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高瀬庄左衛門御留書 砂原浩太朗

書評誌などで凄い新人が現れたと話題になっている時代小説。自分自身最近少しだけ時代小説を読む機会が増えている気がする。自分の嗜好が変わってきたのかもと思う反面、時代の閉塞感が江戸時代の武士階級の閉塞感と合致してきたという側面も少しはあるような気がする。本書は、武士としてのお役目を終了した下士の主人公が妻子に先立たれり藩内の陰謀に巻き込まれたりと色々な困難に立ち向かう話だが、シリアスな本筋の合間に暇になって書画を始めたり人付き合いに苦労したりと今の老人を彷彿とさせるエピソードが織り込まれていて面白い。そんなことを考えながら読んでしまうこと自体自分が歳をとった証なのだろうが、主人公の「他の選択肢があったかもと思わぬこと」という言葉をどう受け止めるか、読む人の年齢によって色々だろうなぁ、そういう色々な捉え方ができるところが本書の良さなんだろうなぁと考えながら読み終えた。(「高瀬庄左衛門御留書」 砂原浩太朗、講談社)
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