goo

列車にご用心 エドマンド・クリスピン

2014本格ミステリーの第一位を獲得し、評判になっている本書だが、読んでみると、1950年代にイギリスで書かれた昔の本だった。50年代といえばまさにアガサ・クリスティ、ジョン・ディクソン・カー、エラリー・クイーンらの全盛期で、そうした大御所の影に隠れた「隠れた名品」の発掘ものということらしい。本書も、推理するための材料を全て開示した上で、超人的な探偵役の主人公が見事な推理で、読者を圧倒するという、いわゆるその時代の「本格もの」ミステリーで、1つ1つの作品の謎解きを1つ1つ楽しむことができる。但し、やはり50年代の作品から漂う雰囲気は、古色蒼然そのもので、本書も読んでいて、どうしても現実味が感じられないのが難点だ。現実と絵空事のバランスが大切なミステリーというのは、どんなに優れている作品でも、やはりそうした同時代性というものが必要不可欠であることを認識させられる1冊だった。(「列車にご用心」 エドマンド・クリスピン、論創社)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )