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英雄の書(上下) 宮部みゆき

稀代のストーリーテラーによるファンタジー小説だが、首尾一貫して語られているのは、著者の創作活動にまつわる強い思いである。おそらく著者は、自分の創作活動において、どこかわからないところから物語が下りてくるというような感覚があるのではないか。本書で語られる「小説や人の人生にはどこかに原型のようなものがあって、その投影物この世界に映し出される。それが小説であり人の人生なのだ。」という世界観は、昔社会科で習った「プラトンのイデア論」のようだが、まさにこうした感覚は著者自身の体験からくるものなのだと思う。巻末の解説を見ると、ちょうど今年の7月から本書の続編の週刊誌の連載が始まるとのこと。本書のようなファンタジー小説の場合、その世界観にはまれる人とはまれない人の両方が避けがたくあるようだ。本書について、自分自身は最後まではまれたとは言い難いが、それでも、これからこの世界にどのようなストーリーの可能性があるのかは、非常に気になるところである。(「英雄の書(上下)」 宮部みゆき、新潮文庫)

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