今までテレビ界を長い間リードしてきたビッグ・スリーが、世間で云う停年を迎える歳となって、今後どうするのか、どうなるのか、いらぬお世話と思いながらも、気になってしまう。先日、タモリは30数年間続いた『笑っていいとも』を終了して、一つの区切りが見えてきた。さんまは後継者が絶対にいない『明石家さんま』という芸を、マンネリと言われようと、倒れるまで継続していきそうだ。
たけしはどうだろう。先週の日曜のニュース番組で、順天堂の医師に向かって、「澤の顔を何とかならないでしょうかね」と言ってしまった。スポーツ選手と顔という連想を、彼の昔ながらの“街のお姉ちゃん”という切り口で切ってしまった。若いころの彼は、群衆の気持ちや行動を的確に掴める男だった。しかし、澤を評するときに、芸能界のお姉ちゃんと同じ目線で見てもしょうがない。澤は自分の実績で自らの顔を造れるスポーツ選手であり、多くの人々は彼女のサッカー場での厳しい表情や運動能力を美しいと感じているはずだ。あのベトナム戦で、澤が途中出場した時の一瞬にして試合の空気を変えたあの魔法のような力を見てほしい。その瞬間、彼女は美人そのものである。
たけしは、お笑い芸人より映画監督の方が上等な職だと思っているようだ。つまりは、芸術が芸能より上だと信じている。現代アートなんか見てると、何が芸術なのか解らなくなる。芸術か、芸能かなんて、単なるジャンル分けなんじゃないだろうか。或る人々にとっては、彼のフランス人に理解されるヤクザ映画よりも、「赤信号みんなで渡れば怖くない」という警句の方が心に残る場合もある。彼の今後の身の処し方を見ていきたい。