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邂逅の森 熊谷達也
とにかく面白いという言葉に尽きる。明治から大正時代の日本を舞台に、戦争などの世界情勢の影響を受けて大きく変わっていく日本の姿と重なるように、農山村でたくましく一途に生きる主人公が静かに語られる。読み進めていくと、物語のなかで主人公が少しずつたくましくなっていくように感じられる。山で狩猟を生業として暮らす「マタギ」の話で始まるのだが、主人公は早々に不本意な事情で「マタギ」を辞め、鉱夫として再出発する。一見、かなり波乱万丈の半生だが、主人公に訪れる様々な偶然は、単なる偶然ではなく、愚直だが本当に芯の強い「マタギ」の精神を失わずにいる主人公が自ら引き寄せる必然のようにも思える。主人公の生き方に感銘を受けるのは、現在の風潮と対極にある自然への畏敬、自分への正直さ等が際立っているからだろう。「マタギ」というものが単なる職業ではなく、「生き方」「心のあり方」なのだと思い至る。(「邂逅の森」熊谷達也、文春文庫)
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