今月13日に、ニュージーランドで地震があり、死者こそ出なかったものの、
5年前のクライストチャーチの地震被害(2011,2.22)を思い出した。
そして5年前はその翌月に、 M9の東北地方太平洋沖地震が発生したわけだ。
実はその3.11の2日前に三陸沖で M7.3の地震(前震)があって、最大震度5弱だった。
今日の明け方の福島県沖の地震は、 M7.4で最大震度5弱。
とてもいやな予感がする。
と、ここまでは、よくあるネットの書き込みと同じ。
ここで終わらないのがこのブログ。
偶然の事象にも有意味性(規則性)を見出そうとするのは、人間が生まれつき持っている認知的バイアスによるもの。
本来インクのシミでしなかいものに何か意味のある形が見えてしまい、それが心理テストとして使われる所以だ。
たとえばニュージーランドの地震を日本の地震に結びつけるのは、
過去に1,2回起きただけで”法則”視してしまう「小数の法則」というバイアス 。
行動経済学などのシステム1・2の研究には、日常判断で陥るバイアスの例で満ちている。
これはわれわれの知性が、ことさら確率論的現象を理解するのが不得手であるためであることがわかっている。
すなわち、ランダムをランダムとして理解するのがとっても苦手なのだ。
もっとも、野生の生活世界ではランダムな事象より、有意味な事象の方が多く、
あいまいな状態から有意味性(薮に隠れた餌や天敵)を発見する能力の方が生態学的に価値があった。
では客観的な統計では11月に特徴はないのか。
私の手元にある過去(西暦679年から)の日本の地震(M7以上あるいは死者のでた地震)では、214件のうち11月は21件。
過去のブログで「大地震に季節性はない」と結論づけたように、格段多いとはいえない。
でもこれも偶然の範囲内かもしれないが、
11月26日は、過去に3回起きている。
たとえば、北伊豆地震(1930年、死者・不明者272名)がそれだ。
この集計によると、ある日に大地震が起こる期待値は1300年間でおよそ2/3回(214/365)であるから、
特定の日に3回起きているということは期待値の4.5倍である。
ただ、確率論的には特異現象とみなす必要はなく、既存のポアソン分布で説明可能だろう。
ただ、そうやってあえて安心方向に誘導するのも、「正常性バイアス」という防災には望ましくない態度につながる。
実際、今朝東京で震度3の揺れで目覚めたものの、「大丈夫だろう」(正常の範囲内)と解釈してそのまま寝入った。
そこで防災的見地としては、危ないと思ったら(その判断がバイアスに依っていても)、素直に防災に敏感になりたい。
地震は予測不能であるから、予測していてもいなくても起こるのだ。
ならば予測の閾値を低くして、「明日起きそうだ」という思いを抱きやすいようにしよう。
今日の地震がより大きな地震の前震である可能性は、過去の例からありうるし、
そして11月26日前後は過去の例から、気をつけるに越したことはない。