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造花の蜜(上・下) 連城三紀彦

2年ほど前に話題になったミステリーだが、単行本で読む前に早くも文庫になってしまった。最近は文庫化が本当に早い気がする。本書の謳い文句は「誘拐ミステリーの最高傑作」だ。誘拐ミステリーの名作といえば同じ作者の「人間動物園」がすぐに頭に浮かぶ。即ち本書の謳い文句は「人間動物園をしのぐ傑作だ」と言っているのに等しい。これは連城ファンを意識したうまい謳い文句だ。それにしても連城のミステリーは相変わらずアクロバティックだ。1つの事件に2重3重の意味があり、最後の章では、そういうことだったのかと、思わず唸ってしまった。少し話題になった小説はすぐにドラマ化されるのが最近の風潮だが、この作品は、こうした風潮をあざ笑うかのような内容だ。この作品を、作品のよさを残したままドラマ化するのは至難の業だろう。本書の解説を脚本家に書かせた編集者のセンスの良さにも脱帽だ。(「造花の蜜(上・下) 連城三紀彦、ハルキ文庫)
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