goo

血腐れ 矢樹純

著者の本はこれが4冊目。前に読んだ3冊はいずれも叙述トリック要素の強いミステリー小説だったが、本書は謎解き要素のほとんどないホラー小説だった。登場人物たちが他人には説明できない不安と疑念を苛まれていて、それが事態の進展とともに大きく膨らんでいくというストーリー展開や全体の不穏な雰囲気はこれまでの作品と共通している感じだが、真相が超自然的な闇の存在にあってそれがそのまま終わるという点で全く別のジャンルの話になっている。個人的には前の作風の方が断然面白かったが、今後著者がどういう方向に向かっていくのか、これまでの作品が面白かっただけに、とても気になるところだ。(「血腐れ」 矢樹純、新潮文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )