今回の逗留先のタイ・コンケーンは、日本国内に例えれば、東北部の仙台といった規模の大学が多い落ち着いた地方都市で、観光で訪れる者は少ない。
当初五年前に行ったときは、現地の友人は「この街には、日本人は自分たち二人とJICAの職員が一人の三人ぐらいしかいないだろう」と冗談まじりに云ったものだ。確かにどこを歩いても外国人と気づかれることもなく、気楽に過ごすことができた。
ところが今度ばかりは事情が違った。例えば、スタバに行けば、「ありがとう」「元気ですか」と可愛い女店員に声をかけられて、嬉しいやら、ホテルに戻れば、エレベーターで急に「あなた日本人ですよね。僕は今日本語の勉強してるんです」と習いたての日本語で話しかけられた。
確かに、日本に行くタイ人も増え、日本がタイの地方都市でも有名になるのは嬉しい気もするが、若干のわずらわしさもあった。その点、ミャンマーのヤンゴンでは、道ばたの僧侶に、「チャイニーズ」と声をかけられて、ちっと面白かった。どうも、私は日本人と見られるのが苦手であるようだ。
台風が来る前に、高知で皿鉢料理を食べた。初めてもどり鰹を食べた。まさに初体験であった。現地では、塩を振って食べるそうだ。本場の鰹は美味い、本当にうまかった。マグロよりもうまかった。
土佐の風土の中で、古来より受け継がれてきた味と彩りの集大成。 黒潮にもまれた大自然の恵み、山々からの味覚、土佐ならではの旬が、器の中に惜しげもなく豪快に盛りつけられる。 南国の気候と風土が生んだ、土佐の味覚。
江戸時代、女房を質においても初鰹を食べたという。「目に青葉山時鳥初鰹」安い鰹を食べると、中毒して医者に行くこともあるそうだ。「恥ずかしさ医者に鰹の値が知れる」。(下山弘『川柳江戸の四季』より)
大義なき選挙は終わり、またいつもの日常が戻る。果たして、この國はどんなことになるのだろうか。