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夏のバスプール 畑野智美

中年の男子が読むのは少し気恥ずかしい青春小説だが、信頼している書評家のお薦めだったので、読んでみた。こういう話を読んでいると、今の若者とはこういうものなのかという発見が面白いという感覚が先に立ち、その発見が多いほど自分のなかでその本の評価を高めてしまうという現象に気づく。それはそれで間違っていないと思うが、この本を読んで感じたのは、それだけではない面白さだ。若かった頃のノスタルジーでもないし、自分の子ども達と主人公をなぞらえれよく判る気がするという共感でもない、何か別のことを教えられているような気がしてしまうのだ。冒頭で主人公の少年に何故かいきなりトマトをぶつけて来る少女、その少女が抱える、あの3.11とも絡んだ深い苦しみのようなものへの共感、それは小説としての面白さそのもののように思われる。(「夏のバスプール」 畑野智美、集英社)

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