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残月記 小田雅久仁

著者の本は2冊目。前に読んだ作品も非常に印象的だったが本作も強烈な魅力を持った作品だ。中短編が3つ収められた連作集だが、いずれも突拍子もない設定の中で個人の内面や人間同士の関係性といったものが奇妙なリアリティをもって克明に記述されていく。3つの作品に共通する「月」というモチーフにどういう意味があるのかと考えたがよく分からない。月には見つめていると少し怪しげな気分になるという特性がある気がするが、著者にとってもそうした特性を意識した上で想像力を広げていく媒体、きっかけのようなものだったのかもしれない。前作から本作ができるまでかなりの年月が経っていて、著者はかなりの寡作家だと思われるが、次作が楽しみだ。(「残月記」 小田雅久仁、双葉社)
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