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東京プリズン 赤坂真理

読む前に想像していた内容と実際の内容がここまで食い違っていたという本も珍しいような気がする。戦争責任を扱った東京裁判に関する本は、一般的な解説書のようなものを読んだことがあるだけで、ほとんど知識がなかった。若い女性がアメリカに留学し、そこで東京裁判に関心を持ち…という本書のあらすじを聞いて、てっきりそうした内容の本だ自分で勝手に思い描いていた。ところが、実際読んでみると、話の大半は思念的な幻想小説のようなものだった。予想を裏切る内容というのは、読書にプラスになることも多いが、本書の場合、ここまでかけ離れていると、読書のための覚悟ができていないせいか、なかなかその世界に入り込めないということで、戸惑いの方が大きくなってしまった。しかも、若い主人公が、東京裁判に関する色々な事実を知っていく場面で、かなり有名な事実に主人公が驚くのだが、読者としては、一緒に驚くところなのか、若い主人公の心情を見守るだけで良いのか、そのあたりも良く判らなかった。若い人が、異文化に触れて、色々思うことが夢のような扱いになっているが、丁寧に描かれていて、そのあたりは共感できる部分が多いのだが、肝心の東京裁判に関するところで、大きなギャップを感じてしまったというのが正直な感想だ。(「東京プリズン」 赤坂真理、河出書房新社)

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