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完全なる首長竜の日 乾緑郎
「このミステリーがすごい」大賞受賞作という謳い文句の本書。ミステリーというよりもSF小説と言った方が良い内容だ。どんでん返しの部分もあるが、その部分は、著者の書き方で何となく判ってしまった。他の部分がとても明快で判りやすい文章なのに、その謎の部分だけぼかして書いてあることがあからさまだからだ。例によって巻末についている大賞の審査員の講評を読むと、ストーリーの面白さなどとは関係なく、著者の文章力とか筆力を評価するという言葉が並んでいて、がっかりする。いくら文章力があっても面白くなければ作品としても作家としてもだめだと思うし、文章力とか筆力だけで小説が評されるというのは、読みやすい本=良い本と言う行き過ぎた最近の風潮と相通じるものがあるようで寂しい気がする。本書自体は、一気に読んでしまうほど面白かったが、こうした最後の講評を読むと興ざめだ。講評を読んだ後にもう一度最後の一文を読むと、何だかわざとらしい陳腐なもののように思えてきてしまう。(「完全なる首長竜の日」 乾緑郎、宝島社)
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