今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

心理学は就職に不利か③:心理学は役に立たない?

2013年02月14日 | お仕事
心理学専攻の学生の就職内定率の低さの原因を探っている。
学生のメンタリティの問題ではなく、大学のカリキュラムの問題でもなく、
その遠因は、心理学そのものにあるのではないか。
心理学と社会の接点の少なさが問題なのではないか。

心理学の応用分野といえば、実質的には「心のケア」の世界と発達・教育の世界に限られている。

かつて私は、心理学者ご指名を受けて民間企業の研究セクションに加わっていた。
研究セクションを立ち上げた人が、心理学者に加わってほしいと思ったからだ。
ところが、結果的にうまくいかなかった。

企業が求める問題について、残念ながら心理学は研究していなかった。
なので心理学側の私としては、その問題は基礎研究からやらないといけない。
でも基礎研究から始めることは、それなりの結果が出るまで何年もデータを重ねる必要がある。
企業は待っていられない。

企業側は、既存の心理学の研究成果やノウハウを、さらっと応用できないかという期待があるのだが、
心理学の基礎研究は製品に直結するようなシロモノではない。

私自身、もともと心理学専攻でなかったが、サークル活動のリーダーシップに悩んで、
社会心理学のリーダーシップの本を読みあさった。
その結果、実際に使えるものは1つも得られなかった。
なので、自分が探求するしかないと思い、社会心理学を専攻することにしたのだ。
私こそ、心理学が一見役に立ちそうで実は役に立たないという事を痛感している1人だ。

そもそも心理学の学会って、産業界やマスコミから注目されることもない
同好の士だけの閉じた世界。

私自身も研究テーマは原理的・哲学的でさえあるのだが、
その一方で、世間との接点がある実用的な研究もおおいに関心がある。
自分の研究結果が製品に反映されるのって、夢だ。

人間の心と行動を研究する心理学は、原理的・可能性的には、人を相手にする企業にとっておおいに関連しうるはずだ。

それを実現するには、
心理学の方が、もっと世間に眼を開けないといけない。

心理学は役に立つ学問でありたい。
「最も理論的なものは最も実用的だ」というK.レヴィン(実験社会心理学の父)の言葉を信じている。

とりわけ社会心理学は、通俗的なテーマ大歓迎。
学生の卒論にも、週刊誌に掲載すればおおいに注目されるものがいくつもある。
たとえば、私の卒論生のテーマでは、
「女性の下着の色の実態と選択基準」
「待ち合わせをしている人の位置と行動パターン」
「着ぐるみの振舞いと人の反応パターン」など(タイトル名は正確ではない)、
日常的・等身大のテーマに満ちている。

企業からの依頼がくれば、学生を使って研究することにやぶさかでない。