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トランプのアメリカに住む 吉見俊哉

トランプ政権下のアメリカに一年間滞在した社会学者が現地で見聞きしたアメリカの社会情勢に関する論文集。テーマは、ネット社会、愛国主義、パワハラ、銃規制、アメリカン・ドリーム、北朝鮮問題などだが、いずれも表層的な変化から深層の動きを読み取ろうとする学者らしい文章が並んでいる。本書にはそうしたトピック的なテーマ以外に、著者の職場である日本の大学と客員で招かれたアメリカの大学の日米比較、NAFTA締結という変化に揺れるにメキシコの苦悩等、トランプ大統領とは直接関係のない章も掲載されていて、多面的に著者の考えが浮かび上がるように工夫されている。特に面白かったのは、「貧しいけど逞しい」アメリカン・ドリームの変質を分析した章、メキシコの内乱を扱った2つの章で、こんなことがあるのか、あるいはあったのかという気付きの多い内容だった。(「トランプのアメリカに住む」 吉見俊哉、岩波新書)
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