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宇宙の終わりに何が起こるのか ケイティ・マック

宇宙の終わりがどのようなものかという問いについて、最新の宇宙科学の知見を元にいくつかのシナリオを考察した一冊。かなり高度な内容で、途中からただ字面を追うような感じの読み方になってしまったが、それでも色々考えさせられた。今考えられるシナリオは、宇宙が膨張から収縮に転じて潰れるビッグクランチ、膨張の果てに宇宙が希薄化してしまう熱的死、ダークエネルギーの暴走によって全てが破壊され尽くすビッグリップ、ある場所に「真空の泡」が出現してそれに全てが飲み込まれる真空崩壊、収縮と膨張を繰り返すビッグバウンズ、以上の5つとのこと。このうち4つ目以外は可能性としてはあるがあっても100兆年後といった遠い将来の話らしく、4つ目はいつ起こってもおかしくないシナリオだが確率が非常に小さいとのことで、いずれにしても今心配してもしょうがないというのが結論だろう。宇宙論の本を読んでいると、宇宙論には「完全に分かっていること」「おそらくそうだろうと言えること」「全く分からないこと」の3つがあることが分かる。現在の宇宙論の様々な研究は「おそらくそうだろう」というところを「完全に分かっていること」にするためのものが主流のようだが、それの積み重ねで「全く分からない」ところにどこまで迫れるのか、素人目にはとても心許ない気がしてしまう。そもそも、重力と素粒子論の統一、重力そのものの謎といった未解明の大きな壁があって、宇宙の始まりのところが全く分かっていないことの裏返しで宇宙の終わりのシナリオにも決め手がない。読み手としては、理解できないところイコール常識的でないところということで、そこに大きな教訓があるような気がして面白かった。(「宇宙の終わりに何が起こるのか」 ケイティ・マック、講談社)

1:ビッグクランチ──急激な収縮を起こし、潰れて終わる
2:熱的死──膨張の末に、あらゆる活動が停止する
3:ビッグリップ──ファントムエネルギーによって急膨張し、ズタズタに引き裂かれる
4:真空崩壊──「真空の泡」に包まれて完全消滅する突然死
5:ビッグバウンス──「特異点」で跳ね返り、収縮と膨張を何度も繰り返す
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