
 「ほうだい」できる健康な身体があることは、本当に幸せだ。
 今「ほうだい」しておくと、体のなかに風船ができる。




~ ご存じでしょうか? 筋肉はいったん作ってしまえば、なくなりにくいということを。それは「マッスル・メモリー」と呼ばれています。
 筋肉を風船だとしましょう。トレーニングをしていると、風船の数が増え、各々も膨らみます。トレーニングを止めると、風船の空気がどんどん減って萎(しぼ)んできますが、風船の数は増えたまま残ります。したがって、久しぶりにトレーニングを再開すると、かつて増やした風船がまた膨らんできます。一方、トレーニングをしたことがない人が中高年になってから初めてトレーニングをする時は、風船を一から作らないといけません。
 中級者はそのアドバンテージを持っている反面、筋肉増加のペースは初心者のペースには及びません。中高年の中級者は月に0.5㎏の筋肉を新たに付けることができれば、かなりいいほうです。つまり、最初は脳がうまく筋肉にシグナルを伝達できませんが、同じ動作を繰り返すことで筋肉への神経伝達が良くなり、筋肉を効率的に動かすことができるようになります。筋肉への伝達がうまくできるようになったら、次の段階は強度を徐々に上げて、筋線維を太くすることを目指します。
      (フィンク・ジュリウス『50歳からの科学的「筋肉トレーニング」』ブルーバックス)~




 これから現代文で「動的平衡」という文章を学習する。人間の身体というのは、そんなに流れるように分子が入れ替わっているのか! と驚く内容が書いてある。
 今のみなさんの身体と、たとえば20年後のおっさんになった身体とでは、分子レベルで全く別人になってしまっているのだ。
 しかし、今日から何年か自転車に乗らなくても、たぶん20年後も乗れるように、からだの記憶は残っている。からだの中に自転車の風船が作られ、それ自体は消滅しないと考えればいい。
 自転車も筋トレも、おそらく勉強も同じだ。苦しい思い、それを乗り越えた経験も、心の風船として残っていくだろう。
 大学で学ぶのは、学問の風船を作るためだ。学ぶ中身そのものは、たかだか四年では、その学問の入り口に到達するくらいだが、受験勉強とは違った種類の勉強をして、その風船を作っておくことに価値がある。

コメント
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