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捏造の科学者 須田桃子

小保方さんの手記の中で、最も彼女を精神的に追い詰めた新聞記者として描かれていたのが本書の著者。本屋さんで本書を見かけた時、小保方さんの手記に対する新聞記者からの反論がでたのかと思って買ったのだが、奥付の発行日付をみたら1年以上前の本だった。要するに、小保方さんの手記の方が後で、手記の方が本書に対する反論、本書が小保方さんに手記を書かせた原動力の1つだったということになる。そういうことなので、本書を読みながら、最も気になったのは、この本あるいはこの本の著者が、何故それほどまでに小保方さんを傷つけたのか、ということだった。本書を読んだ感想としては、まず最初に、本書がジャーナリストが書いた本として大変良くできた本だということだ。しっかり可能な限りの取材をして、それをきれいにまとめてわかりやすい文章で読者に何が起きたのかを教えてくれる。その限りにおいては、本書は、色々な賞を獲得するに値する優れた一冊といえるだろう。しかし、本書を読みながら、強く感じたのは、本書が読者の知りたい真相にたどり着いているとはどうしても思えないということだ。本書の中で、笹井教授の「全て小保方さんが悪いという見方もあるが、そうでないという見方もある」という発言を紹介しているが、それに対して著者はほとんど何も反応していない。彼女が取材を拒否し続けたためにやむを得なかったという反論は可能だが、それにしても極端に公平性を欠いている気がする。間違ったことをしていなければ取材に応じるはずというのは、やはり新聞記者独特の論理だろう。また、本書が理研の検証結果の発表を待たずに発行されているということも気になる点だ。新聞記者が書いた本で、ここまで個人に対する敵意をむき出しにした本は珍しいような気がするし、ある意味、功名をあせったもう一人の働く女性を見るような気がする。もちろん本書の著者には、小保方さんに対する取材方法について今更謝罪するつもりはないだろう。小保方さんの手記の中でやり玉にあげられていたもう一人の人物「若山教授」には小保方さんに反論する気概はなさそうなので、本署の著者にはぜひ反論を繰り広げてもらいたいものだ。(「捏造の科学者」 須田桃子、文藝春秋社)

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