論文2本目のノルマ達成を慰労しての温泉旅は、帰京後の関東にした。
要するに論文執筆の集中にも、仕上がっての慰労にも、いずれにせよ温泉旅をするのだ。
宿は、関東随一の温泉県・群馬にある「ファミリーオみなかみ」。
場所は、群馬のど真ん中・沼田から新潟に抜ける三国街道沿いの高台(路線バスあり)。
そこは「たくみの里」と称する、旧・須川宿の集落全体を観光地化しようという大胆な試みの地で、
各家がそれぞれ何かに特化した物品販売か技能体験を担当し(元々自給自足だから可能)、
路傍の石仏や集落内の社寺・祠も探訪ルートになっている(写真は桜の木の下にある一之宮地蔵堂)。
いってみれば、どこにでもあった「日本の里山」を少々工夫して観光地化しているわけだ
(もちろん、食堂、みやげ物店、駐車場も完備)。
より楽しめるように蕎麦打ち体験や、巡回の馬車、貸自転車もある。
伝統的「日本」そのものが観光資源というわけだ
(「日本」という亜文明そのものに世界的存在価値が見出されているといえようか…、いや、この問題は中立的視点で論じる必要がある)。
このような既存の観光地ではない里山の一画に宿がある。
なのでこの集落観光は泊りがけでもできる。
私も釣られて、周囲を散策して里山風景を満喫してから、宿に達した。
ここは JR東日本が経営している、いわば半公共の宿。
ということで室内設備・人的サービスはいたって簡素(無駄がない)。
スリッパは館内のみで、ツイン洋室の室内が裸足なのは私の行動様式に合っている。
それと無線LANが館内どこでも使えるのも良い。
このように、費用をたいしてかけなくても、利用者にとっては価値が高いサービスというのがあるのだ。
残念なのは、温泉。
まず自家源泉ではなく、近所(たくみの里)からの運び湯だった。
しかもそこの源泉自体がアルカリ単純泉としても溶存量が少なく、ここではそれをさらに加水しているという。
実際、浴槽の湯を測ると、電気電導率が97μSとやたら低い(成分がとても薄い)。
これは白湯レベルの値なので、洗い場の湯を測るとさらにその半分ほどだった(要するに浴槽の湯は白湯ではない)。
その上、源泉はアルカリ性らしいが、加水の影響か浴槽の湯の pHは6.8と中性なので、結局「ほとんど白湯」(気分だけ温泉)という評価になる。
浴室空間も「中浴場」(≒ルートインの浴室)レベルなので、繁忙期だと大混雑するだろう(客室内にも白湯の浴室がある)。
一方、無料のマッサージ機が2台あるのは嬉しい。
立派なマシンで脚も腕も圧迫してくれる。
湯上がりにこれを利用するので、温泉の低評価から少しは挽回できるかな。
私が選んだ夕食は、赤城牛のしゃぶしゃぶコース。
メイン(肉+野菜、キノコ、シラタキ)以外に刺し身、焼き魚、天ぷらもつく。
山向こうは新潟だからか、なんと「越の寒梅」や「久保田」が升酒で450円。
しゃぶしゃぶもゴマだれと醤油だれの2種類がつくので、肉はゴマ、野菜類は醤油と使い分ける。
最後にご飯を頼んだら椀に盛られた白米だけが出された。
最初から卓に出されていた漬物に手をつけない私を見た給仕の女性は、あえてお茶を出してくれた(漬物をご飯のおかずにする人と、おかずにせずお茶請けにする人に分れる。農民出が前者で、武家出である私は後者)。
漬物は茶請けに食べ、残ったご飯は仕方ないのでしゃぶしゃぶのタレの残りをかけて食べた。
その後にその場で豆を挽くコーヒーも出た。
また自販機の所に製氷機があって、氷もいっぱい手に入る(有料の宿もある)。
というわけで、夕食は量的に満足し、質素だと思ったサービスも無駄なく充実。
湯の泉質さえ目をつぶれば、散策路にも事欠かないし、連泊してのんびりするのにいい所だ。
ただし混む時期は避けた方がいいな。