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ユダヤ教・キリスト教・イスラーム 菊地章太

同じルーツを持つ3つの宗教について、一神教であるが故の排他性・暴力性と、3つの宗教が合わせ持つ寛容の心・福祉の精神という2つの矛盾する特徴が、どのようにそれぞれの宗教のなかで融合しているのかという問題を中心に、それぞれの宗教の寛容さ不寛容さについて判り易く解説してくれる本書。単純な教義の比較ではなく、教義に基づいて実践される行動の比較に重きを置いているのが良い。3つの宗教のなかで最も完成された「福祉の精神」の実践を行っているのがイスラム教であるという指摘には驚かされた。また、ボクシングのモハメド・アリ選手について1章を割いて語っている部分は、この本の白眉だ。子どものころに興奮しながら見た記憶のある「キンシャサの奇跡」を彼の「強い宗教への思い」を重ねてみる語り口には感心してしまった。(「ユダヤ教・キリスト教・イスラーム」 菊地章太、ちくま新書)

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