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百人一首の謎を解く 草野隆
大昔似たような本を1,2冊読んだような気がするが、内容は全く覚えていない。知識としても、編者である藤原定家が公家であったことくらいで、正直百人一首にどんな謎があるのかも知らない、というのが本当のところだ。百人一首を使ったカルタ取りも数回やったことがあるくらいで、大半は「坊主めくり」だ。その時に思った謎と言えば、何故蝉丸だけがお坊さんの札の中で特殊なのか、そもそも蝉丸というのはどういう人なのか、といったところだが、そんなことに本書は答えてくれるだろうか、と思いながら読み始めた。本書は、百人一首にまつわる色々な謎と向き合うところから始まるが、その謎はかなり専門的だ。どうして有名な歌人や聖徳太子といった歴史上の重要人物の歌が選ばれていないのか、何故百首に選ばれてい歌人に「中納言」という役職の歌人が多いのか?素人としては、その当時はまだ有名でなかったからではないかとか、そもそも「中納言」という役職が何かも知らないし、ということで、そこに謎があるのかどうかも実はよく分からないというのが本音だが、読んでいくと著者の言いたことは何となく分かってくる。謎解明の中核は、百人一首が、蓮生という人物が定家に、邸宅の襖の装飾として、そこに書く和歌の選定を依頼したことに由来するということだ。依頼者と選者という2人の思惑を推測していくことで多くの謎が解明されていく。残念ながら、蝉丸の謎は十分に解明されなかったが、この一冊で百人一首への理解を深めることには十分役立った気がする。(「百人一首の謎を解く」 草野隆、新潮新書)
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