昨日、CATVで「冷たい月を抱く女」を見た。ギリシャ彫刻のようなニコール・キッドマンの分厚い胴体や背中に眼を奪われた。ただし下半身、特に長い足はX脚でむしろ幼い感じで、アンバランスでもある。まあ、年齢を取らない女優であろう。
すぐ殺されてしまう端役で、駆け出しの時のグゥイネス・パルトロウが出ていた。彼女は「大いなる遺産」や「恋に落ちたシェクスピア」では、欧米人らしくない草食的な細い顔と肢体が魅力的だが、最近の「アイアンマン」では肉感を通り過ぎ、太腿や腰が丸太か樽のように見えてしまう。
何よりも驚いたのは、母親役で、あの「卒業」のミセス・ロビンソンが出ていたことだ。アン・バンクロフト(ANNE BANCROFT)は1931年生まれだという。「卒業」が1967年に制作されている。彼女はあの役を36歳でやったわけだ。あの当時、ダスティ・ホフマンの相手役キャサリン・ロスが大学生という設定だから、その母親だから50歳前後と見た。随分と老け役を演じていたわけである。あの映画が日本を席巻したのは70年前後だろう。社会に出れば、ああいう役得というか大人の遊びがあるのか、と若い男たちの心を揺さぶった女性だった。調べてみると、彼女は「奇跡の人」の教師役でアカデミー賞も貰っていた。蓮っ葉な色好きの人妻役の印象が強く、最後の教会のシーンでの醜い顔が記憶に残った。彼女は既に2005年に亡くなっていた。何かの片割れをなくしたようで、寂しいものである。
映画の役年齢と役者の実年齢とは不思議なもの。ちなみに、「卒業」のダスティ・ホフマンは1937年生まれ、キャサリン・ロスは1940年生まれ、実年齢で云うと、30歳と27歳の恋人同士で、その不倫相手の母親が36歳という訳だ。当然ながら、なんか非現実的な関係で、だから映画なのか!だから、ミセス・ロビンソンが奇妙にセクシーだったのか。
余談だが、この映画の原題は「Malice(性悪という意味かな)」だが、邦題の「冷たい月を抱く女」の方が何となくそそられる気がする。