ふぶきの部屋

皇室問題を中心に、政治から宝塚まで。
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韓国史劇風小説「天皇の母」110(記念すべきフィクション)

2013-05-16 10:45:16 | 小説「天皇の母」101-120

アキシノノミヤ夫妻が震災2年目の追悼式に出席した日。

その日はひどく寒かった。

人々の記憶の中には、あの日のもっともっと寒くて冷たくて悲しい思い出がずっしりとのしかかっている。

そんな遺族の顔をみているうちにキコは思わず涙ぐんでしまった。

笑顔でみなを励まして・・・と思っていたのに、遺族らの「哀しいけれど生きていくしか・・・」という言葉を聞いた時、

思わず涙が流れてしまったのだった。

震災で家族や友人や恋人を失い、大きな喪失感を抱えつつ2度目の冬を迎えた人達。

こんな風に追悼式に参加しても、彼らを慰める事は出来ないのかもしれない。

しかし、何と彼らは強いのだろう。雄々しいのだろう。

泣いても泣いてもいつかは這い上がる。そんな強さを見せられて、キコは感動したのだった。

先年の「アキシノノミヤはタイに愛人や隠し子がいる」説はまだくすぶっている。もはや都市伝説化している。

それだけではない。

自分が宮の子を堕胎したとか、そういうありえない事までまことしやかに語られているのは

どんなにおっとりしたキコでも知っていた。

そしてその都市伝説化は、表だって言われるよりも傷つく。相手はそれをそれを承知でやっているのだろうか。

相手・・・相手とは一体誰なのだろう。

学習院の大学内でもさまざまな噂が広がって、カワシマ教授の元に送られてくる。

真実はいつも一つ。黙っていればいずれわかる日が来るから」

と父は何も言わず、どんな噂を立てられようと、脅迫めいた電話があろうとも黙っている。

そんなひょうひょうとした態度を尊敬もするが、母もいるし弟もいる。自分のせいで彼らを傷つけたくない。

キコ、もう涙をぬぐいなさい

隣の宮がちょっと厳しい目で言った。

公の場での宮は見事に「私」を隠している。新婚当時はそんな事はなかったけれど、あの愛人騒動以来

殊更に行動に表裏や感情が入らないように気をつけているようだ。

それが宮の思いやりなどだと思うと同時に、そんな事しか出来ない自分達がはがゆかった。

僕たちは与えられた公務を粛々と行うしかない。たとえマスコミがどんな嘘を書こうとも、であった人達には

わかる筈。僕たちがこういう人間であるという事を」

それが宮の持論。

「寒い日が続きますが、お体はいかがですか?」

仮設住宅に住む人たちに優しく声をかける。

「はい。何とか慣れました・・・今はただ頑張るしかなくて。死んだ人の為にも」

本当にその通りなのだ。

頑張って。本当に本当に頑張って

キコは心のそこからそう思った。

アキシノノミヤ夫妻が粛々と・・・という思いは多分、多くの被災者に伝わっている筈だった。

前年、神戸を訪れつつも被災者に会わずに帰った皇太子夫妻と随分違う・・・・・と。

 

ヒサシはいら立ちを隠せずに歳を越した。

自分の今後の去就がきっちり決まらない現実。

年齢的にはもう70近いのだから引退し、悠々自適の生活を送れと・・・外務省は暗にそういっているのかも

しれないが、自分としてはそんなつもりは毛頭ない。

自分の野望は「皇太子妃の父」で終わる筈がなかった。

事は今、始まったばかりなのである。

かつて先祖が海を渡ってこの国来て、辛酸をなめた。

何で私達がこんな貧しい暮らしをしなくちゃいけないのか。あんまりだ。運命とは思えない。

これはどこが悪い?国だ。この国が悪いのだ。国を根本的に変えなくてはいい筈がない」と。

ゆえにヒサシの考え方は一貫して「日本は悪の国」であった。

かつて中国や朝鮮を侵略し植民地化した。もし、そんな事がなかったら自分達の先祖も海を渡ることなく

平和に暮らしていたのかもしれない。

敗戦国である日本が、戦勝国の朝鮮や中国よりも先に先進国になった。

それは理不尽であり、悪行にほかならない。

そんな日本を正す為にこそ、自分は東大を出て外務省にはいり、権力を手にしてきたのだ。

この日本を正しい道に導くために。

その正しい道とは・・・・・まず皇室を解体し、身分の差を無くすこと。

中国や韓国と手を取り、アジアでの共栄圏に入る事。宗主国は中国。

日本はその庇護の元に平和に暮らせばいいのだ。

ゆえにマサコを皇室に入れたのだ。

娘は言いつけどおり皇太子妃になった。娘の好みとは正反対の男だったが御しやすそうだったから

無理してでも嫁がせた。

結婚してしまえば、東宮御所を拠点としてしまえば何だって出来る。

なんせ、皇太子とは将来の天皇なのだから。

しかし、一つだけ誤算があった。

それはマサコが妊娠しない事。

結婚3年目を過ぎ、週刊誌はますます「ご懐妊報道」を加熱させてくる。もはや、ヒールの高さどころではない。

太っても痩せても笑っても泣いても「ご懐妊か」とそればかり。

娘本人もうんざりし、東宮御所では側近に当り散らしているというが、それなら早く妊娠すればいいものを。

まあちゃんが・・不妊症じゃないかっていうのよ。ひどい」

ある日、ユミコが東宮御所から帰ってきて憤懣やるかたないという顔でそういった。

不妊症かもしれないから検査をするようにって宮内庁がうるさいらしいの。勿論、断ったって。

失礼な話よね。うちはそんな家系じゃないわよ。原因があるなら皇太子でしょう?

だって天皇家って血が濃いから」

まるで下世話な井戸端会議のようだ。

お医者さんが来たんですってよ。それで基礎体温を測れっていうからマサコが怒ったんですって。

無論、殿下も怒ってね。プライバシーに口出しするなってそりゃあ怖かったそうよ。

あの温厚な皇太子殿下が怒るなんてねえ。

でも、フランス行きがダメになったでしょう?次はドイツなんだけど、それも危ないかもって。宮内庁が

意地悪して行かせないようにしているらしいわ。宮内庁ってそもそも弟の宮の方を好きなのよ。

だからまあちゃんにいじわるするんだわ」

ふうん」

まともに話を聞いているような、聞いていないような・・・そんな態度でヒサシは答えた。

不妊症。男としてはどうとらえていいかわからない問題だった。

男性の不妊症もあるにはあるが認知度は低いだろう。まだまだ「不妊」といえば女が原因とみられる。

娘がそういう体質かもしれないとは想像もしていなかった。

ヒサシの兄弟は多いし、親戚も沢山いる。エガシラ家はユミコ一人だが、3人の娘に恵まれている。

この状況で何でそういう体質と言えるだろうか。

そして宮内庁のアキシノノミヤ贔屓。これは聞きづてならなかった。

どうせ保守派のカマクラ長官あたりがそうなんだろう。

だとしたら東宮大夫か東宮侍従長あたりに自分の子飼いを入れて、いずれは長官の座に上らせるか。

 

すでにいくつか手を打ってある。

まず、アキシノノミヤの愛人騒動。この火を消さぬ為に都市伝説化しようと、学会の手を借りる。

外務省のオオトリ会はそういう意味ではかなり使える。互いに協力しあえる組織だ。

学者一族のカワシマ家も気に入らなかった。

たかが教授の分際で漢詩なんぞを読んで自分には学があると勘違いしているのではないか。

学習院の教授と外務省とどちらが上か、すぐにわかるのに。

なのにヒサシの脳裏に浮かぶカワシマ教授の顔は、といかくムカツクの一言に尽きる。

偉ぶりやがって。ひょうひょうとしやがって。動じないつもりか?

和歌山の名家か何か知らないが、あっちだって庶民の出ではないか。なのに俺たちを見下しているように見える。

このままほっといたらカワシマ一家がアキシノノミヤ家の後ろ盾になりかねない。

という事で、時々電話で脅迫したり、不審なファックスを出したりしているが・・・何の反応もない。

娘が結婚前に堕胎したという噂は相当堪えている筈なのに、一切の表情を見せない。

宮家を訪れる回数が減ったのだけが救いか。

ニューヨークの新聞や雑誌には時折、「マサコ妃はかごの鳥」というタイトルの評論を載せている。

日本は自国の評判よりも外国からの評価を信じる傾向があるから、外国紙が

旧弊で時代に合わない皇室でマサコはかごの鳥のように閉じ込められすっかり個性を失ったと書けば

読者は同情し「なんてひどい皇室」だと思うだろう。

それにプラスして「子産みを強要」と書かせればいい。

とはいえ、マサコがこののち、一人も子供を産まないのでは困る。

 

マサコに一度検査を受けさせろ」

ヒサシは言った。

なんですって?不妊かもしれないっていうの?」

わしにはわからん。しかし事実がどうだか知りたいだけだ。このまま子供を産まなかったら

皇統はアキシノノミヤに行くんだぞ。それでもいいのか?」

・・・・・・」

マサコが原因でも皇太子が原因でも、とにかく一人は子供が欲しい。それも男を。何が何でも

産んでもらわねば困る」

子供は授かりものでしょうよ

じゃあ、何で授からないんだ?何かこっちが悪い事でもしたのか?」

そうじゃないわよ。でも天皇家っていうのは近親婚が多いから」

我々のような立場の弱い人間がそんな事を言っても誰が信じてくれる?全部マサコのせいになるだけだぞ。

だからそうならないように先手を打つ必要性があると言っているのだ」

「・・・わかりました」

ユミコは逆らわずに言った。

アキシノノミヤ・・・・・皇位継承権第2位の男。この男を何とか潰さないと。

 

 

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」109(運命のフィクション)

2013-05-14 09:00:00 | 小説「天皇の母」101-120

フランスはノリノミヤ

マサコはわなわなとふるえ、目の前のコップを投げつけた。それは壁にあたって砕けた。

その様子を見ていた女官は怯えて後ずさる。

人を馬鹿にしているの?嫌がらせなの?」

女官達は無言で割れたコップを掃除しにかかる。女官長は言葉もなく控えている。

ご懐妊の可能性があるので、出来るだけ国内でお過ごし頂きたいと」

東宮大夫は必死にカマクラの言葉を伝える。

まさか、精神的に不安定でプロトコロルを無視するような行動ばかりする妃に皇室の親善を

任せるわけにはいかないと判断した・・・などとは口が裂けても言えなかった。

そんなものする気はないわよ。誰が」

マサコの言葉に東宮大夫は言葉を失った。東宮大夫だけではない。女官長も顔色を失い呆然としている。

私は子供を産むために皇室に入ったんじゃないわよ。皇室外交をする為なの。なのに、ただ座っているだけとか

にこにこ笑って手を振るだけとか、そういうやりがいのない事をしたくないと言ってるのよ。わかる?」

しかし、皇太子妃の重要な御役目にはお世継ぎが・・・」

誰もそんな事言わなかったわ

大夫の言葉をさえぎる。

誰も子供を産めなんて結婚前には言わなかった。お父様もお母様も・・・両陛下だって。

それなのに結婚した途端にそういう事を言われるのって何で?私、騙されたの?」

何と説明したらいいのか大夫はわからなくなった。

一組の夫婦が生まれる。当然、子供の誕生を望まれる。そんな事をわざわざ口にする舅や姑はいない。

無論、花嫁の両親だって同じだろう。それをマサコは

言われていないから知らなかった」と主張しているのである。

それならいっそオワダ家に説明してもらおうか・・・とも思ったが、ただでさえ頻繁にやってくるオワダ夫妻に

これ以上東宮御所に来て欲しくなかった。

まるで、自分が皇族になったかのように振る舞うマサコの両親の評判がいいわけないのだ。

皇太子妃殿下の重要な御役目にはお世継ぎを産むという事がございます。歴代の皇后さまはそれを

果たしてこられました。またご自分にお子がない場合には側室のお子をご自分のお子としてお育てになりました。

それがタイショウ天皇でございます」

ナルに浮気しろというの?」

マサコは思わず言ってしまった。人前では極力「殿下」とか「皇太子さま」と呼んでいたのだが、

プライベートな時はいつのまにか「ナル」と呼ぶようになっていたのだった。

その言いように誰もが聞こえないふりをする。

妃殿下はまだお若いのですから、これから自然に・・・・」

「お父様に電話するから

マサコはすっくと立ちあがった。

今回の事、絶対に忘れない。私を馬鹿にした事、絶対に忘れないわ。カマクラ、今にみてなさいよ」

吐き捨てるように彼女は言った。

 

新しいアキシノノミヤ邸は、元はセツ君の館で、今までに比べて非常に広く、ゆったりとしていた。

今まで屋敷が狭い為に事務官と侍女を最低限の人数しか雇う事が出来なかったが、もう少し増やせそうだ。

が、何もかも宮廷費で賄われる東宮家と違って、宮家の場合は皇族費の中で何もかもやらなければいけない。

キコはやりくり上手の為、職員を増やすのではなく、自分の仕事を増やした。

子供達の服も手作りで、なるべく出費を抑える努力を始める。

新しい宮邸では犬や鳥、うさぎにねずみなど、沢山の生き物が飼われ始めた。

それはひとえに宮の趣味と仕事であったが、そのエサ代はばかにならない。

動物達を飼育する為の環境づくりにもお金がかかる。

それをキコはため息をつきつつも文句を言わなかった。

子供達の情操教育の為にはいい事なのだと自分を納得させて。

勿論、エサやりだの世話だのは宮もやってくれる。そこらへんは非常に強力的ではあったのだが

今一つ無頓着な部分もあり。わりとのんきなキコにとってはいい配偶者なのかもしれないが、

結果的に毎月の生活が圧迫されている現実は変えようがなかった。

 

今日もきょうとて、キコ妃は自ら庭の草取りをしている。

いい天気だった。朝の空気はおいしい。赤坂御用地の空気は都会のオアシスだ。

東京にいながらこのような環境に住まわせて貰っているだけでも感謝しなくてはならない。

妃殿下、そのような事は私が」

侍女が駆け寄ってきた。

いいのよ。あと何日かしたら皇后陛下がいらっしゃるわ。そしたら庭をお見せしたいし。

あなたたちも準備で大変でしょうし。それよりノリノミヤ様は?」

はい。今、お起きになられて」

わかったわ。じゃあ、急がないとね」

キコは大急ぎで宮邸に戻り、そのまま台所に向かった。

宮邸の食事は専属の料理人が作る。

大膳課のように大がかりなものではないが、キコがメニューを作り、予算を与えきっちりとその通りに作って貰う。

宮家といえば一見、毎日贅沢をしているように見えるが、その実は非常に質素なもの。

倹約はまず食費から・・・というのは庶民も宮家も同じだった。

台所ではすでに朝食の準備はすすんでいた。

昨日からノリノミヤが泊まりに来ている。野鳥の観察の為に赤坂御用地内の宮邸が近いからだ。

朝食がすみ次第、観察の為にでかける予定だ。

ノリノミヤはすでに着替えを終えて、マコやカコと楽しそうに遊んでいる。

「ねえね、ねえね、ご本を読んで」

ねえね、ねえね」

マコやカコにとってノリノミヤは「叔母」である。母と3歳しか違わない。

なのに、「ねえね」と呼ぶ。二人にとっては参内するたびに自分達の相手をしてくれる宮は楽しい遊び相手だ。

その「ねえね」はせがまれた通り、カコを膝に乗せマコを横に座らせて物語を読み始める。

アキシノノミヤはすでに研究室に出かける用意をしている。

ノリノミヤが勤めているヤマシナ鳥類研究所の総裁である宮は、定期的に会議に出席するのだ。

鳥の研究は楽しいの?」

宮はネクタイをしめながら聞く。

そうねえ。鳥は大好き。でも野鳥よ。お兄様みたいに鶏じゃないわよ。天草大王は私、苦手。

鳥は小さくてかわいい方が好きだわ」

「鳥より誰かいい人いないのか?」

またそのお話」

心配だから言ってるんだよ。すこしは僕達の「さんまの会」に来なさい」

「はーい」

そこにキコが台所から出てくる。

サーヤの好きなハムエッグよ。オレンジジュースもあるわ」

ありがとう。お姉さま」

宮は本を読むのをやめて、マコやカコと一緒にテーブルについた。3人が並ぶと叔母と姪というより

姉妹のようで、キコはちょっと笑った。

みなが食べ始めてもキコは食卓に着かず、台所に引き換えす。

お姉さま、はやくいらして。あとは私がお手伝いするわよ」

いいの。待って」

キコが次にダイニングに現れた時には2段重ねの重箱を持っていた。

「これ、お弁当ね。お昼に食べて頂戴。おいしくないかもしれないけど、私が作ったのよ」

まあ」

ノリノミヤはふたをあけてびっくりしたように叫んだ。

色とりどりのふりかけのご飯に鶏肉の焼いたもの、煮物やら果物屋ら、ところ狭しと入っているのだ。

ずるーい。ねえねばっかり。マコも」

マコが羨ましそうに言った。

「マコちゃんはいつも幼稚園に持って行っているでしょう」

とキコがたしなめる。

そうよ。今日はねえねの番」

ノリノミヤは嬉しそうに重箱のふたをしめて、包みなおした。

ありがとう。お姉さま。こんな心遣いをしていただいて。本当に感謝しています」

そんな・・残り物よ。私、お料理はあまり得意じゃないし」

「焦げてないだけいいかな」とアキシノノミヤがちゃちゃを入れた。

お兄様。お姉さまみたいなお妃を貰って伊勢の神様に感謝なさいよ。もし、お姉さまをいじめたり

したら私が黙っていないから・・・それにしても」

とノリノミヤはため息をついた。

どうしたんだい?」

実はね、最初に東宮御所に泊めて欲しいと言ったの。東宮のお兄様はマサコがいいならっておっしゃって

くれたんだけど、東宮妃がダメって。あの方、東宮御所に私達が入るのをひどく嫌がるの。

先日も両陛下がテニスの為に着替えに寄りたいとおっしゃったら、お断りになったのよ。

あそこには妃殿下のご実家が頻繁に出入りしているというし。何だか釈然としないのよね」

「東宮御所なんかに行かなくていいよ。こっちにおいで。兄様は今、あちらで手一杯だから」

それもよくわからないけど・・・何がどう手一杯なの?東宮のお兄様、ご結婚以来あまり幸せそうじゃないわ。

どんどん無口になられるし、肝心な話題が出るとすぐに逃げておしまいになるし。

あんなのが結婚生活なら私はしたくない」

それ以上は子供達がいるので、ノリノミヤは言葉を慎んだ。

ごめんなさい。おもうさま達の前でもこういう事は言えないの。ちょっとストレス

いいのよ。いつでもこちらにいらっしゃい

ねえね、毎日お泊りして。一緒にお風呂に入って頂戴」

マコが笑顔で言うと、カコも「ねえね」と言った。 

 

のどかな風景の宮邸。

しかし、外の世界はそういうわけにはいかなかった。

アキシノノミヤケにとってこれが最後の平和だったのかもしれない。

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韓国史劇風小説「天皇の母」108(なぜにフィクション?)

2013-04-23 08:00:00 | 小説「天皇の母」101-120

皇太子夫妻に子供が出来ないという問題は、皇室の内部のみならず、

次第に国民の間にも広がっていき、関心がある者は「大丈夫なのかしら」と不安になった。

女性天皇を容認すべき」という意見が出てきたのはこのころで、このままいくと

アキシノノミヤ家のマコ内親王が女帝に立てられるかもしれないという可能性もあった。

今上は「法律に委ねるべき」と一切の言葉を発する事がなく、宮内庁としては戸惑うばかりだった。

一体、陛下はどのようにしてほしいのかおっしゃってさえくれたら

カマクラはつぶやく。

宮内庁のスタンスはあくまでも「男系維持」である。しかし、カマクラの下にはすでに外務省上がりの

左翼がかった職員も数名おり、「なぜ男系男子にこだわるのかわからない」といい始めるものもいた。

それを理屈ではない。これは伝統なのだ・・・と教えこむのに一苦労。

今時のジェンダー思想はなんでもかんでも「男女平等」で解決しようとする。

雇用機会均等法が浸透してきたことと、皇位継承の問題は別だといのに。

外国のメディアは盛んに「閉じ込められたマサコ妃」と皇室がいかに旧弊でキャリアウーマンに冷たいかを

書くばかり。それに便乗して女性週刊誌などは毎週毎週「マサコさまはお可哀想」と書き立てる。

職員達も自分達ばかり悪者にされる事にうんざりしている。

 

カマクラも東宮夫妻に対するありとあらゆる教育が全部破たんする様には失望を隠しきれなかった。

この年にはベルギーの王室ご一家が来日。

事もあろうにマサコ妃は王妃と同じ色のスーツに身を包み、公式の場で笑いをこらえるしぐさをして

回りをはらはらさせた。

どんな時にも皇太子をたてるようにと言っているのに、自分が前に出ないと気が済まないらしく

ベルギー皇太子の前では自分の夫をさそいて会話しようとするそぶりさえ見られた。

カーティシーも満足にできず、気の利いた会話もまだ出来ない。

どこが優秀だったのかわからない。だから黙って言われた通りに動いていればいいものを

通訳などが一歩でも自分の前に出ると怒り出す始末。

 

シラク大統領が来日した時は終始ご機嫌で、公務を嫌がらなかったが一転して赤十字大会などに

行くと不機嫌になり、休みたがる。

実はシラク大統領は「ぜひ皇太子夫妻にフランスへ来て頂きたい」と誘いをかけていた。

というのも1982年にミッテラン前大統領と鈴木善幸元総理の間で交わされたパリ日本文化会館の

着工が着実にすすみ、来年の5月には開館セレモニーが行われる予定なのである。

大統領はこの式典に「ぜひ皇太子夫妻を」と言ってきたのだ。

こちらが何も申し出なくてもマサコ妃の耳には外務省を通じて情報は入っている。

それゆえに大統領来日時にはご機嫌だったのか・・・・

しかし、今の状態で皇太子夫妻を海外に出していいものか。

 

年末。

宮内庁記者会から何度も催促されていた、マサコ妃の誕生日記者会見が行われた。

嫌だと言っているのにどうして無理強いするの」

無理強いではなく、これは皇族としてのお務めです。皇族であるかぎり、年に何度かはこのような

機会を持たなくてはなりません。皇室と国民の間を近く持っていなくては皇室は滅びるのです。

それに妃殿下。記者達の要望に応じておかないと、あれこれと変な噂を流される恐れもありますし

半ば脅しのような言葉にマサコは唇をかみしめた。

妊娠に触れないと約束するなら

ええ。勿論です」

にっこりとカマクラは笑った。そしてソガ東宮大夫には

「くれぐれもおかしな事は喋らせるなよ」と言った。

記者会見の出来次第によっては・・・という気持ちだった。

それにしても、皇太子夫妻はどうしてこうも「世継ぎ」問題に無頓着なのか。

皇太子は確かに回りに流されやすい面もあるが、元々は気のいい青年だ。

それが今やすっかり「我」を張るようになっている。

今回の記者会見も頼みに頼んでやっと・・・・すでに東宮御所はマサコのいいなりになりつつある。

そうはさせてはいけない。

皇統を守る為には男尊女卑もない。きちんと身分をわきまえる妃が必要なのだ。

 

あくまでも宮内庁は「記者会見の場は提供するが質問内容に関しては感知しない」というスタンスだった。

しかし、結果的に「懐妊」の質問は控えられ、記者会の中でも特定の記者達10数人に限られ

15分程度で終わらせるようにとの暗黙の了解があった。

マサコはロイヤルブルーのスーツで登場。久しぶりに見るその姿はほんの少し太った感じがして

それがまた「懐妊ではないか」と噂のもとになりそうだった。

しかし、結婚直後の勝ち誇ったような表情はすでになく、どこかおどおどしている。

3年前とすっかり同じではないかと誰もが思った。

口調は早口で暗記した文章をさらさら読んでいる・・・という印象だった。

海外で「哀しきプリンセス」などと噂される事にかんしては「事実でない事が大げさに報道されている」と

要するにそういう事を言いたいのだろうが、めちゃくちゃに回りくどくしかも「脳内革命」などという言葉まで

使って説明するので、記者達は面食らった。

皇太子妃の役目というものはわかっている(世継ぎを産むべきなのはわかってる)しかし、自分らしい生き方も

したい」・・・多分そういう事を言いたいのだろうなあというのを、さらにさらにわかりにくく言う。

よくもまあ、そんな文章を作って暗記できるもの、さすがにマサコ様だなどと記者達は別な意味で称賛した。

けれど、最後の最後に残った印象は、結果的に

「まだお妃になってない」というもの。

結婚して3年も経つのに、妃らしい動作も言葉もつかえない。いや、使いたくないのだ。

どこまでもかたくなに自分を守ろうとしている。

どんな人間も3年もすれば馴染むものを。この人はいまだ「オワダマサコ」なのだと。

 

そんな記者達の印象をよそに、マサコとしてはかなりうまくやれたとほっとしていた。

暗記は昔からおてのものだし、これで少しは彼らも自分の優秀さがわかったに違いない。

自分は今までの皇太子妃とは違う。

外務省を後ろ盾に持つ、キャリアウーマンだった妃なのだから。

 

しかし、カマクラの下した判断は別だった。

やはり・・・・」

彼はため息をついた。記者会見の間中、体がこわばって自然な笑顔を作る事が出来なかったばかりか

臨機応変に言葉を変えるという事も出来ない。

回りくどい言い回しで何を言いたいのかわからない。けれどプライドだけは異常に高い。

これでは中東の二の舞だ。

あの時はまだ新婚だったから、多少の失礼があっても回りは許してくれた。

アラブの馬は褒めてはいけないのに褒め称えて「馬をせびった」と思われたことも、ヨルダンの王妃の

言葉にふてくされた表情をしたことも、何もかも「まだ結婚したばかり。お若いし」ですんだ。

しかし今は違う。

外交的に失礼があったら困るのだ。

 

パリ日本文化会館の開館式にはノリノミヤ様を」

カマクラは決断した。

 

 

 

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」107(いつもフィクション)

2013-04-05 07:00:00 | 小説「天皇の母」101-120

マサコのマイペースは相変わらずだった。

「世継ぎ」問題は膠着したまま、そういう話をする暇すらない。

結婚3年目。いい加減に何とかしないと皇統の危機が迫ってくる。しかし、微妙な問題なだけに

天皇も皇后も動こうとしない。

それをいい事にマサコは都合が悪くなると「風邪」を持ち出して公務を休み、職員とは口をきかず部屋に引きこもる。

そうかと思えば、海外高級ブランドのバッグを買いあさってみたりと行動に一貫性がない。

(一体、どういう女なんだ?)

カマクラ長官の心の中には怒りがわきあがり、どうにもならなくなってきていた。

一体、日本のマスコミはどうなっているのか。毎日のように「皇室に入ってやった慈悲深いお妃さま」とマサコを持ち上げ

宮内庁を「旧弊でいじわるな場所」として貶める。

そもそもお子様に恵まれないのも、皇太子夫妻はその重要性を鑑みているのに、一向に動こうとしない宮内庁に

原因があるのです」

と決めつけるように書く。

何をどう動けというのか?何度もこちらが面会を申し込んでも会いもしないではないか。

二言目には「プライバシー」を盾に「話したくない」とくる。

それでいて「相談できる人が側にいない」と嘆いてみせる。これはもう日本人の感覚とは違う。

まるで・・・・カマクラは唾をごくりとのみこんだ。

「かの国のようだ」と。

事大主義という。つまり世の中強い方につくという意味。自分より弱い者には徹底的にいばりちらずが

強いものには媚びを売り、嘘をついてでも自分をよくみせる。

自分の正当性を主張するためには他人を「悪者」にする。

自分が不幸なのは〇〇のせい・・・と平気で口にして、少しでも機嫌をそこねると相手を徹底的に恨み通す。

これでは将来「国父・国母」となれるのだろうか。

本当にどうして皇太子は・・・・・

とはいえ、カマクラも対策を講じないわけにはいかない。

何とか「可哀想な妃」報道を覆す為に、皇太子妃に誕生日の「単独会見」を申し入れたのだ。

 

その一方で、マサコの誕生日会見の1週間前、アキシノノミヤが誕生日会見を開き、何とそこで

週刊誌等に書かれた「愛人問題」についてきっちりと否定、「不満に思う」と言ったのだった。

これについてはカマクラも断腸の思いだった。

皇族に週刊誌に書かれた内容について釈明せよというのはあまりにも不敬な話だったからだ。

しかし、4月のクリントン大統領晩さん会を欠席した事をきっかけにおきた

アキシノノミヤはタイに愛人がいる」説は独り歩きをして、もはや都市伝説化しようとしていた。

さらに宮に博士号を与えたタイのタマサート大学を馬鹿にするような記事を書いたり、

挙句には「殿下の女好きには困っている(宮内庁関係者)として語らせる始末。

キコ妃は「大事にしたくない」との意向で、怒り狂う宮をなだめたのであるが、

この年の天皇と皇后のちょっと長めの静養ですら「アキシノノミヤの振舞に陛下が心を痛めている為」

書かれてしまっては黙っているわけにはいかない。

一度は宮内庁が全否定したのに、まるで無視するかのように出てくる記事。

これは裏で何かが動いているに違いない。アキシノノミヤを嫌う連中(そんな連中がいるのか?)

アキシノノミヤを貶めたい、抹殺したい連中・・・・まるで古代の王家のようではないか。

古くから讒言や告発で命を失ってきた皇族や貴族は多いのだ。

誰もが知っている菅原道真は有名。皇族で言えば大津の皇子、そして長屋王。

それぞれ血筋もよく能力も優れていた。ただ・・・後ろ盾がなかっただけだ。

今のアキシノノミヤ家もすっかり同じだ。外戚であるカワシマ家は学者の家柄で政治的に疎い。

今の時代は、個人の資質が大きくものを言う。

幸いにしてアキシノノミヤ夫妻は誰からも好かれる性格で友人も多い。

しかし・・・・大きな勢力の前では。

そんな時に「自分で言うからいいよ」と宮は言ったのだった。

恐縮しつつカマクラは受け入れた。

その時の宮の悲しそうな顔。ああ・・・殿下は宮内庁に失望しておられる。

我々は殿下をお守り出来ないでいる。しかし、殿下はそんな自分達を責めない。

今の皇室では全てが東宮寄りになりつつある。

両陛下ですら皇太子夫妻に苦言を呈せずにいるのだ。

皇太子はもとよりマサコ妃の味方。考えてみればマサコ妃にはたくさんの味方がいる。

そんな幸せを幸せと感じられない彼女は不幸である。

一方のアキシノノミヤ夫妻は孤立無援状態であった。

カワシマ家は「真実はやがて明らかになる」だから動かず静観せよ・・・との仙人気質だし

味方だったチチブノ宮妃はもういない。せいぜい宮邸を提供されて、来年やっと引っ越しが決まった程度だ。

キク君もヒタチノミヤ夫妻も静観を決め込んでいる。

独身時代の宮のやんちゃぶりが尾を引いているのか・・・そうではない。やはり今上の家庭というものから

一歩引いて「我々は関わる気はない」という姿勢を貫いているのだ。

親の代から続く心理的な確執が、皇室のバランスを崩そうとしている。これではオワダ家の思うつぼではないか。

そんな状態をわかっているのだろう。宮は宮内庁に期待しない。

どこまでも控えめで自分で考えて行動しようとする。

その表れが記者会見だった。

誕生日会見はいつも通り夫妻で揃って行われた。

記者の質問に宮は

私も週刊誌を読みましたが、根も葉もない女性問題について」とちょっと笑った。

いろいろ広がってしまったわけですね。そういうことは全くないことですし、火のない所に煙がたったというか

非常に想像力が豊かな人がそういう記事を書いたんだと思いますけれども、

完全に事実と異なる報道がなされたという事には」

ここでアキシノノミヤはちょっと語気を強めた。

不満を持っています

記者達は黙った。

アキシノノミヤはさらに、クリントン大統領の晩さん会を欠席してタイへ行った事に関しては

この件については両陛下の了解を頂いております。またタイへの研究旅行については1年以上前から予定が

組まれておりました。しかし諸般の事情で延期が続き、準備をしてくれたいた人々に迷惑がかかって

しまったという事。それでああいう結果となりました。宮中行事は全ての皇族の日程を考慮しているわけでは

ありません。皇族全体を対象としたものと、特定の皇族に限定した行事がぶつかった場合、後者を優先すべきだと

思います」

とした上で「ただ・・・宮中晩餐を欠席してタイに行った事の是非に対しての記事であれば議論は大切であると思います」

 

キコは黙って聞いていた。

ただただ宮に寄り添っていた。先ほどまで幼いマコやカコに関する話の時はいつものスマイルだったのに

今は、表情を硬くしつつも現場の空気を和ませようと必死な印象だった。

記者達はもうそれ以上突っ込みようがなかった。

見事な受け答えだった。

誰もが罪悪感を背負いつつ、それでも自分達を攻撃しない宮の態度に感服したし、深刻な話を笑いに変えてしまう

ユーモアにも驚いた。

俺だってさ・・・嫌だけど、企業側の人間でさ)

などとつぶやき、会場を後にする記者もいた。あんな風に清廉潔白な態度でいれたらどんなにいいだろうか。

でも悲しいかな、雇われている身としては上司に「書け」と言われたら書かないわけにはいかない。

それが悲しき宮仕えなのである。

それでも、真正面から切り込んできたアキシノノミヤの態度は皇族としては異例であったし、誠実で見事な態度だったと

誰もが認めざるを得なかったろう。

 

それでも・・・・・「何で半年前の話を蒸し返すのか。その裏には・・・」と週刊誌はまたも書き立てたのであるが。

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」106(完全なるフィクション)

2013-03-31 10:51:09 | 小説「天皇の母」101-120

カマクラ宮内庁長官が天皇に呼ばれて参内したのは夜遅くなってからだった。

今上の御代になっても先帝の意向は守らなくてはならない。

また、皇室そのものの伝統もきちんと受け継がれているか、長官や式部職などを通じて

意見を聞く必要があった。

戦前の宮内庁と違って、今は各省持ち回りの宮内庁職員にとって「皇室」とは単なる職場であり、

絶対に守るべき場所であるとか、崇敬の念を抱くとか、そういった感情からは離れつつあった。

とはいえ、直接天皇や皇后と出会った人々は100%心酔し、何が何でもお尽くし申し上げようと思うのであるが

とにかく仕事自体はかなり官僚的で事務的になりつつあった。

そんな中、カマクラは珍しく戦前の宮内省を思わせるような忠義ぶりを貫いている。

彼にとって一番大事なのは「皇室の尊厳を守る事」であり、それゆえ、時には皇族方に苦言を呈す事もあった。

そんなカマクラだったからこそ、天皇の信頼も絶大だった。

カマクラは最近の公務の割り振りになどについて報告をし、さらに外国との付き合いなどについても奏上。

話は短く終わるかに思えた。

一通り報告を終えて、カマクラが立ち上がろうとしたとき、

皇太子夫妻に子供はまだ出来そうにないかね」と天皇が尋ねた。

カマクラはあらためて椅子に座る。

「何か身体的に問題があるとか、そういう事について二人はどう考えているのだろう。私がみる所、

どうにも夫妻の気持ちがまとまっているようには見えないし、世継ぎの重要性についても考えているようには

見えない」

その事について、マスコミなどについて宮内庁がひどく言われている事もしっていますよ」

皇后も言葉を挟む。

日々、陛下の為、皇太子夫妻の為に骨身を惜しまず働いてくれているのに、あの書かれようはどうかと。

申し訳なく思います」

「あの書かれよう」というのはもちろんマサコの事だった。

ニューズウイークが「消えたお妃」とか「不幸な妃」と書き立ててから、日本のマスコミも追従するようになった。

すなわち、マサコ妃のような優秀なキャリアウーマン、入内前は「スター」だった女性が皇室に入った途端

皇太子の数歩後ろを歩くようになり、どんどん存在感が失われている。

その原因は旧弊な宮内庁が「お世継ぎ」を期待するあまり、公務をさせない、行動に規制をかける・・・というようなもの。

東宮職が「静かな環境を作る為」に用意した数か月にも及ぶ「静養」に対しては

「キャリアウーマンに仕事をさせない」とくるし、外国訪問が予定されない事に関しては「世継ぎ優先のいじめ」

だというし、そうかと思えば「忙しすぎる皇太子夫妻」と銘打って、地方公務を揶揄するような動きを見せる。

どんな記事も〆は必ず「旧弊な宮内庁がマサコ様を絶望させている」というものだった。

それらの記事に関してはカマクラも知っていたし、職員も無論、知っているが、傷つくというより事務的に

「書かれちゃったなあ」程度の感想しか上がってこない。いいのか悪いのか、今時の職員は自分の仕事にそれほどの

プライドを持っているわけではないようだった。

それだけに、皇后に謝られてカマクラは恐縮した。

どうしてあのような事を書かれるのか。世継ぎ問題が旧弊な事なのか?」

天皇は本当にわからないという顔で訴えてくる。

自分が生まれるまでにどれほどの苦労があったかは知っているし、ゆえに自らはすぐに子供をもうけることが

至上命令ととらえていた。

しかし、皇太子夫妻はどうもそうではないようだ。

本当の所、どうなのだ?」

東宮大夫の話によりますと、お世継ぎに関する話は東宮御所ではタブーのようです」

なんだって?」

天皇は驚いて皇后と顔を見合わせた。

女性に出産を強要するのは差別だと妃殿下がおっしゃって

強要?」

はい。夫婦がいつ子供を持つか、あるいは持たないかというような事は夫婦間の問題で、他人がとやかく

言うべきことではないという事なのです。また妃殿下は皇室外交をする為に皇室に入ったにも関わらず

外国に行けない事に対して非常にお怒りです。日本では阪神大震災が起こったばかりですし、経済状況も

世界的に決していいわけではありません。ひところのように王室同士が各国を訪問して歩く・・・というような

事はあまりございません。日本としては招待がなければいけないわけで。それを妃殿下は、自分に意地悪を

しているのではないかとお疑いで」

何という事だ・・・私にはわからないね。一体何を言ってるのかさっぱり。何で世継ぎを産む事が差別だとか

強要だとか言われなくちゃいけないのだ?」

男系男子しか天皇になれないのは差別だという考え方です。日本は男女平等の筈なのに。そういうお考えですから

妃殿下は皇太子殿下をお敬い申しあげているようには見えません。ほんの少しの事ですが、数歩後ろを歩くとか

殿下には頭を下げるといったような事がですね、その時は仕方なくおやりになるのですが、心の中では「なぜこのような

事を?」というお怒りのようなものが渦巻いておりまして。そういう事が東宮御所では言動になって現れるという事で」

外国に行けない事がいじめというのは?」

皇室外交というのは、外国に行くだけではなく外国からの賓客をおもてなしすることもお仕事ですと申し上げました。

頭ではおわかりになっているんですが、感情的に納得出来ないご様子です。ダイアナ妃とかクリントン大統領とか

有名な人が来れば大喜びで出席なさいますが、発展途上国の要人の場合は・・・・また地方公務も妃殿下には

意義を見出せないとおっしゃって」

妃教育はしているんだろうね?皇后はもう一度教育するべきではないか?」

皇后は「申し訳ありません」と頭を下げた。

私の方からもう一度よく話をしてみましょう」

それはおやめになったほうが」

カマクラは言葉を濁した。

どうしてだい?」

恐れながら、マスコミに筒抜けなのでございます。ここでもし皇后陛下が直接皇太子妃殿下に何かをお諭しになったら

それこそ「皇后陛下のマサコ様いじめ」として報道されるかもしれません」

そのいじめという概念なんだが。教えられたり諭されたりする事の何がいじめなのか?」

マサコ妃殿下は自己主張の強い方でございますし、ご自分の価値観にこだわりをもっていらしゃいます。それを

否定されると非常にお怒りになりますし、泣かれますし。ゆえに皇太子殿下もご注意なさらないと」

「な・・・」

天皇は色を失って立ち上がろうとした。

そんな心がけでどうする!皇室の意義を何もわかっていない。おまけに皇太子がきちんと妻を教育出来ないって?」

「あの。お言葉ですが陛下。私達から見れば皇太子殿下が上でマサコ様は下に位置しますが、ご夫妻はお互いが

対等と思っておられます。それが今時の考え方なのでございます」

アキシノノミヤはそうじゃない」

アキシノノミヤ様はご結婚されて随分変わられました。キコ妃殿下が非常に皇室に適応されておいでですし

しきたりや伝統などを意欲的に吸収なさろうと努力しておいでです。いい意味で宮様は妃殿下に影響を

受けておいでです」

皇太子夫妻の方が現代的という事ですね」

皇后が言った。

「民法では夫婦は対等と定められておりますし、皇太子妃は外務省で働いておりました。男女雇用機会均等法

によって男女平等の考え方を持っているのです。それは間違っているとは思いません。共に手をたずさえて

新しい公務を切り開くというのは皇室にとって必要な事かもしれませんし、今の所、国民はそれを

好意的に受け入れているようですしね」

天皇とカマクラは黙り込んだ。

「アキシノノミヤは皇太子を補佐する立場です。現代的な皇太子夫妻に対して保守的な宮家というのは

ある意味バランスがとれているのかもしれません」

しかし、現代的というのは危険ではないか?皇室などいらないという議論にもつながるかもしれない」

皇太子妃はまだ入内して3年ですから。いきなりアキシノノミヤ妃のようにはなれません。学生の身で結婚した

キコと違って、マサコは働いていたのですから。皇室というものの存在意義や守るべきしきたり等については

辛抱強く東宮職なり宮内庁が教えていくしかないでしょう。皇太子には私からそれらの諫言を受け入れるように

申しましょう」

うん・・要は皇太子だな」

はい。でも皇太子は将来の天皇になる方ですから、皇室における公務やしきたりや伝統の重要性については

誰よりもよくわかっているでしょう。私はそう信じています」

・・・・そうかな・・・・しかし、世継ぎは・・・遠慮しているアキシノノミヤの方にも

今、マコとカコで手一杯で数年あいたからといってどうという事はありませんよ。陛下、お心を煩わせる事はございません。

きっと皇太子妃はわかってくれます」

そこまで言われては天皇もカマクラも何も言えなかった。

というより、カマクラは大きな失望を心に抱えながら部屋を出たのだった。

 

やっぱりねいずれこうなると思っていたのよ

誰?皇后は振り返った。誰の声なの?聞き覚えのある声。でもまさか。

だから反対したのです。庶民の血を入れてはいけないと言って。それなのに時代が許してしまったから。

今もあの時、反対した事は間違っていなかったと思うわ。皇族にとってもっとも大事なのは血筋です。

家柄です。血筋と家柄の中で人は育ち価値観を植えつけられるんです。どんなに努力したってあなたは

結局は皇族でも華族でもない。だから大元の所で皇室を理解していないし、だからあんな嫁をめとったのです)

やめて下さい。皇后さま」

皇后さま・・・・と叫んでミチコははっとした。皇后・・・現皇太后は大宮御所で認知症のまま日々過ごしている筈。

あの時、自分の結婚に大反対した皇太后、チチブノミヤ妃、タカマツノミヤ妃一派。

「お育ちが違う」と言われて何十年。その度に唇をかみしめて耐え、より皇太子妃らしくあろうと血のにじむ苦労を

してきた。育ちを超えるもの。それは知識であり技術であり才能だと思った。

民間から嫁いだキコもマサコも同様だ。

だが、チチブノミヤ妃はキコを異常に可愛がった。同じ会津の血を引く娘として。それもやはり「血」

血筋を超えたものがある筈です。私はそう努力してきました。国民は私の味方よ」

だったらなぜあんな嫁を迎えたの?そしてどうしてあなたは嫁を教育できないの?ヒロノミヤはあなたにとって

心の支えだったわね。あの子はあなたの心の中に渦巻く恨みや悲しみを一身に受けて育った。

だから私にも懐かなかったし、反抗的だったし。手をかけすぎたのね。アヤノミヤとノリノミヤは適当に育てたから)

適当ではありません。ノリノミヤには皇女としての心得を教えてきたつもりです

そう?必要以上に地味に質素になってしまった可哀想な娘。もう27歳だというのに、婿候補が一人もいやしない。

内親王なら引く手あまたの筈なのにどの名家からも拒否されているのではなくて?その点、アヤノミヤは賢かった。

自分を補う結婚相手をさっさとみつけて行動に起こしたのだから。お上の喪中だったなんて悪口を言う人が

いたようだけど私は全然そうは思っていなかったわ。お祝いごとは嬉しいもの。なのに執拗にそういう型を押し付けようと

する輩。それこそが「お育ちが知れる」というものなの。さあ、どうするの?あの嫁を)

「私が何とかいたします」

どうやって?あの嫁は一度も私に会いに来ないし、先帝のご陵にも行かないわ。そもそも先祖というものへの

思いがないの。そんな娘が次の世代を作りたがると思う?今、自分が存在しているのは何千年もの命の営みがあったから。

それを思えば簡単に私は産まないなんて言える筈がない。あるいは自らが産めないなら誰かに託す。それが

代々の妃の役目です。なのにあの嫁はそれを理解しないだけでなく否定している。それを許したのは皇后である

あなた。あなた自身が自由とやらを知っているからじゃないの?私のようなものには何だかわからないけどね)

ミチコは「誰だって自由が欲しい筈ですわ」と叫んだ。

でも皇族である以上、義務を果たす事が最優先ですし」

その義務という考え方が皇族らしくないというのよ。義務じゃなくて当然の事なの。やらねばと肩ひじ張って

考えるものじゃないの。だからお育ちがねえ)

高笑いが聞こえる。

(ああ・・・お上に何とご報告しようかしら。孫の代で皇室が終わるなんてね)

終わらせません。絶対に」

ふうん。女帝とやらを認めるの?)

「それは・・・・」

ミチコは言葉を失った。

まあいいわ。お手並みを拝見ね)

声はそこで聞こえなくなった。

 

「陛下。皇后陛下」

気が付くと女官長が目の前で心配そうな顔をして立っている。椅子に座ったままうとうととしていたようだ。

陛下。侍医をお呼びしましょうか?」

いいの。大丈夫」

そして立ち上がろうとしたとき、皇后はちょっと咳こんだ。

 

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」105(何もかもフィクション)

2013-03-27 07:00:00 | 小説「天皇の母」101-120

私はまだ任期をあと6年も残しているんですがね・・・」

ワダ判事はハーグの自宅で国際電話をうけていたが、その声は多少なりとも震えていた。

ええ、確かに誓約書は出しましたよ。でもそれは一種の儀式のようなもので。しかも任期途中ですよ。

あと1年2年ならともかくあと6年も残っているのにやめろって・・・」

それでも電話は執拗に来るし、文書も来るし・・・・オダはうんざりしていた。

 

国際司法裁判所はオランダのハーグにある。

そこに判事は15人。各国からえりすぐりの法律に明るい人たちが国連の選挙で選ばれている。

日本は20年前から必ず1人の判事を輩出していた。

オダは海洋学の権威であり、元東北大の教授だった。

国際司法裁判所の判事としては3期目に入る。選挙の度に当選してきたという事だ。

勿論、選挙に出る為には自分の国、それも外務省条約局からの推薦がなければ出られない。

オダは学問的な権威を持つのと同時に手腕を認められて当選した1期目以降、順調に2期目、3期目と

やってきたのだ。

しかし・・・実は2期目、3期目の当選の裏には外務省条約局との駆け引きがあった。

つまり、「もし、条約局が要求した時は任期の途中でも辞任すること」というもの。

正式な、というわけでもないとオダは思っていたが、その当時は誓約書も書かされた。

そうでもしないと2期目にしてお3期目にしても推薦がとれないし、じゃあ、推薦されたからといって当選するとは

限らない・・・が、当選してしまうのが一つの仕組みとなっているのも事実。

当時は深く考えなかったけれど、今思えばあの時、毒まんじゅうを食らったのか、悪魔に魂を売ったのか。

そのような裏工作で自分が任期を伸ばした事は、外にわかってはいけない事実だった。

2期目は順調で、3期目もまだあと6年もある。

それなのに、外務省のヤナイ条約局長は、誓約書を盾に「辞任して下さい」と要請してきたのである。

何で今頃?私はまだ辞めるつもりはありませんよ。そもそも途中辞任なんて聞いたことないでしょう

事情が事情ですから。あなただってオワダ国連大使がどのような人かご存知でしょう?彼は皇太子妃の父です。

その地位にふさわしい場所が必要なのです。国連大使に任命する時もけっこうすったもんだありましてね。

ご本人が「外戚だから遠慮します」と言ってくれればいいものを「外戚だからこそそれにふさわしい地位をくれ」とおっしゃるので。

まあ、外務省事務次官まで務めた方だし、政治家やら学会やらコネが多くてね。

で、そのオワダ大使、現在64歳なんですよ。おわかりのようにすでに国連大使の定年は過ぎているんです。

それでも勇退するつもりはないとおっしゃいましてね。あの誓約書はいわばこういう時の為なのです」

オダは言葉を失い、電話口でただ震える。

ヤナイの声はさらに静かに響き渡る。

あなただって、あの誓約書の存在が表に出てはまずいでしょう?」

途中辞任なんて・・・・よっぽどな理由がなければ受け入れられないでしょう」

理由なんて何でもいいんですよ。健康上の理由とか。途中辞任なら次の判事も同じ国の人間にしやすいし」

そんなあんまりな。私は今まで30年以上もお国の為に頑張って来たんですよ。あの1期目のときだって、どうしても

とおたくらが言うから選挙に立候補したまでで。それを今になってオワダ大使の為に切るというのですか

「2期半も務めれば十分じゃないですか?それなりにあなたにだって見返りはあるだろうし」

 

電話を切ったオダは思わずげんこつでテーブルをたたいた。

何て事だろう。いや、自分は何という事をしてしまったのだろう。

あんなオワダのような俗物中の俗物。今の自分はそれとすっかり同じじゃないか。

崇高な海洋学、法律を学び・・・と同時にそれなりに政治も学んできたと思う。多少のグレーゾーンも

そういうものなのだと割り切ってきたつもりだ。

あの誓約書だって。でも、まさにしっぺ返しをされているのだ。

何という卑怯な・・・オワダ国連大使。どうせここに入っても判事ではすまないだろう。

だけど、あれは売国奴だ。

「日本ハンディキャップ論」を繰り広げたのはオワダだ。日本の象徴である皇室の外戚とは思えない理論。

日本は永遠に中国や韓国に謝罪し続けなければいけないという・・・

こんな人間が国際司法裁判所の判事になって、日本の国土や国益を守る事が出来るのか?

公正な判断が出来るのだろうか?

戦後50年を過ぎて、やっと自虐史観から脱却しようという動きが出始めて、あの戦争を、あの時代の日本を

見直していこうという考え方が出てきたこの時に、「日本は悪」という考え方の持ち主が判事になるなんて。

しかし・・・とオダはため息をついた。

無理だ。逆らえない。誓約書の存在は永遠に封印せねばならない。しなばもろともというわけにはいかないのだ

しかし、あと6年の任期を残して辞めなくてはならないのか・・・・・

オダは眠れない日々が始まる事を予感していた。

 

そして東宮御所の改装に5億円もの巨費が投じられる事になり、東宮御所は、季節は秋でも春を迎えたような

明るさに包まれていた。

そもそも東宮御所は皇太子とマサコの結婚の時に一度改装を行っている。

当時は今上が皇太子時代から使っていたままだったので、かなり大規模に水回りなどがあらためられ、

また新しいお妃の為に美しくしつられられたのだった。

それからわずか3年。

5億円もの予算の裏に何があるかなどとは公表されなかったし、国民は関心も持たなかった。

ゆえに、東宮御所の壁には老人用の手すりがつき、床はバリアフリーになり、そして部屋数が増えた。

部屋のあちこちはマサコの好むように壁紙が張り替えられ、インテリアも変わった。

より防音設備に力を入れ、プライバシーが守られるようになった。

暑がりで寒がりのマサコの為にエアコンも新調。より細かい部分にまで行き渡るようになった。

皇太子は、毎日マサコがご機嫌なのを見て心底ほっとした。

エガシラ家のユタカが来ている時は、マサコは得意げであり、にこやかで愛想もいい。

ユタカの語る言葉には歴史を感じた。

私などが若かったころは物がなくてみな、貧しかったのですよ。力があるものだけが生き残る。

そういう社会でした。私なんぞはそれほど学があるわけではありませんでしたが、とにかく家柄や血筋に

勝つのは学歴と、どんな仕事をするか・・・ですから、そりゃあ頑張りましたよ。それはマサコの父親も同じでね。

あれの兄弟はみな東大を出ていますが、大したものです。殿下のように生まれた時から将来を約束された方には

わからないでしょうが、庶民というのは日々戦っているのです。そんな血がマサコにも入っているんですよ」

そんな風に言われると、皇太子は自分が皇族に生まれた事が恥ずかしくなった。

そう、自分は生まれた時から「将来の天皇」として何不自由なく育ってきた。

誰かと競争をするなんて考えた事もなかった。

甘くて考えなしでゆるやかに育ってきた自分。

そんな自分に果たしてマサコを幸せに出来るだろうか。

今だって、子供の事で辛い目にあわせている。

両親は伝統を大事にする人だ。だけど父である天皇もまた「将来を約束された人」ではなかったか。

父からは戦中戦後の大変だった時期の話もよくきく。

でもそんなもの、ユタカはヒサシの話に比べたら少しも大変に聞こえない。

だって義父も義祖父も自力で這い上がって来たのだから。

車いすに乗って東宮御所の庭を散歩するユタカの姿には威厳を感じたし、惹かれるものがあった。

それはヒサシも同じだ。自分は何かに必死になった事があったろうか。

皇太子妃も悪くないわね」

とマサコは笑った。

「でも問題はあなたの親よねえ。とにかく考えが古いんだもの。ついていけないわ」

仕方ないよ。そういう風に生きて来たんだもの」

皇后陛下って本当に庶民の出なの?民間から出たお妃って言われているなら、私達の気持ちだってわかる筈よ。

世の中は変わっているの。国内だけを見てちゃいけないの。これからの皇室はグローバルに国際的に

外交をしていかないと。そして皇族もまた「自由」を満喫する権利があるの。だって同じ人間なんですもの」

同じ人間。

亡くなった先帝は、皇太子にとってただの人ではなかった。

アーヤはいつも「おじじさま」と言って甘えていたけど、自分はそんな風に接する事は出来なかった。

どこか遠い存在に思えたのだ。

どんなときにも隙を見せなかった先帝。そして皇太后。

あんな生き方が正しいとは思わない・・・・そう、思わなくていいのだ。

皇太子は「そうだね」と笑った。

 

 

 

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」104(全部がフィクション)

2013-03-22 07:00:00 | 小説「天皇の母」101-120

アキシノノミヤ家がどんどんスポットライトから離れていく頃、皇太子夫妻のイメージは

可哀想なマサコ様と彼女を守る偉大な皇太子」というもので一色になっていた。

庶民がそう思っていたというより、マスコミが作り出した虚像に過ぎなかったのだが

そうでもしないと、明日にでも「不仲説」が出てもおかしくない状態だったのだ。

マサコは皇太子の趣味、登山とかクラシックとかテニスとか・・・そう言った事には全く興味がなく

結婚3年目になると無理して一緒に行く必要もないのではないかと思い、同行しなくなった。

一方で、マサコが発信する「普通の生活」というものに触れた皇太子は、まるで世界観が変わって

しまった。

生まれた時から「将来の天皇」として育てられた皇太子はわがままを言う事を知らなかった。

母にとっても父にとっても理想の息子でいる事になんら疑問を抱いた事などなかったのだ。

でも、マサコと結婚して以来「人間なんだから嫌な事は嫌だし、好きな事は好き。それを正直に顔に出して

何が悪い」と言われ、その通りに行動されると、それがひどく輝いて見えるのだ。

今まで大膳の食事に不満を抱いた事などなかった自分。

せいぜい学習院大学のカレーライスがおいしかったという印象しかない。

でもマサコは「世の中にはもっとおいしいものがあるのよ。フレイカの中華、ロジェのフレンチ。

宅配のピザだっておいしいのよ。和食なんて古臭いし若い人が食べるものじゃない」

と言い、とうとう東宮御所でピザをとってしまった程だ。

無論、宅配先は宮内庁東宮職で、そこからこっそりマサコ達の元に運ばれたのだが。

外食なんて考えた事もなかったが、マサコが「外で食べたい」といえば、なぜかそれがまかり通る。

そんな事してもよかったのだ…と思うと、皇太子は今までの人生は何だったのかと思ってしまう。

フレイカの中華は食べた事のない程おいしかったし、ホテルのフレンチは外国旅行をしたような気にさせてくれる。

そう、同じフレンチを東宮御所で食べるのと店で食べるのではこんなにも味が違うのだ。

地方へ公務へ行った時も、マサコはちゃんと名産品を覚えていて

ここのチョコレートを2箱、買える?」と聞く。すると回りは「お金なんてとんでもございません。

献上いたします」と言って、いくつでもくれる。

マサコはそういうものをがんがん貰っては妹達に配ったりしていた。

さすがお姉さま。皇太子妃ってすごいのね」と言われると、マサコはその時だけ

結婚してよかったと思う。そういう満足そうな顔を見て皇太子はほっとする。そんな毎日。

 

皇太子は相当な酒好きではあったけれど、特に好みを言うような事はなかった。でもマサコは

日本酒なら〇〇の吟醸じゃなきゃダメ。ワインは・・・」と妙に詳しい。

それを取り寄せてみると、なるほどおいしい。

公務があるからと言って前日はあまり飲まないようにしているのだが、マサコはそんな事おかまいなしに

夜中まででもワインをたしなむ。

どうしていけないの?ここは私達の家じゃない?好きに暮らしちゃいけないわけ?」

そう言われたら反論できない。

皇太子っていう地位は偉いのよ。イギリスを見なさいよ。チャールズ皇太子はあなたより数倍は立派な

服を着て好きに外出してるじゃない?あなたがそうやっていけない事なんて何もないんだから。私達は

そういう事を許されている身分なんですもの」

そんな勘違いを助長させたのは東宮職の判断だったかもしれない。

とにかく「世継ぎ」を産んでほしい。

結婚3年目で妊娠する気配がないとなれば、普通は不妊を疑って治療を始めるものだ。

しかし、皇太子もマサコも自分達が不妊症である事を認めようとしない。

静かな環境が必要だ」というばかり。

「静かな環境」とはすなわち、好きな時間に寝て起きて食べる・・・というような生活をさしていたのだが

東宮職はまさか、そんな事を思っているとは知らず、ただただ静養の時間を増やすばかりだった。

 

その年は8月に須崎、9月と10月が那須、11月は御料牧場と立て続けに静養期間を設けた。

二人きりで過ごす時間が増えれば自然に妊娠してくれるかもしれないという涙ぐましい希望だったのだが

マサコは「決まりきった御用邸で静養したってちっともリラックスできない」と言い放った。

だって回りに人がいるじゃない?」

要するに女官や侍従が邪魔という事なのだろう。御用邸ではなるべく二人きりの時間を増やしているつもりだ。

しかし、警備の都合上、簡単に御用邸の外に外食へ・・・というわけにはいかないし、身の回りの世話も

あるので、全くゼロというわけにはいかない。

でもマサコにしてみれば「用事がある時だけすぐさま駆けつければいい」としか言わない。

そのうち、直接話すのも面倒になったのか、御用邸でも東宮御所でも用事がある時はドアの下から

紙を出すという事をやり始めた。

皇太子は「そういうやり方があったのかあ」と新鮮な気持ちになった。

皇太子だって時には内舎人や侍従の存在がうるさく感じる事があった。

ハマオ侍従なんて始終自分のそばについてああだこうだと口うるさく言っていたっけ。あの時、マサコの

やり方を知っていたら、どんなに楽だったことか。

要するに世間をよく知っているマサコのセリフは皇太子にとってまるで神からの啓示のように見えたのだった。

那須の御用邸では、マサコは近くのレストランにご贔屓を見つけたらしく、足しげく通うようになった。

勿論、その時は貸切である。さらに土産物屋でどうでもいいようなものを買いまくったり。

そういう事をしている時のマサコは非常に楽しそうだったので、皇太子は何も言えなかった。

 

立て続けに静養を入れた事で、本来なら「公務を頑張ろう」とか「両陛下に申し訳ない」とか

そう思ってもいい筈なのだが、マサコは「余計にプレッシャーがかかった」と言っては怒り

自由がない」と言っては癇癪を起す。今すぐでかけたい。5分後には出たい。なのに回りは

警備の都合上、せめて半日前に予定を組んでほしいという。そういう事がマサコには我慢ならなかったのだ。

好きな外食も頻繁になれば東宮女官長や侍従長などから「少しお控えに」と言われる。

その度に「一体、あなたたちは何様なの?誰に向かって話をしているわけ?」と怒鳴る。

怒鳴れば誰も何も言えなくなる。

そういう光景を目にした皇太子は、こんなやり方があったのかとまた感心する。

今まで、誰かを怒鳴ったり叱りつけたりすることなどなかった。

そんな事をしたらすぐにハマオに「殿下、上に立つべき人のなさるべきことではありません」と叱られる。

でも現実に目の前でマサコは怒鳴り、怒り、回りは恐縮して何でも言う事を聞く・・・それを見てしまっては

自分が今まで我慢してきたことが全部無駄だったのではないかとおもうのだ。

 

おじいさま!」

秋のある日、久しぶりに帰国したオワダ夫妻とユミコの両親であるエガシラ夫妻が東宮御所に集まった。

マsカオは祖父が来てくれた事がよほど嬉しかったらしく、大膳に命じて特別のフレンチを出した。

チッソの会長として辣腕をふるい「庶民がくさった魚を食べたから」とミナマタ病患者に言い放った男も

現在は88歳になろうとしている。

一銭を退いても相談役として残り、今や皇太子妃の「祖父」である。

歩くのが大変なので、車いすを使う。東宮御所の秋の風景は非常に美しかった。

いやいや・・・マサコとこんな風に東宮御所を散歩する日が来るなんて」

とユタカは目を細めた。

長生きはするものだ。なあヒサシ君」

ヒサシも満足そうに笑った。

わしは今や国連大使の義父で皇太子妃の祖父だよ。思えば長い道のりだったなあ。チッソの件では

どれ程屈辱を受けたかわからない。私には何の罪もなかったのに。そんな屈辱を恨みをマサコが一人で

はらしてくれたんだよなあ」

その通りです。マサコは親孝行者ですよ

「ねえ。もう少しワインをいかが?チーズも極上のを揃えているのよ。私が直接選んでいるんだもの。

これなんて滅多に手に入らないものなの。おじいさまの為なら何だって揃えて見せるわよ」

マサコは上機嫌だった。

うんうん。やっぱり皇太子妃というのはすごい地位なんだなあ。妃殿下。わたしは嬉しいですよ」

そしてマサコの横に飾り物のように立っている皇太子に笑いかける。

うちのマサコは本当に昔から親孝行でいい娘だったんですよ。どうか殿下、この先もよろしく」

「ええ。お任せください。おじいさまももっと頻繁に東宮御所にお出かけください。そうすればマサコも

寂しくないでしょうし」

皇太子もにこやかに言った。

するとマサコが「泊まっていけばいいのよ。部屋はいくらだってあるんですもの」と言い出した。

さすがにそれは・・・と皇太子は微妙な顔をしたがマサコはおかまいなしだった。

でも東宮御所って段差が多いのよね。家具も古臭いし。バリアフリーにすればいいのよ」

それはいい考えだな。どうでしょうね。皇太子殿下」

ヒサシも頷いた。

え?と皇太子は言い「バリアフリーってなんですか?」と聞いてしまった。

やあね。段差がない床の事よ。段差がなければ車いすだって自由に動けるでしょう。おじいさまがいつでも

泊りに来られる部屋を作って欲しいの。それくらい出来るんじゃない?」

どうだろうね・・・」

思わず、侍従長を見る。侍従長は真っ青になっていた。ここでおかしなことを口走ればマサコが

機嫌を損ねて怒鳴り始めるかもしれない。かといってエガシラ家の為に東宮御所を改装するなんて・・・・

そういう事は宮内庁の予算の範囲内で行われるもので」

では私にお任せ下さい。外務省を通じてさっそくかからせますから」

ヒサシは声を出して笑った。皇太子思わずも「それはありがたい事ですね」と言ってしまった。

皇太子殿下。殿下が色々となさりたい事は私達がかなえて差し上げますよ。何といっても皇太子殿下は

将来の天皇なのです。叶わないものなどないのです。そしてそれを叶えて差し上げるのが我々

外戚の仕事です。殿下が肩書が欲しいとおっしゃれば用意しますし、行きたい場所があれば行かせて

差し上げますよ」

「本当に・・・・」

皇太子は思わず目を大きく見開いた。脳裏に弟の姿が浮かぶ。

そういえば弟は成人と同時に動物園の総裁だの・・・いくつもの名誉総裁の肩書を持っている。

博士号も貰ったらしい。皇位継承者の自分とは違って働かなくてはならない身分なんだからと

思ってはいたけど、何となく世間的に弟の方が頭がいいと思われているのではないかと不安になった。

本来、何でも弟よりは特別な筈の自分が、どうしてこんな風にコンプレックスを感じるのかまだわからなかった。

でも、望めば・・・いつか弟より多くのものを望めば叶うというなら・・・・

皇太子は全幅の信頼をヒサシに向けたのだった。

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」103(頑張るフィクション)

2013-03-18 07:00:00 | 小説「天皇の母」101-120

アキシノノミヤ晩さん会を休んでタイに行く」

「アキシノノミヤ、タイに愛人 隠し子も」

こんなセンセーショナルな記事が週刊誌を飾ったのは春の事だった。

それは些細な一件だった。少なくともアキシノノミヤ家にとっては。

そもそも小さい頃から動物が好きだったアキシノノミヤ。本当は理科系の大学に入りたかったのに

学習院にはそういう科はなく、仕方なく法学部に入る。

でも自然文化研究会というサークルを立ち上げ。他の大学などと交流をし、イギリス留学で

初めて専門分野を極める事が出来た。

当時はナマズの生態を研究していたので「ナマズの宮様」と言われた事もある。

けれど、本来は家禽・・・つまりニワトリが野生から家畜になっていく過程を勉強したかったのだ。

ニワトリの生態を研究するにおいて、もっとも適した国はタイだった。

タイにはまだ半野生のニワトリがいるし、飼い方も大昔のそれと変わっていない。

また闘鶏も行われており、非常に鶏との関わりが深い国だ。

タイ王室と日本の皇室の繋がりも深く、天皇はかつてタイに新種の魚を送って食糧事情の改善に

尽くしたこともある。またシリントン王女とアキシノノミヤは非常に仲が良く、本当の姉弟のようだった。

タイ国民にもアキシノノミヤの存在は深く浸透している。

そういう中で、今までにも何度もタイへは行っている。

今回はその時期がたまたまクリントン大統領来日と重なっただけだ。アキシノノミヤとしては日程を調整したが

タイの都合がつかず、やむなく天皇に相談した所、タイ行きを優先してもよいという許しが出たので

晩さん会には出ずタイへ飛んだのだった。

ところが・・・どういうわけかその事が週刊誌にすっぱ抜かれ「公務より趣味を優先したアキシノノミヤ」と

大々的に報じられたのだ。

そもそも昔から自分勝手な傾向があった宮。結婚の時も先帝の喪中であり、皇太子の結婚が

決まっていなかったのにほぼ無理やり自分の意見を押し通した。そんな宮に陛下はいつも頭を

痛めていたのだ。結婚して落ち着くかと思われたが、趣味の研究に没頭するあまり、回りが見えなく

なっているのではないか。今回のクリントン大統領の来日は国家にとって重要な案件だ。

それなのにアキシノノミヤは大事な大統領との晩さん会をすっぽかしてタイを訪問。公務より私的な趣味を

優先した宮に宮内庁も困惑している」

何なんだこれは!」

週刊誌をばさっとテーブルに置いて宮は怒鳴った。侍女も事務官も無言で嵐が通り過ぎるのを待つしかなかった。

一体誰がこんな事を雑誌にリークした?」

宮の導火線はぱちぱちと音を立てて燃え上がり今にも爆発寸前だった。

雑誌の記事はそれだけにとどまらなかった。

何と「タイに隠し子がいる。陛下も知っている。アキシノノミヤのやり方に両陛下は体調を崩すほどに

悩まれている」といった記事が出たのだ。

これにはさすがの宮も怒りを爆発させ、宮邸に激震が走った。

無論、夫が浮気しているとは思いたくないが、何と言っても宮はもてる。その容姿も性格も愛されキャラ全開で

特にタイでは本家本元の皇太子をさしおいて宮の方が親しまれているくらいだ。

そういう素敵な夫を持った事を誇りにすればいいだけの話なのだが、宮の愛だけを頼りに入内したキコとしては

なかなか複雑な気持ちだった。 

お静かになさいませ

キコがなだめる。例の子供を云々以来、夫婦の間には微妙な空気が流れつつあった。

どんなに未来志向のキコでも、あからさまにプライベートな子づくりに口を出された事や、両親に口答え

出来ない夫に失望していたのだ。

今回の記事も出るべくして出たのでは?などといじわるな事を考えてしまう。

みなが見ております。興奮なさらないで

君は平気なのか?こんな事を書かれて。皇族が表だって反論できないのをいいことになんだ?

この書き方は。晩さん会を欠席した事は陛下の了承を得ている事だ。勝手な事をしたわけじゃない。

タイに愛人って誰の事だ?隠し子ってどこにいるんだよ。そんなものがあるなら見せてもらいたい」

本当に心当たりはないとおっしゃるのね?」

キコの鋭い視線が宮を射抜く。

宮はますます怒って「キコ!」と怒鳴った。

君・・・君まで疑うのか?何を考えているんだよ。今まで何度もタイには行ってるけど一度も浮気なんて

した事ないのはよく知っているだろう」

そうですわね。愛人なる人を見た事もありませんし。でもだからって全くそういう事がなかったとは・・・・」

いい加減にしないか。大切な学問の話に浮気なんて下世話な事を持ち込むとは。君がそういう人間だったとは

ね。ああもう!!」

そうやって興奮なさると、余計に疑いが本物ではないかと憶測を産むのですわ。落ち着いて下さい」

キコは侍女にお茶を持ってくるように言いつけた。宮がタバコに火をつけようとするのをぴしゃりと落とす。

「タバコはいけません。不整脈があるんですのよ。宮様の体はあなただけのものではありません」

口うるさいったら・・・・じゃあウイスキー」

いけません。昼間から何をおっしゃってるの。お茶で我慢して下さい」

本当に口うるさい。こういうストレスがかかっている時くらい好きにさせてくれてもいいじゃないか」

口うるさくて悪うございましたね。だったらもっと優しくて甘やかしてくれる方の元へお行きになったら?」

なんだと?いるならとっくにそうしてるよ!キコは融通が利かな過ぎる・。それでも妻か?」

妻です。残念ながらあなたの妻です」

勇敢な侍女が暖かいジャスミンティーを持ってきて、その場は一瞬静かになった。

事務官が恐る恐るいう。

あの・・・雑誌社に抗議いたしますか?宮内庁を通して抗議を?」

やっと宮が冷静になった。

ああ・・・事実でない事には全て抗議するように伝えてくれ。まず、クリントン大統領晩さん会を欠席

した事は陛下も了承済みである事。タイに愛人なんかいないし、カワシマ教授が皇居に直談判に行った

なんて嘘だから」

事務官は一礼して去って行った。

宮はふうっとため息をついてお茶を飲む。知らないうちに雨が降り出していたのか、ぴちゃぴちゃという

音が屋敷の屋根にかかっている。

悪かったよ・・・興奮して」

はい。私も

「でも信じて欲しい。浮気なんかしてないから。僕はキコだけが好きなんだから」

鶏とどっちが?」

その言葉に思わず宮は大笑いしてキコを抱き寄せた。

「鶏にやきもちをやくなんて・・・・君は最高の尾長鶏だな」

それを聞いてキコはちょっと顔をあからめた。

それなら・・・まあ、許して差し上げても。殿下を信じますわ」

よかった。でも、どうにもひっかかる

何がですの?」

なぜ突如、こんな話が出て来たかという事だ。我々は何もしていないのに。今までだってタイには行ってる。

晩さん会欠席などという事がこんな大事になる事もなかった」

誰かが仕組んだとでも?」

「うん・・・・」

だとしたら一体誰が何の為に?夫婦には全く心あたりがなかった。

 

宮内庁からは即刻抗議が上がった。

晩さん会欠席は両陛下の了承済みであった事。別にアキシノノミヤの行動を問題視してはいない事。

そしてタイに愛人を囲っているという記事・・・その事に対してキコの父であるカワシマ教授が皇居に

乗り込んで陛下に直談判して事の真偽を確かめた事・・・についても、そのような事実はないとした。

それでも雑誌社は謝罪しなかった。

全てにおいて「取材した結果に基づいている」と言い張った。

あまりに何度も抗議をすれば余計に大騒ぎになるとの判断から、宮内庁は何をどう書かれても対処せずの

立場を貫くことになった。

けれど、一度「アキシノノミヤはタイに愛人を持っている」「皇太子に比べて問題児のアキシノノミヤ」というレッテルは

そうそうはがれることもなく都市伝説化していく。

 

いつまでたってもタイに愛人がいるという話が収まらず、さらにタイの大学から名誉博士号を貰うに至っては

「変な大学」というタイトルで記事になる始末。

中傷記事はアキシノノミヤにとどまらず、キコにまで及ぶ。

普通に公務をしても「目立ちすぎる」とか「次男の嫁は気楽」などという失礼千万な記事ばかり。

誰かがアキシノノミヤ家を貶めようとしている。それはわかったが、誰が何の為に・・・という所までは

誰も考えが至らなかった。

仕方ないので宮家では行動を控えめにすることにした。

つまりマスコミ取材を最低限にして控え、露出を減らす事にしたのだ。

どのような時も皇太子家をたて、自らは控える。長い忍従の日々の始まりだった。

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」102(必死なフィクション)

2013-03-12 07:59:27 | 小説「天皇の母」101-120

全く・・・」

カマクラ長官は気難しい顔でデスクに腰をかけた。

何冊もの雑誌が机の上に広げられ・・・あるページで開かれている。

一冊に書かれていたのはマサコの父、オワダイヒサシが現役の外交官時代に

某新興宗教団体の会長が訪米する時に便宜を図ったというもの。

外務省全体が、その新興宗教に侵されているというのは自明の理ではあった。

内部では、その団体の会長に特別な措置を講じた事は有名な事実であり、外務省の

慣例になっているという事。

しかし、一般的に「政教分離」の原則を貫くはずの分野でなぜにそういった事が起こるのか。

そしてなぜオワダヒサシは喜んで手を貸したのか。

(だからあの時、結婚しなければよかったのに

外務省という所は今や、日本で最も意味不明の省と言われる。まるで伏魔殿のように。

それだけに身内の結束も硬い。そういうメリットを考えて便宜を図ったのだろう。

そして外務省の天下りの機関の一つに宮内庁もある。

今、東宮侍従長はフルカワという外務省出身の官僚。これが近いうちに東宮大夫になる。

そしたらヤマシタ侍従が侍従長に昇進する。これまた外務省出身。

ふと気づけばあっちもこっちも外務省出身者だらけになっている。

何かがおかしい。カマクラはそう思っていた。

けれど人事は自分が決めるわけではないから口出しも出来ないのだ。

 

もう一冊はニューズウイーク「姿を消したプリンセス」だった。

元外交官でキャリアウーマンのマサコ妃は皇室に入って以来、姿が見えなくなった・・・という

書き出しで始まる。要するに伝統や格式ばかり重んじる宮内庁がマサコの個性を潰している

という話。それと世継ぎのプレッシャーを排除する為に「女帝」を認めるべきだとの話。

(大きなお世話だなあ・・・・伝統と格式が悪いものと決めつける左巻き人間が書かせた

東宮妃擁護・・というか、逆に言えば天皇・皇后を否定している事になるのだが)

一体誰がこんな記事を?

日本の皇室は男系男子で続いてきたのだ。それを唐突に女帝論をぶち上げるとは。

一度でも妊娠して出産したとかいうのであればわかるが、東宮妃は妊娠すらしていない。

それとも「女でもいい」とか言えば明日にでも妊娠するのか?

 

ノックがした。

入れ

入ってきたのはモリ東宮大夫とフルカワ東宮侍従長とヤマシタ侍従。

何かございましたか?」

モリ東宮大夫は人のよさそうな顔でにこっと微笑みながら聞いた。

カマクラは3人に座るように進める。

懸案事項について話さなくてはならないと思ってね」

「懸案事項と申しますと、妃殿下のご懐妊ですか?」

モリはヤマシタやフルカワと顔を見合わせた。

つまり・・その・・・なんだな。妃殿下には結婚2年を過ぎてもご懐妊の兆候が見られない。

これはいわゆる普通の・・結婚生活を送りながらも出来ないという事なのか?それとも

お二人はもしかして・・・・」

カマクラの表情に3人は黙り込んだ。どう答えていいかわからない様子だった。

なぜ誰も何も言わない?」

こういう事は結婚を取り持ったヤマシタさんが言うべきではありませんかな。私達は

外側からしか見てませんし」

矛先を向けられたヤマシタはぎょっとなる。

どういう事なんだね?二人は仲が悪いのかね?」

いえ、決してそういう事では・・・・ただ・・・その・・・」

なんだね」

ご夫婦というわけでもありません」

なんだって?」

カマクラは思わず大きな声を出した。モリもフルカワも黙っている。

それはどういう事なんだ?」

お二人はご友人同士のように見えます。いわゆる男女の仲とかいう色めいた雰囲気は

あまり・・・しかし殿下は妃殿下を必要としていますし、妃殿下もまた殿下を必要としています。

お二人の相性は決して悪くないものと考えます

じゃあなんで子供が出来ないのだ?」

それはコウノトリが・・・・」

ヤマシタは冗談をいいかけてやめた。カマクラはそんな事を受け入れるような顔をしていなかった。

ここ数か月、妃殿下は頻繁に外食をなさっている。ピザをとったとかいう話もあるぞ」

それはほぼ事実でございますね」とフルカワ。

大膳の味付けは嫌いなんだそうです。ついでに御料牧場の牛乳はアトピーがひどくなるとかで

わざわざ市販のものをお飲みになっています」

「原因不明の体調不良に襲われることがあり、公務を休むのもたびたびとか」

はい」とモリ。

出発直前にそういう話が出るので、こちらはもう大慌てです。でもまさか体調が悪いというのに

おでましにというわけにもいかず。健康診断はよっぽどでないとお受けになりません。

注射が嫌いとかいうのではなく、プライベートをさらすのが嫌なのです。

妃殿下はご自分の殻に閉じこもっておいでです。それを殿下はただ見ているだけで」

もういい」

カマクラはさえぎった。

スケジュールをゆるやかにしよう。月に一度は静養し静かな環境を作ればあるいは・・・

今はそれしかあるまい。いいか、静かな環境だぞ。そして何が何でも世継ぎを!」

3人はカマクラの並々ならぬ決意に大きく頷いた。

 

しかし、その頃、皇室では大きなスキャンダルが起きていたのだった。

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韓国史劇風小説「天皇の母」101(新たなるフィクション)

2013-03-06 08:00:00 | 小説「天皇の母」101-120

「何でこんなに頭にくるのかしら」

マサコは部屋にひきこもったまま、延々と考え続けていた。

皇室に入ってからぐっすりと眠れた日は数日しかなかったように思う。

これはもう価値観の違いというより、日本と外国、いや、地球と宇宙の差くらい世界が違う。

皇室における何もかもがマサコには理解できなかった。

理解できないから注意されると心に剣が突き刺さる。プライドがむくむくと頭をもたげてきて怒りに変る。

四六時中回りに目があるのも嫌だった。

まるで監視されているみたいに。

大昔、経験したことのある視線だ。あれは・・・外交官夫人達のパーティだろうか?

誰かが自分達を冷めた目でみつめていた。

「あの人は・・・チッソの・・・オワダの・・」という目。それがどんな意味なのかわからなかった。

自分にとって両親は常に「正義」である。でもそう思わない連中もいるのだ。そう思う事にした。

侍従や女官達の顔を見ると、そんな小さい頃から経験してきた嫌な印象が蘇ってくるふぁのだ。

「嫌な気持ち」は体を緊張させry。もうそんな気持ちになりたくないという意識からか。

マサコは人前に出るのが嫌になった。

しかし、「キャリアウーマン」の印象は残したい。だから公務には出てけれど、

CWA版画レセプションで単独でスピーチを任された時は「しばらく一人にして」と頼み込み、原稿を手に

部屋でぶつぶつ練習をしたのだが、いくら練習しても緊張感はとれないし、それが本番になると余計に

冷や汗が出てきて驚いた。

注意されると冷や汗が出て、それから自分がひどく落ち込んでいる事に気づいた。

落ち込んだというか、「傷ついた」というべきか。

例えば、

年末の鴨場接待は外国人としゃべる事が出来て楽しかったが、「妃殿下はおもてなしする側ですので」と

注意をされて傷ついた。

言われた通りに鴨を放しただけだ。まさか鴨の羽根が折れてしまうなんて思わなかった。

へこへこ飛ぼうとする姿が面白くてきゃぴきゃぴ笑ったら回りがシーンとしてしまい、皇太子まで

まずそうな顔をしている。

マサコが白人とばかり接したがるという事で不評を買った事もあった。

自分としては顔見知りだったり英語が通じる相手でなければ会話する気にならない。

ゆえにそうしただけだが「誰にでも平等に接して頂きたい」と言われて傷ついた。

傷つけられる正当な理由がないのに苛められている自分。

きっと故意にそういう事をしているのだ。皇室に外務省や父の力は及ばないと思っているのだろうか。

 

歌会始めの歌もそうだ。

もろ手もちてひたすら花の苗植うる知恵おそき子らまなこ輝く

自分としては非常にいい出来だと思ったのに、添削の師から

それなのに、「知恵おそき子はちょっと・・・・」とケチをつけられたのだ。

公務と関係がある歌をと言われたので、障碍者施設を訪問した時の光景を詠んだ。

子供達が花の苗を馬鹿の一つ覚えのように植えている光景が浮かんだから・・・・でも問題は

植えていた子が「知恵おそき子」だったからという話。

和歌の世界で「知恵おそき」と使うのは決して悪い事ではないし、障碍者を歌ったうたは多々ある。

自分の歌だけが特別ではない。

それなのに「どこか差別的な表現にみえかねないので・・・お直し下さい」と言われたのである。

何で?どこが差別的なんですか?だってあの施設にいるのは知的障碍児ではないですか。

事実を詠んだだけです。それに知恵おそき子という表現は過去にもいろいろな人が使っていると

聞きました。私の歌だけがおかしいわけないでしょう?」

それはその通りです」

そう言われたら教師は何も言い返せなかった。

結果的にそのまま提出され、詠みあげられたが、、この歌は後に「差別的」と言われる。

傷つく心を抱えては生きていけない。

どんなに皇太子に訴えても「おいおいやればいい。そんなに頑張りすぎないで」と言われて終わる。

回りはそう思っていないのに。

 

世継ぎを期待されることも(毎日のように週刊誌には「ご懐妊はいつ?」と書かれる事が不満)

歌を詠む事も、会う人を限定しないことも・・もう何もかもマサコの価値観にはあわない。

気が狂いそうな時にようやく父から連絡があった。

「心配しないで好きなように暮らせばいい」と。

それは一体どういう意味なのか?

 

前年の秋、突如「ノリノミヤ婚約」の怪文書がマスコミに流れて、みなざわめきたった。

お相手は、華族出身で歌会始めの重要な読み手を務めているボウジョウ氏だった。

ボウジョウ家は皇室とゆかりが深く、若いトシナルは非常にハンサムでノリノミヤとも年齢的に

つり合いがとれていた。

何よりノリノミヤ自身が気に入って、このまま話が進むかと思われた。

しかし、ボウジョウ家では内親王を嫁に迎える気はさらさらなかった。

旧皇族、旧華族は回りが見る程「伝統と格式」を大切にしているわけではない。

ボウジョウ家のように皇居での行事に「仕事」として携わるのは仕方ないとしても、21世紀を

担うだろう若い当主たちはみな、「もっと気楽に生きたい」と思う人達ばかり。

なにせ「自由」を手にしてまだ半世紀。

うるさい親世代の「家柄自慢」を聞くのは面倒だ。家の為に頑張ろうとか家の為に結婚とか・・・・

そんな堅苦しい事は御免だ。

まして内親王なんか嫁にもらったら大変。そんな意識があったのかもしれない。

そんな若い世代でも、今上の結婚の時にどんな騒動が起きたかは知っている。

国民はみな祝福したし「開かれた皇室」として皇后の人気は絶大だ。

でも彼らの親達がそうだとは限らない。

あの当時の皇太子の結婚は、日本から明確に身分制度が消えた事を象徴する出来事だったし

それによって伝統も格式も崩れ去った瞬間ととらえたむきも少なくなかったのだ。

そういう時代に適応してきたのだ。今さら後戻りする必要があるだろうか。

 

怪文書が出た途端、淡雪のようにノリノミヤの結婚話は消えた。

宮内庁が話をする前に「お断り」が入ってしまったのだ。

「よろしいのよ」

ノリノミヤは笑った。

まだ私、お仕事がしたいもの。おたあさまのお体も心配。ここでこうして御役目を果たしながら

あたあさまやおもうさまの傍にいるのがいいの」

天皇も皇后も娘の結婚話が一向に進まない事に悩んでいたが、失声症を患って以来、体調不良が続く

皇后にとって娘は最後の心のよりどころ。

年齢が上がっていくのはわかってはいたが、早々たやすくは手放す事が出来なかった。

それを知りつつ、兄たちはどうにもできなかった。

「東宮のお兄様」は自分の生活で精一杯。妹には無関心。

アキシノノミヤは「こっちの集まりに来てこらん」と「サンマの会」に誘ってみるものの、

そうね・・そのうち。私、あまりテニスはしないし

となかなか乗り気にならない。今の皇后に、変わっていく皇室に自分がなくてはならない存在だと

いう事を宮はちゃんと知っているのだった。

アニメと時代劇が大好きで、ヤマシナ鳥類研究所で総裁を務める兄と共に仕事をしながら

バードウォッチングにいそしみ、おしゃれや化粧には全く興味のない、どこまでもおしるしの

「羊草」のような姫宮は27歳になろうとしていた。

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