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38億年~生物進化の旅 池田清彦
題名どおり、38億年の生物進化の歴史を1冊にまとめた本書。個人的には、生物の誕生、カンブリア大爆発、恐竜時代など、色々な本で紹介され、比較的良く知っている時代以外の部分が、大変新鮮で面白かった。自分自身の知識のミッシングリンクを補ってもらえたような感じだ。地球上の大気に酸素をもたらしたシアノバクテリアの話、カンブリア紀のバージェス生物群の大絶滅の前にあったエディアカラ生物群の大爆発とその絶滅、生物における顎の誕生、などが、そうした私にとってのミッシングリンクだった。どんどんスムーズに読めてしまうので、例えば、「地球上に草原が出来たのはいつだったと書いてあったっけ?」と後から思い起こそうとしても、思い出せなくなっていたり、そのことについて書かれた部分を探そうとしてもなかなか見つからなかったりで、却って困ってしまったほどだ(正解は新生代)。その他、クジラに最も近いのはカバであるとか、かつて陸上に暮らしていたクジラの祖先(パキケトゥス)の復元図であるとか、サメという生物が非常に古い適応力を持った生物であることなど、たくさんの豆知識も得られた。特にためになったのは、恐竜以降の哺乳類の時代の生物の多様性の部分である。何となく新生代とは、今のような動物ばかりだったのかと思っていたが、色々な変な動物が住んでいたことを本書は、楽しく教えてくれた。また、ホモサピエンスのライバルであるホモ・フローレンスがつい12000年前までいたという事実にも驚かされた。それと、著者の主張である「大きな形態の変化は適応とは関係なく生じる」「まず新しい形態ができて、生物はそれに合った環境のところへ移動する」という考えには、目からうろこという感じがした。(「38億年~生物進化の旅」、池田清彦、新潮文庫)
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