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風が丘50円玉祭の謎 青崎有吾

このシリーズが3作目まで出ていることは知っていたが、本書が2作目だと勘違いしていて、読んでいる途中でそのことに気が付かされた。幸い、2作目と3作目は全く独立した話なので、本書を先に読んでも2作目を読むときの興味がそがれるような心配はなさそうだが、主人公の少年の妹が突然出てきたり、登場人物たちの人間関係が色々進んでいたりで、少し戸惑ってしまった。1作目と3作目の本書の間の違いで一番驚いたのは、1作目では脇役だったり単なる事件の証人だったような登場人物それぞれが、色々なキャラクターを持っていて、それぞれにドラマがあるということだ。本書は、色々な登場人物からの視点で描かれた短編集なので当たり前といえば当たり前なのだが、なぜかその辺りに本シリーズの新鮮さを感じてしまった。内容は、学校生活の中の「日常の小さな謎」に対する探偵役の少年の緻密な推理を楽しむという至って普通の学園ものミステリーものだが、現代の高校生あたりの生態をふんだんに取り入れて、それをミステリーの中にうまく織り込んでいる点、かならず最後にもう一ひねりある点など、他のものとは少しだけ違う香りを放っているのが本書の大きな魅力だ。(「風が丘50円玉祭の謎」 青崎有吾、東京創元社)

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