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本売る日々 青山文平

好きな作家の最新作。著者の作品ではいつも、江戸時代の様々な人々の生き様を描きながら彼らが何を大切にしてきたのかを教えてくれる内容に惹かれる。本作は学術書を扱う本屋が主人公が店先や行商先で出会った人々との交流をテーマにした連作短編集。主人公は、急に若い後添えをもらった名主、急に名医との評判が立った医師などが抱える思いを、本の売買を通じたやり取りの中から解き明かしていく。江戸時代にこういう商売があったというのも初めて知ったし、それぞれの立場の人々が抱えていた矜持や苦労など考えたこともなかったのでとても面白かった。時代小説については、様々な時代考証が必要で苦労が多いはずなのに何故わざわざ江戸時代を舞台にして小説を書くのか今ひとつ理解できないところがあるし、「昔はこうだったかも」と言われると「そうかもしれない」と言わざるを得ないところにモヤモヤを感じてしまう。でも何故か著者の作品だけはその辺りを気にしないで素直に読めるのは、彼の文章の背景に膨大な時代考証が感じられるからだと思う。(「本売る日々」 青山文平、文藝春秋)
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