先月の事だが、送られてきた健康診断結果の封書を開ける時の重い気持ちは、遠い昔に、似たような経験をしたことがあったと思った。それは入社試験の採否を告げる封書だ。そろそろ来る頃だと思って、朝から何回も郵便箱を覗いたものだ。「残念ながら、貴殿の御希望に沿えず、誠に申し訳なく、…貴殿の御発展を心からお祈りして、…」とか書いてあったような、あの気分悪い採用通知結果を開けるときのドキドキ感に似ていた。何言ってんだ、あんな会社なんか希望してないよ、と独り言を言うだけ。そんな厭な通知を二十代で何通貰ったことか。
癌マーカーの結果を病院に聞きに行くときの重苦しさは、大学入試の結果を見にいく当日の朝の重苦しさに酷似している。面白いものだ。採用されれば、受かれば、前途に明るく新しい世界が開ける。しかし、これからの私が手にする通知や結果は、何か病気が見つかれば、地獄のような暗い入院生活が待っているだけだ。同じ重苦しいドキドキ感なのに、貰う結果が全く正反対なのには恐れ入るばかりである。運よく病気の採用や合格を逃れても、今の不十分な健康に取りあえずとどまって居られるだけの事である。まあ、結局、健康の怪しい賞味期限が少し伸びるだけのことかな。