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あいにくあんたのためじゃない 柚木麻子

SNSによる誹謗中傷、コロナ禍で浮き彫りになった他人への不寛容などに立ち向かう人たち、何かに閉塞感を抱きながらもそれを乗り越えようとする人たちを描いた短編集。YouTuberに写真を勝手にアップされて被害を被ったお店とお客さんを描いた「めんや 評論家おことわり」は単なる復讐劇でないのが面白かった。一方、コロナ禍でリモートワークが浸透、子どもの遊び場がなくなってしまった状況下で「子どもの声がうるさい」と言われてしまった親たちがとった行動を描いた「パティオ8」は痛快な復讐劇。また、「商店街マダムショップは何故潰れないのか」はちょっと不思議なテイストの作品で、個人的には6つの収録作品のなかで最も印象的だった。その他の作品もとても面白く、しかも一口ではくくれないような色々な短編が収められていて、とても充実した一冊だった。(「あいにくあんたのためじゃない」 柚木麻子、新潮社)
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