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山手線が転生して加速器になりました。 松崎有理

書評誌で紹介されていて面白そうだったので読んでみた初めて読む作家のSF短編集。パンデミック後の世界を描いたとんでもSFが5編収められている。表題作は、パンデミック後の都市撤退政策で需要のなくなった山手線を素粒子ミューオンと反粒子を衝突させる自律運転機能付きの加速器に転用するという内容だが、これがめちゃくちゃ面白かった。さらにその後の短編も全てパンデミックで激変した世界という共通項のとんでもSFで、パンデミックで観光客が激減した後に設立された観光旅行会社の戦略、無人化した東京に住む少年とリモート料理人の交流、パンデミック後に突如現れた言葉を理解するタコと異星人が地球に送り込んだ自律型探査機(グリーンレモン)など、とにかくその発想の面白さと、ドレイク方程式、フェルミパラドックス(保護区仮説)、アシスタントAI、パンスペルミア説(生命宇宙起源説)など科学知識の裏付けのようなものに翻弄され通しだった。巻末の書き下ろし、経済学者の話と宇宙開闢以来の年表もこれらの短編を全て繋ぐ内容で圧巻。著者の本、まだ色々あるようなので、これから読むのが本当に楽しみだと思った。(「山手線が転生して加速器になりました。」 松崎有理、光文社文庫)
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