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空襲警報 コニー・ウィルス
ヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞した作品ばかり5編を集めた豪華な短編集。発表された作品数とヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞を受賞した作品の数を比べると、これだけ多くの受賞作を持っている作家も珍しい気がする。いわば、SF界お墨付きの彼女ならではの短編集ということだろう。本書に収められた5編は、いずれも、娯楽性が高いわけではないが、格調の高い読んでいてジンとくるものばかりだ。特に、「マーブルアーチの風」は死と老いについて深く考えさせられる傑作だと思うし、「ナイルに死す」もこういう歴史のとらえ方感じ方もあるのだなぁと感心してしまった。最後に収録されている「最後のウィネベーゴ」は最高傑作との声があるが、今一つ入り込めなかったのは「犬」の話だったからかもしれない(猫好きなので…)。受賞作品ばかりの短編集ということで思い切りハードルが上がってしまい、どんなSFらしいSFかしらと思って読んでしまったが、ハードSFとかサーバーSFとかとは対極にあるような作品で、SFには新しい科学的なテーマや最先端技術の更に先にある技術といった大きな仕掛けは必ずしも要らないということを図らずも再認識させられた。作者にはこうしたシリアスな作品以外に、ユーモアが前面にでた作品群もあるらしいので、そのあたりを次に読むのが楽しみだ。(「空襲警報」 コニー・ウィルス、ハヤカワ文庫)
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