goo

宵山万華鏡 森見登美彦

作者の最新刊だが、とにかく本の装填が面白い。表紙と裏表紙を埋め尽くす細密なかわいい絵柄が最近の作者の作風やイメージにぴったりな上に、いわゆる「キラ」と呼ばれる印刷手法を全面に使って、何だかとても楽しそうな本にみえる。
内容は6つの短編からなるそれぞれ別の主人公の目線から京都祇園祭宵山の一夜の出来事を描いた一連の話なのだが、最初の一編は朱川湊人のような夢幻的な話、第2、3編は冗談のような笑える話、その次の第4,5編は何だか悲しい話である。この第4話あたりから登場人物が経験する不思議な幻想のような世界と学生のいたずら話が渾然一体としてきて「森見ワールド」全開のままま最終話に突入する。そして作者の他の作品と同様、まだまだこの世界に浸っていたいと思いながら話は静かに終わる。続編があっても面白いだろうし、続編がなくても納得できるという不思議な感覚だ。まさにこの構成そのものが、京都・祇園・宵山を万華鏡でみたような仕組みになっている。(「宵山万華鏡」森見登美彦、集英社)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )