そういえば、靖国が好きな首相の祖父岸信介は、東条英機とともに満州で活躍した実力官僚であり、東條内閣では商工大臣を務めた。また岸信介の姻族(叔父)である松岡洋右は当時満鉄総裁で、後に日独伊三国同盟を推進した外務大臣であった。また松岡洋右は、10年ほど前に日経新聞に載った「富田メモ」に出てくる、「白鳥と松岡が祀られている靖国には行かない」と、昭和天皇に言わしめた人物でもあった。松岡は東京裁判中に病気で死んだ。岸信介も収監されていたが、不起訴になった。松岡は白鳥敏夫(駐イタリア大使)とともに、1978年に宮内大臣松平慶民の子の松平永芳宮司により昭和時代の殉難者としてA級戦犯14名が靖国神社に合祀された。戦前に日本の権力の側に居て、戦争に深く関わった人物の子供や孫によって、現代の靖国の合祀問題や参拝問題が浮上しているわけである。この点では戦前と戦後は連結しているのだ。
そして、首相の行動を擁護して、数日後靖国参拝をした新藤総務相は激戦の硫黄島で玉砕した栗林忠道中将の末裔だという。ここまで来ると、どうも二人は先祖の墓参りと同じような感覚で靖国参拝に行っているような気がしてならない。そうした一族の子孫に現代の日本の政治が主導されていることは、日本の戦争が、国家として、国民として総括されていないという事なのだろうか。