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虹色の空 久郷ポンナレット

仕事の関係で東南アジアの国々の情報を多角的に集めようと色々検索していて見つけた1冊。カンボジアのポルポト政権時の悲劇については、死者の数とか人口に対する割合といった統計的な知識、当時のカンボジアが直面していた国際政治情勢などの情報では理解できない部分がある。それは、カンボジアのキリングフィールドの記念館に収められた無数の犠牲者の頭蓋骨を見ても明らかにできない何かだ。それらは全て「マス」として抽象化されてしまったもののようにも思える。また、人間はどのようにして全体主義に走るのか、人間はどこまで残虐になれるのかといった政治哲学的な考察も、最終的な何かにはたどり着いていないような気がする。そうしたどこまで行っても不十分だと感じてしまう何かに光明をなげかけてくれるのが、本書のような個々人の体験を読むことだと思う。そこには普遍的ではないが、自分だったらこの時どうしただろうという問いかけを通じて、その何かに近づける気がする。またもう一つ本書を読んで気がついたのは、ポルポト時代の加害者の多くがその後も殆どが普通に生活しているという事実だ。(「虹色の空」 久郷ポンナレット、春秋社)

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