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霧笛荘夜話 浅田次郎
吹きだまりのような霧笛荘のアウトローな住人の人生が、戦後の混乱期の雰囲気色濃い暗い文章で語られていく本書。ストーリー的には大きな事件もなく淡々とそれぞれの登場人物の人生が語られ、構成は、ある人の話のなかで脇役だった人が次の主役になるという構造がいくつも重なる連作だ。白黒の画面に少し音響の悪い音楽が流れる大昔の映画を観ているような雰囲気で、この手の話は、戦中戦後を懐かしむ世代のために量産されているからだろうか、新鮮な驚きのようなものは皆無である。また、昭和30年代以降に生まれた人間にとっては、生まれる前の時代の話なので、実感や共感も沸いてこない。どちらかというと、同じ白黒でも「ALLWAYS3丁目の夕日」のような明るい話の方が良い。ただ、しっかりした存在感が感じられ、著者の世界にどっぷり浸ることができるので、たまにはこうした暗い本も良いかなと思わせる本だ。(「霧笛荘夜話」浅田次郎、角川文庫)
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