ずっと今まで不思議なことがあった。それは、自分がなぜ20世紀の末に生まれて、戦争も知らず、極東の小さな敗戦国に生まれたのか。それを幸せと捉えるのか、不幸と捉えるのか、ところがその前に、現実には、頭が少し鈍い胴長短足の人間の中に自分がいたことだ。
いつ死ぬか解らない危険なアフリカに生まれなくて良かった。もっと貧乏な東南アジアに生まれなくて良かったと思うけれど、この地球上に生を受けて、ちょうど手頃な日本人になったことは、何か理由があるのだろうか。まるで答えのない筈の問題を若い頃はよく寝る前に考えたものである。
そうだね。西洋人に生まれたら、こんなに運のない自分は生き延びれないだろう。憧れる足の長い金髪の娘に出会う前、生命力の弱い自分はこの世から消えてしまうだろうと自分を納得させたものだ。そういう果てもない夢想みたいな無駄な思考の連続だった日常はそろそろ終盤かな。