不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

ふぶきの部屋

皇室問題を中心に、政治から宝塚まで。
毎日更新しています。

韓国史劇風小説「天皇の母」80(すべてフィクション)

2012-11-08 10:33:21 | 小説「天皇の母」61話ー100話

このところ、キコはイライラする事が多くなった気がする。

結婚してはや2年。最初のときめきは過ぎた筈だけど、心の中には

まだ小さな炎が宿っている。

普通の夫婦ならこれでいいのかもしれない。けれど、キコが結婚したのは

皇位継承権第2位の王子様だ。

背が高くてウイットに富んでいて…ロマンチックだけど・・・・鶏オタク。

世間では「宮といえばナマズ」かもしれないけど、今現在、彼が引き込まれて

いるのは「鶏」だ。

それも野生の鶏がどうして家禽になったか・・・を調べるというもの。

野生に近い鶏が生息するのは東南アジアという事で、プライベートでは何度も

タイを訪れた。新婚旅行もタイだった。

おかげさまで週刊誌に「アキシノノミヤはタイに愛人がいる」と報道され、困った経験も。

今や愛人説だけではなく「隠し子がいる」説まで出てきているので、呆れるというより

一体、どこからそんな話が?」と首をかしげざるを得ない。

確かに宮はハンサムでタイでは絶大な人気を誇っている。

王様の写真の隣になぜか宮の写真を掲げているみやげ物やもある程。

もしかしたらアキシノノミヤは皇太子だと勘違いされているかもしれない。

それはそれでいいのだけど、最近の「愛人に隠し子説」が出てきた時点で、宮自身が

怒る気力をなくしてしまった事が許せない。

まあ、そのうちおさまるから。僕がそういう人間じゃない事はキコが一番知っているのでは?」

とのんきな答え。

わかってはいるけど、少しはマスコミに抗議してほしい。公の場でこちらがどんな思いをしているのか

少しはわかって欲しい。

 

皇后に続いて民間から2人目のお妃になった。

新婚早々、即位の大礼があり、子供も生まれた。公務も増えている。学生でもある。

自分としては一生懸命に「妃殿下」として生きていこうと頑張っている。

けれど、時々疎外感があるのはいなめない。

特にマスコミにうわさがのったりすると、妃であるキコ自身が馬鹿にされているような

軽く見られているようなそんな気がするからだ。

おおらかに対処できないのは自分が民間出身だからだろうか。

最近では「マサコさんは皇太子という重い身分に嫁ぐキャリアウーマン。皇太子妃は他の

宮妃よりも立場が重い。マサコさんはなくなく皇室に入る」報道が目立つ。

必ず比較されるのが自分で

キコ妃は自ら望んで皇室に入ったのだからうまくうやって当たり前。しかも気楽な次男の嫁」

と書かれている。本当に心外だ。

宮家といっても筆頭宮家。皇太子妃がいないこの2年間は実質その役割を担ってきた・・・

というより期待されてきた。

何とか皇后のように完璧になりたいと、あらゆる努力をしてきた。

それなのに「働いた経験のないキコ妃は気楽な身分で世間知らず」などと言われるとは。

(私だって大変なのに)

年明けの皇太子妃内定報道からこっち、皇族・旧皇族方と天皇・皇后の間には大きな溝が

出来たような気がする。

間に立っているノリノミヤやアキシノノミヤは平静を装うのが大変だ。

誰も何も言わないけど、確実に「そちらがわ」にされているアキシノノミヤ家。

特に天皇が招待した晩さん会の皇族方欠席は、大層大きな一件でみな傷ついた。

傷ついたがそれを外部に漏らすわけにはいかない。

皇太子一人、何だかにこにこと得意げに笑っているのが何とも憎たらしくて。

憎たらしくなっても口には出来ず・・・・・でも顔に出るのだろうか。

眉間にしわを寄せるな」と宮に言われた。

宮自身も割と表情に出るタイプだから夫婦そろって素知らぬ顔をするのは大変だ。

それでも忙しさに紛れていたら、今度は「皇后が女帝」報道。

週に一度は参内し、皇后の話を聞いたり教えて貰ったりしているキコにとって

目の前で傷つき、心労を重ねている皇后を見るのはつらかった。

それはノリノミヤも同じで、顔を合わせれば「困った事になったわね」

どうしたらいいかしら」と話をするが、どこにも解決の糸口がない。

オワダさんが皇太子妃に決定してから何もかもおかしくなった気がする」

とノリノミヤは言った。そんな事、両親の前では言えない。

滅多な事をいうもんじゃない。小姑根性だよ」

と宮がたしなめる。

途端に女性二人は眉を吊り上げた。

小姑根性ですって?お兄様、それ本気でおっしゃってるの?」

「宮様、今の言葉はききずてなりませんわ。妹君に対して失礼です」

二人の迫力にアキシノノミヤはうろたえた。

内定からこっち、トラブルばかりですのよ。金箔箪笥の件に至ってはあまりの品のなさに

おもうさまもおたあさまも言葉がお出にならなかったくらいよ。ミカサノミヤのおじさまは本当に

怒っているってタカマツのおばさまが心配されているし。このまま皇族方が分裂したら

どうするの?」

そんな事にはならないって」

お兄様、お兄様は弟として東宮のお兄様がどうしてあの方に拘ったか、どうしてあんな風に

結婚する羽目になったのか、お聞きになる義務があってよ」

私もそう思います。宮様はのんきすぎます

キコにのんきって言われるとはね」

宮は煙草に火をつけるが、それはキコにぷいっととられてしまった。

「おいおい・・・タバコくらい」

「マコの為ですから」

「・・・・・・にいさまは今幸せなんだろうから何も言えないよ。オワダ家がどうのとばかりも

言えないだろう。僕たちだって」

カワシマ家が何か?」

いや・・だから慣れない事に関しては失敗も多々あるという事で」

お姉さまとオワダさんを一緒にしないで。お姉さまに失礼です」

やれやれ、お前達二人は本当に姉妹のようだね。彼女も気の毒に」

このセリフはさらに女性達の怒りをあおり、しばらくキコは宮と口をきかなかった。

いつもほがらかで優しくて明るいキコが機嫌を悪くしているので、さすがの宮も

様子を見よう。きっと大丈夫。それにキコは筆頭宮家の妃として本当によく頑張っているし

母や妹と仲良くしてくれてありがたいと思ってる。本当だってば」

と言ったが、それでもキコの気持ちは晴れなかった。

女帝報道は?どうなさるの?」

そのうちやむさ」

またものんきな答えが返ってきた。

どうやら家庭の危機に関しては男は鈍感なものらしい。

キコは漠然と不安を抱いていた。これまで大変ながらも築いてきた宮家の立場が

脅かされるのではないか。

あのオワダマサコという人、その家の価値観に自分たちはついていけるかどうか・・・

本当に不安だったのだ。

その不安をあおるように・・・6月9日は大雨になった。

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国史劇風小説「天皇の母」79(フィクション?)

2012-11-02 08:00:00 | 小説「天皇の母」61話ー100話

その報道は突然始まった。

しかもセンセーショナルに。

女帝と呼ばれ始めたミチコ皇后に囁かれる宮中独裁支配の内情」

皇太子の結婚式が近づいているまさにその時に週刊誌が書き立てたのだ。

・ 今上は皇后の尻に敷かれていていいなり

・ オワダマサコ嬢が着ていた異様な黄色の皇室ファッションは皇后のさしがね

・ 皇后は衣装代などに贅沢三昧

・ 宵っ張りで夜中に女官を呼んでインスタントラーメンを作らせることも

・ 皇太后を今までの吹上御所に置き、あらたに新吹上御所を建築。

  皇后の希望で皇太后とは同居しない。

・ 新御所の間取りなどに一々こまごまと口出し。それだけではなく女官や侍従の

  仕事にも口を出す。

・ かつて宮中改革者だった皇后が時代を経て、誰よりも保守派になりマサコさんと

  対立するのでは。

・ 皇后のあだ名は「女帝」・・・・・証言はオウウチタダス。

・ ハマオ氏「今の皇室は楽だけを国民と共有しているのではないか」

 

この記事を目にした時、皇后はあまりのショックの為、口がきけなかった。

オオウチタダスとは誰なのか?なぜこのような根も葉もない事を?

誰が許可し、誰が取材し、どういう経緯で書かれたのか。

記事の内容の一つ一つが全て皇后の人生を全否定していた。

「これはひどいね

さすがに天皇も顔をしかめた。

一体、オオウチタダスって誰なの?おたあさまをそんなによく知っている

宮内庁職員がいるという事なの?どこの誰よ。ハマオさんが本当にこんな事を

言ったの?」

ノリノミヤは怒り心頭で言い放った。珍しくきつい口調だ。

サーヤ、言葉が悪い」

天皇は週刊誌を置き、少し考える。

内部にそういう話をする人間がいるという事だろうか」

先帝の時代、戦後になって宮内庁職員が全員国家公務員の持ち回り制になっても

イリエやトクガワのように戦前から皇室に仕える内なる者がいた。

彼らは「オモテ」の宮内庁に対して「オク」と言われ、オクの権力ははかりしれないもの

があった。

「陛下のご意向です」といえば、全てが通るような空気があった。

しかし、新しい時代になりそういう者たちがいなくなり、宮内庁は官僚の

赴任先の一つとなり、かつてのような「命をかけて陛下をお守りする」

というような人間はいなくなっている。

宮内庁というのは一種の特殊な職場で、箔付には持って来いの場。

そんな場所になりつつあるのが時代の流れだった。

しかし、内側から皇后を告発するような人間が出てくるとは思えなかったのも

事実。

宮内庁長官、侍従長、女官長、誰に聞いても知らないというし、彼らを疑いの目で

見る事は天皇にも皇后にもできなかった。

しかしながら、この記事を境目に疑心暗鬼の空気が流れ始めたのも事実で。

「抗議をすべきかどうか」

侍従職、女官職を通して相談したが、誰もそうした方がいいともしない方がいいとも

言わない。

何か言えば白状したように見えるのだろうか。

抗議をすればよけいに事は大きくなりますゆえ、ここは黙っていた方が」

やっとのことで長官が言う。確かにその通りだ。

嫌です。きちんというべき事は言った方がよろしいのでは?

だって事実ではありませんもの。それに、もし内部の人間が本当にこんな事を

雑誌に話したのだとしたら大問題でしょう」

珍しく皇后が興奮して叫ぶように言った。

その件については内部で調査いたしますので」

調査ってどのようにするのですか?結果、どうするのですか?」

ミー」

天皇がたしなめる。皇后の気の強さと我慢強さ、そして完璧主義は

時折相手を追及してしまう。

長官がそのようにいうのだから任せよう」

天皇の言葉に誰もが黙り込んだ。

しかし、雑誌を通して大っぴらにバッシングされた皇后は深く傷ついた。

贅沢?鉛筆を一本使うにも神経をとがらせてきたのに?

宵っ張り?インスタントラーメン?誰の話をしているのか。

衣装代がかかる?御所の建築も皇后のせい?

誰が何の為にそんな事を。

今は慶事を控えておりますので、あまり騒ぐ事は。所詮、雑誌の記事に

すぎません。忘れられるかと」

慰めるように長官は言った。

おたあさま、ドンマーインよ」

娘の慰めも今の皇后には悲しかった。

今まで、自分の味方は国民であったし雑誌であったし、つまらない事で

バッシングされたりしないように一生懸命に生きてきたのに。

立ち居振る舞、服装、表情に至るまで完璧に「ミチコ」を演じてきたのだ。

もはや「素」の自分が何であるかさえ、わからない程に「皇族」になりきって

きたつもり。

それなのに、ここにきてまだ自分は「皇族」ではないといわれているのだろうか。

本当に皇族として見られているなら、このような記事は書かれる筈がない。

このような事を書かれるからには、自分が一段低く、軽く見られているという事だ。

もしこれが皇太后なら、絶対にこんな記事が出る筈がない。

それを考えると胸がつぶれそうだ。

所詮は「ショウダミチコ」のままなのか?皇后の地位にあってさえ。

何より悲しかったのは、夫である天皇が「事なかれ」で流そうとした事だ。

昔なら・・・・皇太子時代なら・・・・

孤独が皇后の心をむしばんでいった。

 

巷の「マサコさんフィーバー」は少しも盛り上がらなかった。

女性週刊誌を始め、ワイドショーは懸命に「スーパーキャリアウーマン」で

学歴優秀・才色兼備のオワダマサコさん」を特集して、毎日のように報じるが

それでも関連グッズが売れるわけでもなければ、株価が上昇するわけでもない。

「あんなに嫌だって言ってたのに」

というのが国民の素直な意見だったろう。

それでなのか、「皇太子とマサコさんの恋」の話はいつしか

国家の為に泣く泣く嫁ぐオワダマサコ」という戦略に変わっていった。

皇太子の度重なる要請に逆らえず

・皇太子の初恋が実った

・三顧の礼をもって迎えられた

・キャリアを捨てて日本一保守的な皇室に嫁ぐいたいけなプリンセス

そんなイメージ戦略だ。

 

正直、ヒサシは自分たちがここまで皇室に適応出来ないものだとは思っていなかった。

皇室なんか、入ってしまえばどうにでもなる。

外務省の機密費を流用し、入内する費用にはこと欠かなかったし、政府もそれを

後押ししてくれている。

外務省のオオトリ会を通して学会もバックにつき、も味方。

何も怖いものはないはずだった。

それなのに、晴れの婚約記者会見ではマサコが着ていた黄色のスーツが

「妃殿下きどり」と揶揄され、言葉遣いがどうのとか生意気だと言われた。

その後に参内した時のユミコの着物の帯が失笑を買った。

ミキモトからパールを贈られれば即刻返却を求められ、金箔箪笥は品がない

と言われた。

3代前が不詳と言われた時にはさすがに肝が冷えたが、の介入で

出自を調べるのを中止させることが出来た。

しかし、「墓参り」くらいしなければ恰好がつかず、結果的に新潟に急きょ

先祖の一人?を目当てに作った。

それなのにオワダ本家からは「うちとは関係ありません」などと言われ、大恥を

かいた。確かにその通りなのだが天下の皇太子妃の家と縁続きになるのだから

そこらへんは調子を合わせてくれてもよかったのに。

着物一枚、箪笥一つにしても「皇室御用達」を使う事を強要された。

正規の値段で買うなんて馬鹿馬鹿しいから、色々画策したのに品格を問われるとは。

 

何より当のマサコが、少しもお妃教育が進まない。

今まで着物を着た事がないから「嫌だ」と言い張り、それでも納采の儀には

何とか振袖を調達し着せたものの、歩き方を注意しただけで自信をなくして

「もう着ない」と言い張った。

お妃教育では立ち居振る舞いや言葉遣いをかなり注意されているようで、それが

面白くないのか「くだらない」と一蹴し、いつまでたっても優雅な振る舞いにならない。

皇室に入るにはあたっては旧皇族、皇族、元華族などの親戚回りも重要な仕事

なのだが、マサコは緊張しすぎて顔は真っ赤になるわ、首にアトピーが出るわ

大騒ぎだ。だんだん煩わしくなって来たのだろう。

不機嫌な顔をすることも珍しくなくなった。

娘をなだめすかし、おだてて毎日外に引っ張り出すユミコは

慣れない社交としきたりに四苦八苦し、事あるごとに「私たちをばかにして」と

目に見えない相手をののしった。

あいつら、私たちが何も知らないと思って心の中では馬鹿にして笑っているのよ。

宮内庁の偉そうな事ったらないわ。何様のつもりよ。まーちゃんが可哀そうだわ」

何十年たっても癒されない「恨」

日本最高の家に娘が嫁ぐというのに、突き刺さるようなコンプレックスの数々。

悔しさと無様さに歯噛みする。

 

そんな折に出てきたオオウチタダス。

実はヒサシと外務省・・そして裏のオオトリ会が関わった空想の人物の

言いがかり的な話。

雑誌の買収など朝飯前だ。

マスコミを制したものの勝ちだ。

ヒサシはほんの少しだけ溜飲を下げた。

 

コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国史劇風小説「天皇の母」78(全部がフィクション)

2012-10-29 09:30:00 | 小説「天皇の母」61話ー100話

天皇も皇后もうんざりしていた。

例の内定根回ししなかった件はその後も尾をひき、納采の儀の日取りが1か月延びたりしたし

いまだに長老はじめ、各皇族の視線が冷たく感じる。

もう決まってしまった事なのだからと割り切れないのだろうか・・・・・本当に年寄ときたら。

何より皇太子が嬉しそうで喜んでいるんだからそれでいいじゃないか。

皇太子の結婚について、毎年記者たちに聞かれるようになって10年あまり。

本人ののらりくらしとした態度やらオワダマサコへの執着など、色々あったけれど、とにかく「結婚」は

両性の合意のもとに行われるという事を尊重して、二人は息子の結婚については

口を出さなかったし、極めて異例のおきて破りをしても許した。

それは天皇の「民主主義下の天皇制」の在り方を体現するかのようだった。

ついてこられない古い人間たち・・・たとえばそれが長老だったりするのだけど・・・・が異議を唱え

せっかくの晩餐の席につかなかったりという子供じみた真似をする。

全皇族・旧皇族らを招いたオワダ家紹介の為の晩さん会にアキシノノミヤ以外は出席しなかった事に

天皇は心から怒っていた。

何でそこまでするのだろうか。あの席では今回の不手際を詫びるつもりだったし、その経緯についても

説明しようと思っていたのに、彼らは出てこなかった。

これでは・・・まるで・・・30数年前の自分たちの結婚の時みたいだ。

あの時も「抵抗勢力」と戦った自分たち。

今もまた古い考えにとらわれる人たちのせいで、息子の結婚に水をさすことになってしまった。

そう思えば皇太子が不憫でしかたなかった。

そう・・・不憫でしかたなかった。

いつまでも昔の事を忘れない、忘れられない自分たちに、皇族たちにうんざりだった。

 

でも、さらにそれに拍車をかけるような事が次々起こる。

お妃教育がスタートしたが、教師たちからははかばかしい成果が聞こえてこなかった。

儀式の手順を覚えられない」

「宮中祭祀に関して批判的で学ぼうとする意欲がない」

「緊張するとパニックになってしまってすぐに落ち込み、出てこない」

これがハーバードを出た女性なのか?と皇后は思った。

やはり、下手に社会経験を持った女性はなじめないのだろうか。

皇室の伝統・格式」については、最初にオワダ家にはきちんと話した筈で、その時はマサコも

「頑張ります」と言っていたのに。

頭で覚える事が出来ても、それを行動に移すことが出来ないとは・・・・・

精神的に非常に弱い方です。自己主張は強いのですが注意されるとすぐに傷ついて黙り込みます。

誰でも最初からできる人はいないのだから努力してと申し上げると

「どうしてこれを覚えなくてはならないのかわからないし納得できないので、きちんとわかるように説明してください」

と来るんです。そのしつこさにちょっと・・・・」

こういう本人の性格に関する事はどのように対処したらいいか全くわからなかった。

皇太子はマサコと会うたびに色々愚痴られるらしく、側近に「もう少し優しくできませんか」と文句を言う始末。

それでお妃教育の教師たちは次第に何も言わなくなった。

女官にカウンセラーを・・・という話が出たのも当然だった。

明確にはわからないが、彼女には何らかの精神疾患が見え隠れしている・・・それが医師団の見解。

これには皇后は正直驚いたし、不安をかきたてられた。

長老たちの考えが正しかったのではないか。

もしかしたら、無理にでも白紙に戻すべきではなかったか。

今さら遅いが皇后はもんもんと考え込んでいた。

 

3代前が不詳?」

天皇は耳を疑った。

宮内庁長官は静かにうなづいた。

それはどういう事なのか

オワダ家は表向き新潟県村上市の武士の家系と言われていますが、本当は違うようです。

村上市にはオワダ家の本家なるものが存在し、その家柄は確かに武士の家系ですが

そっちのオワダ家とこっちのオワダ家に血のつながりはございません。

ゆえにオワダ家には墓もなく・・・・それでそこを追求したら慌てて墓を作ったのはいいのですが

これがまたちょっとおかしな感じで。

正直、オワダヒサシ氏の親族に何をどう聞いても、口止めされているのか「うちは関係ない」の

一点張りで。ヒサシ氏の兄も姉妹もみんなそんな感じです」

犯罪者などがいるかもしれないの?」

生粋の日本人ではない可能性が高いという事です。いわゆる半島系の・・・・」

その言葉に天皇はショックを受けて黙り込んだ。

さらに長官は言いにくそうに続ける。

それでも何とか家系の調査はしなくてはならないので、調べておりましたらある団体から

非常に強い抗議が来たのです」

団体?」

「はい・・・・の」

ああ・・・・もうどうしていいかわからなかった。よりによって皇太子は何でそんな女性を?

いや、人間は家柄や血筋ではないと言い続けてきたのは自分だ。

ミチコと結婚したのもそういう理由なのだ。相手がどのような出自でも受け入れるべきなのだ。

しかし。それがまさか。

どうしてそんな団体から抗議がくるんだ」

エガシラ家の先祖がそういうことでございます。まあ、本人達は否定しておりますが。でもそういう団体が

強い抗議をしてきたという事がそもそもの証拠ではないかと思います」

ここまで来ると天皇には想像もつかいない事になる。

そもそもが日本で最高の家柄に生まれ、そういう「特別な出自」の人達と交わり、そういう意識の中で育った。

半島だ、だといわれてもぴんと来ないのだ。

皇族は血筋が全てであるという事は理解していた。でもそれはあくまで「男系」の話であって

妃の出自までは考えてもいなかった。

初の民間妃と皇室内では色々言われたミチコだって、3代前が不詳などとはいう事はありえなかったし

ショウダ家は単に爵位を持たない家柄だっただけで、血筋も教養の高さも旧華族らに劣る事はなかった。

カワシマ家に至っても代々学者や警察官を輩出してきた家で、母方は会津の武士だ。

ふと、参内した時のヒサシとユミコの顔が浮かび上がる。

ヒサシは「このたびは皇太子殿下の再三にわたる要請を受けて決心いたしました」と言った。

ユミコは「皇太子殿下は果報者ですわ」ととんでもない事を言った。

その品のなさと考え方の傲慢さに唖然としたものだが。

「外務省というのは一種独特の世界で。ここを敵に回すと皇室にとってもよくありません」との長官の言葉を受け入れ

天皇はひたすら黙るしかなかった。

家系の事は何とか取り繕うように

やっとそれだけを言う事が出来た。

これは失敗だったのではないか。あの時、無理にでも白紙に戻していたら。

けれど、天皇の心の中にくすぶる反骨精神がその後悔を押しとどめる。

敗北であったとか、間違いだったとか、それを認める事は出来ない。

ことここに至っては、何が何でもこの結婚を成功させなくてはならないのだ。

民主主義下の天皇制のありようを示す為に、自らがリベラルでなければいけないと思ってきた。

その事に間違いはなかった筈。

だから。

今さら後戻りはできないのだ。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国史劇風小説「天皇の母」77(フィクションなのよ)

2012-10-23 12:40:45 | 小説「天皇の母」61話ー100話

厳しい冬が過ぎ、世の中は春になっていた。

国民にとっての慶事である皇太子成婚は6月9日に決まっていた。

納采の儀も終わり、今頃はお妃教育を頑張っている時期・・誰もが「その日」を待っている筈。

国民は忘れていない。

今上が結婚した時の、あのすばらしく晴れ渡った空を。

日本中が幸せに酔いしれ、「世紀のご成婚」に拍手をおしまなかった。

あの時は、軒下の花ですらお祝いの為に咲いたのではないかと言われたものだ。

いわば今上・・当時の皇太子夫妻の結婚は「日本の復興のシンボル」の一つだったのだ。

あれから30数年。あの夢をもう一度。きっと誰もそう考えている筈。

 

「東宮職は大変らしいですよ」

元附育官だったハマオの元には年に数回、宮内庁及び東宮職OBが集まって

ささやかに酒を飲む習慣があった。

昔懐かしい先帝陛下の時代をしのびつつ、過去の栄光に酔う・・・・というのが主な目的。

しかしながら、今回はとてもそんな雰囲気ではなかった。

無論、「あのころのヒロノミヤ様はおとなしくて

いやいやアーヤの突拍子のなさといったら」などという「じいや」達の自慢話もあるにはあったが

話題はいつも一方方向に流れ、やがて全員がため息をつき、黙り込むといった感じだ。

 

正直、今、東宮職に勤めていなくてよかったと思いますよ」と誰かが言うと

その通り。宮仕えは気を使うけど、先例通りにやればいい部分もあって楽といえば楽だった」

と誰かが目を細め、するともう一人が「今の東宮職は常識が通じなくなっているらしいから」と言う。

「一体、みなさん、どこからそんな情報を?」

ハマオは興味深げに言った。自分は一線を退いてからは静かにくらしている。

年に一度か二度、たとえば皇太子の誕生日のお茶会などに招かれる以外は皇室との縁も切れている。

各省庁から色々と。いやはやオワダマサコという女性は理解に苦しむらしい。

お妃教育一つにしてもねーー皇后陛下やキコ妃の半分の時間にしたそうですよ」

ハーバード大出だから必要ないくらいなんじゃないの?」

「そう思うでしょう?ところが・・・これがなかなか。神道を学ぶのに英語のテキストを用意しろとか、

宮中の作法についていちいち「そんな事をする意味がどこにあるんですか?」と口答えして

なかなか進まず、とうとう教師の方が音を上げたという話です」

「理屈っぽいのは高学歴女性にはありがちな事でしょう。かくいう皇后陛下だって・・・」

皇后さまは素直でいらしゃった。キコ妃などは砂が水を吸うようにと言われた程ですよ。ところがオワダさんは

いちいち水を跳ね返してくる。なぜそんな事を覚えなくてはならないのか。何の為にやるのか。必要ないのでは

ないか・・・とか。思うに彼女は宮中を馬鹿にしているんじゃないかと」

言いすぎですよ」

ハマオはちょっとたしなめた。敬虔なクリスチャンとして人の悪口は言ってはならない。

神の前では誰であれ平等なのだから。

「それだけじゃないですよ」別の一人が憮然として言った。

これは悪口でも噂でもなく事実ですよ。オワダ嬢は東宮御所をレストランと勘違いしているんじゃないかって話」

レストランとはまた・・・・」

大膳課が言うんだから間違いないでしょう。オワダ嬢が東宮御所に来るときはたいてい夕食時。

その時はフランス料理か中華料理のフルコースを出さなくてはならず、ワインも晩餐会用を何本もあける。

それでも2時間程度で帰ってくれるならいいですが、夜中までいる。当然酒のつまみは出さなきゃならないし」

「嫁入り前の娘が夜中まで?」

「ハマオさん。今や同棲すら当たり前の世の中ではありますがね。でも皇室にあってはやっぱり時間厳守と

帰り時を図るというのは常識の一つでしょう。オワダ嬢の場合、東宮職員がさりげなく時間を言っても帰らない。

延々と皇太子としゃべっている。皇太子は皇太子で話題が尽きても帰れとは言わないし」

マサコさんの態度が人を食ったようだというのは外務省から聞いた事がありますよ。彼女、何でも外務省を辞める時

「皇室外交をしてまいります」と言ったそうじゃありませんか。「私は国家と結婚する」とも。みんな拍手したけど内心では

「有給使いまくりで休んでばかりいたくせによくいうなあ」と思った連中多数」

みな、どっと笑った。

すごいなあ。記者会見での「オーケストラ」に匹敵するよ。自分じゃそれが大言壮語だって知らないのか?」

知らないでしょ。あれは父親の教育のたまものでしょうね。で、宮内庁職員に対してもそんなだから、誰からも嫌われてる」

嫌われてるといえば・・ほら、2月の陛下主催の晩さん会。あれはひどいものでしたなあ」

2月の晩さん会とは、今上がオワダ家を紹介する為に全皇族と臣籍降下した元皇族・親族を招いたものだった。

しかし、1月の電撃婚約内定報道が尾を引いていたのか、皇族で出席したのはアキシノノミヤだけだったという話。

長老のお怒りようといったら、そりゃあ大変なもので。お上もああみえて気が強いから、過ぎた事をいつまでも言われて

頭にきたらしくて。皇后がとりなしたという話」

「根回しを怠るなんて陛下らしくないけど・・・長老もしつこい。あんな形で復讐しなくても」

そう?僕は長老の味方もしますね。オワダ家は官僚のもっともも悪い例を表現しているような気がする。たとえば・・ほら、

ミキモトからパールをプレゼントされて、慌てて返却した事があった。地位の高さにあこつけてあれこれ受け取るのが

当然だと思っている」

それは金箔箪笥の時もそうだった。皇室御用達を紹介したのにわざわざつてを頼って安く上げようとした・・・筈なのに

金額そのままで金箔をはれときたもんだ」

あの金箔箪笥事件、オワダ家は被害者じゃなかったの?箪笥業者が勝手にお祝いの気持ちで全部に金箔をはったって」

そう思いますか?私はそう思いませんね。いくらお祝い心があっても単価が数百万も上がるような事しますか?

あれは無言の脅しがあったと思いますよ。その証拠にオワダの細君が何て言ったと思います?

「オワダ家としては100万くらいのものを買うつもりだった」と。桐の箪笥が100万で買えると思いますか。あれは多分

最初から一銭も払う気はなかったのかもしれない」

「ああ、金を払う気なしってのはあるかも。うちの女房がキミジマのドレスが好きで。とはいってもあそこの服は高いでしょう。

年に1着がせいぜいですよ。ところがオワダ家はここ半年で数着以上注文しているんだそうです。

でも、一銭も支払していない」

「ええ?それ、ほんとうですか?」

本当だそうですよ。キミジマも心配になってオワダの奥さんに聞かざるを得なくて。そしたら「皇室に入ってしまえば

どうとでもなる」と言ったそうで。万事が万事そんな調子だ」

一言でいうなら金に汚いんでしょうな。どんな過去がそこにあったのやら?チッソは金持ちでしょうに」

金持ちほどケチですよ」

またみんな笑った。OBが集う場がこんなに下世話になっている事にハマオは驚いてしまった。

それでちょっと不愉快そうな顔をすると、一人がすまなそうに言った。

我々もこんな話をする為に集まったのではないのですが」

そうでしょうとも。もうすぐ皇太子妃になる女性をあれこれというなんて。姑根性ですよ。まるで・・・大昔の宮中のようだ」

そうはいってもハマオさん。オワダが異質なのは確かです。そして皇族方はみんな反対している。なのに皇太子は

決めてしまったという事です。我らがヒロノミヤ様は間違った選択をしたのです」

間違った選択。

ハマオは胸が痛くなった。

かつてイリエ侍従長が言っていた。

ヒロノミヤはご優秀。アヤノミヤはやんちゃ。常に兄宮をたてて優秀の仮面をつけておかないと皇位継承に関して

災いが起こる」と。

だから自分としては殊更に「ヒロノミヤ様は誰にでも平等で優しく、慎重なご性格」といい、「アヤノミヤ様はやんちゃで

元気すぎる」と言ってきたのだ。

実際、ヒロノミヤは臆病ではあったけど素直で側近の言われるがままにきちんと行動してくれた。

それが・・・・・妃選びで思わぬ我を発揮してしまった事でこのような事態に。

その責任は自分にもあるのではないかとハマオは思った。

回りの言う事をよくお聞きください。聞き分けの悪い事をおっしゃってはいけません。皇族は常に平等に。贅沢を言っては

いけません。質素倹約こそ美徳です」と教え込んできた事が、無言のプレッシャーになってきたのか。

オワダマサコという女性は真逆なのかもしれない。

あの記者会見を見て暗澹たる気分になった。

30にもなろうとするいい歳をした女性が「殿下は人間ができている」などと生意気な口をきき、「マサコさんの事は

全力でお守りすると言って下さいました」と言質を取るような真似をする。

場をわきまえぬ、そういうしつけをうけた事のない・・・・・これが新しい女性なのか。これが外交官になろうとした女性なのか。

(おーちゃん)

幼いヒロノミヤの顔が浮かんだ。

今も幼くていらしたら自分が軌道修正して差し上げるのに。

ああ・・・これからどうなっていくのだろうか。

ハマオの心は痛んだ。

 

 

コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国史劇風小説「天皇の母」76(みんなフィクション)

2012-10-09 16:34:26 | 小説「天皇の母」61話ー100話

オワダ家にとって「いつが一番幸せだったか」と聞かれたら

迷わずこの日を選んだだろう。

すなわち「婚約記者会見」である。

マサコにとってこんなに有頂天になった日はなかった。

真新しい黄金色のスーツに身を包み、同色の帽子に白い手袋姿が記者会見場に現れた

時の記者団のどよめき。一生忘れない。

「彼女が皇太子が選んだ・ハーバード大卒の・外務省外交官の・優秀で美しい非の打ちどころのない

女性なのか」

そんな目で自分を見ている。

彼女の言葉を一言一句聞き逃さないようにしよう」と誰もが思っている風だった。

みな、自分の美貌にうっとりとなっている。みな、自分の言葉を聞きたがっている。

みな、羨ましがっている・・・・それこそがマサコにとってあまりにも得意絶頂なことだったのだ。

隣の皇太子も得意そうな顔をしている。

やっぱり「オワダマサコ」という稀有な女性を妻にできることは素晴らしいと思っているのだ。

得難い女性を得た喜びに輝く皇太子の笑顔は、マサコから見ると「ちょっとかわいいかも」だった。

でも、彼の表情をうかがったのは最初だけで、実際に記者会見が始まると

リハーサル通りにセリフを言うのが精一杯だった。

それでも何とか「自分らしさ」を見せたいと思ったから・・・・

プロポーズされた時に答えた言葉として

私がもし殿下のお力になれるのであれば、謹んでお受けしたいと存じます。これまで殿下には、

いろいろ大変幸せに思えること、うれしいと思えるようなことも言っていただきましたので、

その殿下のお言葉を信じて、これから二人でやっていけたらと思います。

殿下にお幸せになっていただけるように、そして私自身も自分でいい人生だったと振り返られるような人生に

できるように努力したいと思いますので、至らないところも多いと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」

と言ったら記者団がちょっとざわめいた。

完璧な答えだったのだろう。

皇太子の印象については

@とても人間ができた方」と答えた。

その時も周りの空気が変り、カメラのフラッシュがまたたいた。

皇太子をちらっと見ると、非常にうれしそうに笑っているのでこれでいいのだと確信した。

外務省を辞めてまで・・・と誰もが思うだろう。

だけど、外務省を辞めてまで皇太子妃になる事は自分にとって重要。つまりステップアップなのだ。だから

「これまで六年近く勤めておりました外務省を去ることにさびしさを感じないと申したらうそになると思います。

やりがいのある仕事をさせてもらい、学ぶべきところも多く、尊敬すべき先輩や同僚に恵まれて充実した勤務でした。

昨年の秋、いろいろ考えた結果、私の果たす役割は殿下の申し出をお受けして、皇室という新しい道で

自分を役立てることではないか、と考え決心したので、今は悔いはありません」

と言った。少し空気が波を打ったような気がした。続いて


「殿下からは私の心を打つような言葉をいくつかいただきました。ひとつは去年の十一月の後半、

「皇室に入るのはいろいろ不安や心配がおありでしょうが、雅子さんのことは僕が一生、全力でお守りしますから」と

話しかけてくださいました。

さらに、十二月初め、「十分にお考えになって下さい」とおっしゃられ、ご自身も「大変悩んだ時期があった」とおっしゃられたので、

「何をお悩みになられたのですか」とお尋ねしました。

「僕としては雅子さんに皇室に来てもらいたいとずっと思っているけれど、本当に幸せにしてさし上げられるのか、

悩みました」と言われました。

そのような殿下の真摯なたいへん誠実なお言葉をいただき、幸せに思うことができましたので、

「私でできることでしたら、殿下のことを幸せにしてさし上げたい」とお受けした次第です。


その間、殿下からは、私がお受けすることになれば両陛下も温かくお迎えするとおっしゃって下さっている、ということで、

私にとって大変大きな励みになりました。一部で言われているように、直接、皇后さまから

私にお気持ちをお伝えになられたようなことはありません」

そうよ。私のことを全力で守ると皇太子は言ったのだ。

またフラシュが激しくなった。皇太子がさらに受けて

「苦労があった場合には、私がそばにいて全力をもって守って、そして助けてあげたいと思っています」とにこやかに言った。

皇太子は「これから先、二人でお互い学び合って、ともに高め合っていくということもやってみたいと思っています」といえば

基本的には殿下のおっしゃる通りですが、一言付け加えさせて頂ければ、愛情に満ちた温かい家庭ということ。

特に、苦しい時やつらいことがあった時にお互いをいたわり合って助け合っていくことができるような

家庭にできればと思っています」

と加えた。

マサコとしてはこの「一言付け加えさせて・」という言葉は職場では定番のセリフであったし、違和感がなかったのだが。

だんだん記者団の空気がさめていることに皇太子とマサコは全く気付いていなかった。

むろん、テレビの前にいる多くの視聴者や、皇太子に関わった多くの元宮内庁職員達に流れるムードも

氷のように冷たくなっている事に全く気付いていない。

 

二人にとって「お子様は何人?」というセリフが最高潮に盛り上がった瞬間だった。

コウノトリのご機嫌に任せて」というセリフを言った皇太子は「自分でもうまい事を言ったものだ」と一人で悦に

入っていたし、マサコもまた

「殿下は大変音楽がお好きでいらっしゃるんですが、家族でオーケストラが作れるような子供の数、

ということはおっしゃらないで下さいと申しました」

と答えた。横の皇太子は「言わなかったよ」という顔で笑い、マサコもついつい爆笑に近い笑いをもらしたのだが

周りはびっくりしたような目で自分たちを見ている。

コウノトリもオーケストラも凡人が考えられないようなジョークだったのかもしれない。

 

とにかくこの日のマサコは最高潮にうまくやれたと思った。

皇居に参内し、皇后から代々皇太子妃に受け継がれているルビーの指輪を受け取るに至っては

「得意」も得意、最高潮に得意になった。

まあ、これが皇太后様からミチコさんにくれたルビーなの。すごいわねえ」

ユミコは品定めするように指をしげしげと見つめる。

「とにかくよくやった。これで確定だ。あとは結婚式まで乗り切るぞ」

ヒサシは意気揚々と言った。

もうすぐ自分は「皇太子妃の父」なる。それがどんな素晴らしい肩書。

これで国連大使も夢ではあるまい。

 

一方、皇居ではいつになくどにょりとした空気が漂っていた。

天皇も皇后もノリノミヤも言葉少なく、侍従長も女官長も容易に話しかけるような雰囲気ではなかった。

あの女性は本当にハーバードを出ているのかい?」

天皇はぼそっと言った。

そうでしょうね」とノリノミヤは答えた。

帰国子女だからああう話し方なのかね」

秋篠宮のお姉さまだって帰国子女ですが、あのような話し方はなさらないわ。

オワダさんって、人を不愉快にする話し方をなさるわね」

サーヤ」

と皇后がたしなめる。

誰でも記者会見に初めて出たらあんな風になるわ。広い目でみなくては

「本当はそんな風にお思いでないことは私が知っているけど。仕方ないわね。もう決まってしまったんですものね」

「お兄様のお妃になるのだから仲良くなさい」

「はあい」

たぶん、将来的な不安をきちんと言葉に出していたのはノリノミヤだけだったろう。

皇后の「何でもプラスに解釈する」のはもう癖で、その演技性の強い考え方はノリノミヤが唯一賛同できない

部分だったが、逆らうことはしなかった。

あの方、オーケストラを作るくらお子様を産むのですって」

ちょっとおどけた言い回しに天皇も皇后も吹き出した。

「ああ・・オーケストラね・・オーケストラ」

天皇も何度も繰り返すのでたしなめようとする皇后もついつい笑った。

重苦しい空気が一瞬だけ消えた感じがした。

 

 

 

 

 

コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国史劇風小説「天皇の母」75(全部フィクション)

2012-09-28 10:31:14 | 小説「天皇の母」61話ー100話

ねえ・・・記者会見の洋服なんだけど、青と黄色とどっちがいいと思う?」

ヒサシが帰ると、家の中は華やかな洋服であふれかえり、女達が騒いでいる。

やっぱり皇室に入るんだから上品にしないと

お姉様は色黒だからはっきりした色の方がいいわよ」

何て事をいうの。レイちゃん。お姉ちゃまは色黒じゃないわよ」

あらお母様。今更ねえ」

疲れて帰って来ているのに、「お帰りなさい」でもなく、いきなり「どっちがいい?」

と聞かれたヒサシは不機嫌な様子で「黄色がいい」と言ってしまった。

まあ、黄色!」

ユミコは大きく頷いた。

私もそれがいいと思っていたの。まあちゃんには黄色がよく似合うって。これって

金色に近い黄色ですものね。ほんと、素敵だわ。帽子も似合ってるし。そうそう

手袋。これを忘れちゃだめよ。ミチコ妃は手袋で文句を言われたんだから」

キコさんの時は紺のワンピースだったじゃない?あれは貧乏ったらしかったわね。

お祝い事なのに色が暗くて。おまけにひどく地味だったし」

レイコがはしゃいでいった。

あの時は喪中だったからよ。レイコ。我が家でも喪中なら黄色は着ないわ」

とセツコが冷静に言う。

もう、何でセッちゃんはそうやって水を差すの。お姉様の結婚は私達にとっても

目出度いことなのよ。これで私達だってそんじょそこらの男と結婚するわけには

いかないんだから」

とりあえず着てみればいい

ヒサシは自らも普段着に着替えて椅子に座った。

黄色・・・中国皇帝の色だ。マサコは皇帝と並ぶのか。

黙っていても笑いがこみ上げてくる。よくぞここまでやってきたものだ。

根回しに根回しを重ねて・・・・でも、あと半年もすれば娘は未来の皇后。

そして自分はその父だ。

ヒサシはすでに次の一手を考えていた。

国連大使への道を。皇太子妃の父親なら政治的な活動は控えよとか

皇后の実家にならって地味にひっそりと暮らせとか言われているのは知っている。

でも自分はその心情がわからない。

一族の誰かが出世したら、その恩恵を家族が受けて何がいけないのだ?

プリンセスの父として一層華やかに生きる事はむしろ当然ではないか。

散々、「頭がいいだけの貧乏人」だの「チッソの家族」だのと悪口を言われて

きたが、やっと・・・やっと恨みを晴らせるのだ。

どう?」

黄色のワンピースを着たマサコは光り輝いていた。

皇室外交するのにふさわしい服よね?」

ああ・・・この娘はまだ「結婚」というものをわかっていない。

「外務省も皇室も同じ外交をする場所」と皇太子は言った・・・らしい。

確かにそうかもしれないが、皇太子妃の務めは外交じゃなくて世継ぎを生むこと。

ヒサシの夢は皇太子妃・皇后の父というだけでなく

「未来の天皇の祖父」にならねば完成したとはいえない。

そのあたり、本当はわかっていないのでは?

私、国家と結婚するのよねーー」

そうよ。まあちゃん、大したものだわ」

マサコとユミコの弾ける笑顔。

後になって「あの時が一番楽しかった」と思えた出来事だった。

 

反対である

皇室会議が開かれている室内に緊張が走った。

皇太子とオワダマサコ嬢の結婚は、天皇・皇后が許した段階ですでに

決まっている。しかし、形式上「皇室会議」を経ないと成立しない。

そして皇室会議は「満場一致」が普通で、今回もまた「満場一致で賛成」に

なる筈だった。

しかし、ただ一人、ミカサノミヤだけは「反対」の立場を表明したのである。

殿下・・・・」

誰かが口を挟もうとしたが、ミカサノミヤは許さなかった。

オワダマサコとの結婚は皇室の歴史を軽視するもの。伝統やしきたりを

破るもの。そもそもオワダマサコの素性がわからない。皇太子の結婚は

本人のみではなく、天皇家、皇室全体の問題である。なのに我々宮家に

一切の報告なし勧めている案件に対して賛成の意を表することは出来ない」

ミカサノミヤの意見は、ほぼ全ての皇族、旧皇族の意見を代弁したものだった。

根回しの一切がなく、唐突に出た「内定」

それをマスコミ報道で知った宮家達の衝撃は大きかったのだ。

しかし殿下」

宮内庁長官がとりなすように言った。

すでに両陛下からご内定があり、それを覆すことは・・・」

それなら勝手に結婚でも何でもするがいい。こんな意味のない会議、やっても

仕方がない。ただ、ミカサノミヤ家としての立場は表明した」

それだけ言うと、ミカサノミヤはユリ君と一緒にあっさりと退出してしまった。

なにやら不吉な・・・・」

誰もがそう思った瞬間だった。

本来、全ての国民はもとより皇室内においても祝福されるべき結婚。

それはただ一人の皇族によってここまで反対されるとは。

事情を知っている宮内庁の面々らは「ああ、やはり」と思ったが、政治家や

たまたまそこに選出されている人には、なにゆえに長老殿下が反対したのか

さっぱりわからなかった。

金持ちの外交官の娘、ハーバード大出で外務省勤務の超エリート官僚。

これこそ次代の皇后にふさわしいではないか。

しかもマサコさんは見た目も派手で外人ウケしそうだ。

キコ妃のようなおっとり型は次男の嫁にこそふさわしいのだ。

「開かれた皇室」には派手で行動力のあるエリートがふさわしい・・・・・と

誰もがそう思っていたのだった。

 

ミカサノミヤが強硬に反対しようが一応、形は「満場一致」の採決が下り

1月19日。正式に皇室会議で可決され、オワダマサコは皇太子妃に内定した。

 

ヒサシは有頂天だった。

早速参内する。ユミコはど真ん中に「福」と書いてある銀色の帯を締めて参内した。

まさに「福福万来」の気分だった。

しかし、それを迎え入れる側の千代田では、終始、憂鬱な雰囲気が漂っていた。

1月19日・・・・この日を持って、天皇家と宮家の間に亀裂が走ったのだ。

仕方がない」と天皇は思った。

自分達の結婚ですらあれほど反対された。でも今はうまくいっている。

アキシノノミヤが結婚する時だって、カワシマ家では身分が低すぎるという反対

意見があった・・・でもうまくいっている。

皇太子だって、今はあれこれ言われても結婚したら変わるだろう。

オワダマサコは優秀な外務省の職員なのだから、きっと立派な皇太子妃になって

くれる。今はそう信じるしかなかった。

 

しかし、その「信頼」が数時間後に見事に崩れ、天皇は激しく後悔する事になる。

 

 

 

 

 

 

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国史劇風小説「天皇の母」74(フィクション・・だな)

2012-09-24 07:53:11 | 小説「天皇の母」61話ー100話

大殿下のお戻りでございます

宮務官に知らされたユリ君は慌てて玄関に出た。

何やらただならぬ雰囲気が漂っていたからだ。

大殿下は先帝の末の弟で、学者肌な所がありなかなか頑固だった。

戦後すぐは生活の為に苦慮し、社会主義に傾倒したこともあった。

以来、先帝とは一定の距離を置いていたし、ましてその息子の今上とは

親戚とはいえ、形だけの付き合いになっている。

その大殿下が自ら望んで参内したのだ。これは大事である。

しかも単独での参内。

(私を巻き込みたくないとのお考えか)とユリ君は思った。

ユリ君だけではない。トモヒト親王ら3人の息子達にも言ってない。

お帰りあそばせ。いかがでしたか

いかがも何も」

ミカサノミヤは憮然とした態度で背広を脱ぎ捨てる。

全く、お上は何を考えているのか。これが今風の「開かれた皇室」なのか。

何もかも民間妃を娶ったからこういうことになるのだ。お上は皇后の言いなりだ」

お茶が運ばれてくる。

熱いっ。もう少しぬるくできんのか。それに茶じゃなくて酒!」

珍しく激高する大殿下に回りはおろおろしはじめる。

昼間からお酒を召し上がるのは体によくありません。お控え下さい。

回りのものも怯えておりますから、お静まり下さい。これ、殿下に紅茶を。

ブランデーを一滴たらしておくれ」

ユリ君のおっとりした喋りにミカサノミヤはやっと人心地ついた。

先帝の時代は終わったんだな。わしたちは時代遅れの人間なのか」

どういう意味ですか?」

お上には言うべき事をきちんと申し上げた。皇太子の結婚が我々親族に

何も知らせないままにマスコミを通じて決定してしまったこと。

どこの誰なのかさっぱりわからないし、こういう事はあらかじめ根回しをして

進めるべきではなかったかと。お上は侘びを入れてきたので、それならすぐに

結婚報道を取り消せと申し上げたら、もうオワダ家を呼んで話を決めたと

言うじゃないか。もうびっくりして驚いて腰が抜けるかと思った」

まあ・・・アキシノノミヤの時はそんな事はなかったのに。おかしいですわね」

アーヤは昔から親族を大事にする子であったし、あの宮妃も控えめなよい

娘だ。父親は学習院の教授だから皇室に関しても勝手を知っているのだろう。

しかし、オワダ家はどこの馬の骨ともしれない外交官一家だ。

何でそんな勝手な事をと詰め寄ると、渋々お上は答えられた。

オワダケに脅されたと」

脅された?まあ、随分とオーバーな言い草で」

だろう?一国の天皇にそのようなことがある筈はないのに。何でも参内させて

事情を聞き、とりあえず保留にしようとしたら、オワダ家が「娘を汚された」と

大騒ぎし始めたとか。やれ責任を取れとかマスコミに天皇の意向で保留に

なったと言えとか、そりゃあまあヤクザのような言い回しだったというのだ」

何て事でしょうか。民間の人間が天皇を脅す?」

全く甘くみられたものだ。先帝が生きておいでだったらこのような事態には

ならなかったに違いない。相手のそんな無茶な論理をお上は「なる程」と

思ってしまわれたのだ。しかも皇太子・・・」

東宮様が?」

皇太子がこれでいいではないかとお答えになったと

なんと」

ユリ君は皇太子の温和な表情を頭に描いてみた。元々空気が読めないと

いうか、回りに動かされがちになる要素はあったと思う。その一方で

妙に頑固だったりする。その融通性のなさが皇后そっくりと思う事も。

結果的に皇室の体面を考え、皇太子の意向を尊重し結婚を認めると。

「もはや本人の希望なしには成立出来ないのが今の結婚制度です」

とまでおっしゃったのだ。皇室に一般の民法を持ち込むなどありえない。

お上は二言目には「今の憲法では」「今の法律では」「今の世の中は」と

繰り返しおっしゃるが、皇室というのはそういうものとは一線を画しておかないと

いけない存在なのだ。それなのに・・・・」

運ばれてきた紅茶を一口すすってみる。温かい中にブランデーの香りがたち

漸く大殿下の怒りもおさまりつつあった。

本人の意思か。皇太子はどうでもチッソの孫と結婚したいらしい。3代前も

不肖でどこから来たのかわからない娘と。本人同士がそうしたいのだから

それでいいとお上は考えている。いや、皇后がそう考えているのだ。

わしは古いらしいぞ」

殿下・・・お上が結婚なさったあの時から、皇室の形が変わったのです。

あれだけの反対を押し切ってミチコ妃殿下を娶られた親王様ですもの。

今回の事くらいどうとも思っていないのでは」

だとするとますますわしらと剥離していくな。いや、お上は皇族方だけでは

ない。旧皇族やそれに連なる者達をも捨てた事になるのだ。だとしたら

我々も心していかなくては」

ミカサノミヤはゆったりと紅茶のカップをテーブルに置いた。

この結婚は皇室にとって毒にしかならない。断固反対する

はい」

ユリ君は静かに、しかしきっぱりと答えた。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国史劇風小説「天皇の母」73(全部フィクションです)

2012-09-20 08:09:31 | 小説「天皇の母」61話ー100話

千代田の中は慌しくいきり立っていた。

明日の先帝祭の事など誰も眼中にない程に。

宮内庁長官、東宮大夫、東宮侍従長らが呼び出され、天皇と皇后の前に出る。

「一体誰がいつ内定を出したのか」

天皇の激しい言葉に全員が立ちすくむ。後ろめたさのあるヤマシタはなおさら

冷や汗をたらしながら、ひたすらポーカーフェイスを装っていた。

皇太子が指示したことなのか」

いえ・・・そんな筈はございません」

東宮大夫はきっぱりと言った。本当に皇太子は何も言ってないのだ。

だが、速報を知らされても慌てた様子がない事から、何らかの関与はあったのか?

しかし、それを今奏上する事ははばかられた。

「第一報はロイター通信だそうです。それを受けた日本のマスコミが一斉に

報道したと」

長官は今知りうる限りの事を述べる。

現在、皇居の前には多数の報道陣が来ていますので、何とかしないと

なりません」

何とか?決まっている。間違いだったといえばいい」

天皇の言葉は全員の胸にぐさりと突き刺さった。

今、誤報と認めてしまえば今後どうなるか創造がつく。

オワダ家は黙っていない。あらゆる手を使って皇室に対し謝罪と倍賞を求めて

来るだろう。そうなったら結婚もしてないのに泥沼離婚劇のようになってしまう。

さらに皇室のイメージを損ない、ますます皇太子の結婚が遠のく。

陛下。落ち着き遊ばして」

皇后がなだめにかかった。

今、間違いと認めると東宮の名誉に傷がつきます。どうか別の対処法を」

どうしたらいいのか」

私にも見当がつきません。宮内庁長官、何か手立てはあるかしら」

とりあえず皇太子殿下をお呼びして事情をお聞きしなくては」

フジモリとしては当然の話だった。

ヤマシタ、皇太子殿下はどのような様子なんだ」

別に。慌てた様子もございませんし。冷静に受け止めていらっしゃいました

まるで他人事のようだ。

冷静に受け止めた?」

天皇の言葉がまた激しくなった。

これは一大事なんだぞ。皇太子の結婚が私達が知らない間に決まってしまう

なんて前代未聞だ。そんな事、許されるわけがない」

「しかし・・・殿下は「いずれは発表する事だったのだし、それが早まった程度では」

とおっしゃって」

ああ・・・・」

天皇はがくりと肩を落とす。

本当に東宮はオワダさんと結婚したいというのね」

皇后が呟くように言った。

陛下も私もオワダさんには一度お会いしたけど、とても皇室でやっていけるようには

見えませんでした。あなた達はどう思いますか」

オワダさんは学歴・職歴全てにおいて素晴らしい経歴を持っていますし

財産もあります。皇室にふさわしいかと」

真っ先にヤマシタがそういったので、東宮大夫と長官は顔を見合わせた。

私共はオワダさんのチッソに関する事で妃候補からは外しておりました

長官が静かに言う。

先帝もオワダさんには反対しておられましたし、皇室には学歴や職歴よりも

まず血筋と家柄が必要です。3代前が不肖のオワダ家では話になりませんし

そのような先例を作っては・・・・」

これには天皇の顔色が変わってしまった。

「家柄と血筋」まさにこれに抵抗して来たのが天皇と皇后だったからだ。

結婚を反対されたときの苦い思い出が蘇る。

そうなるともう天皇には何も言う事が出来なかった。本来マスコミを押さえなくては

ならないし、皇太子には諦めるようにいわなくてはならないのに、

それが言えない立場になってしまったのだ。

オワダマサコっを否定する事は「民間妃」として確立したミチコ皇后を

否定する事になるのではないか。

「開かれた皇室」の名のもと、30年に渡って皇室のあり方を模索してきた。

結婚はその原点ともいうべき話。

アキシノノミヤ妃にカワシマキコを選んだのも「家柄よりも本人同士の気持ち」を

優先したから。

それが正しいと思ってきたから。

現にアキシノノミヤ妃はよくやっている。しかし、同じことがオワダマサコに出来るのか?

 

結果的に結論は翌日に持ち越しになった。

翌日になっても宮内庁は沈黙を決め込み、マスコミに追いかけ回されている

職員も「何がなんだか・・・」という感じだ。

宮内庁記者会はフジモリに記者会見を望んだが、すげなく断られてしまった。

さすがにここにきてマスコミも「何だかおかしい」と思い始めたようだが、

畳み掛けるように翌日、オワダマサコはマスコミの前に登場した。

キミジマの185000円のスーツにコートを羽織り、「いかにも金持ち」風な

装いで登場したマサコにカメラのフラッシュがたかれる。

おめでとうございます」

レポーターのよびかけにマサコは「ありがとうございます。でもまだ正式には

決まっておりませんので」

とにこやかに笑って答えた。

ユミコは毛皮を着て娘の横に立ち、ハイソサエティぶりを発揮したようだが、

後々「動物愛護協会」から批判の言葉が加えられる。

 

もう・・・誰も否定できなくなってしまった。

 

これは・・・大変なことが起きるかもしれない

アキシノノミヤ邸では陰鬱な雰囲気が漂い、駆けつけたノリノミヤも

顔が暗かった。

何がどう大変なのでしょう

キコはよく状況を把握できておらず、それはノリノミヤも同じだった。

いいか。我々の結婚は個人的な好き嫌いだけで決まるわけじゃない。

結婚に至るまでには他の宮家への根回しも必要なんだよ。

私が君を両陛下の所へ何度も連れて行ったのもその根回しの為。

しかし、今回はそういうものが一切ない。筆頭宮家である私達にも

知らされていなかった」

きっと他の宮家も同じね」

ノリノミヤは思慮深く言う。

おもうさまもおたあさまも困っていらっしゃるの。何とかできないものかしら。

東宮のお兄様は参内しても「これでよかったのでは」なんておっしゃるし。

私、本当にわからなくなったわ」

今は両陛下を支えて差し上げるしかないが、宮家の立場では動けない」

アキシノノミヤはため息をついた。

ノリノミヤは意を決した容易言った。

私が恐れているのはね。もしかしたらこれが皇族の結束を乱す結果に

なるんじゃないかという事なんです。おもうさまやおたあさまはご結婚以来

民間出身の妃という事でどれだけ責められ、苦労されてきたか。

おたあさまのお気持ちの中にはそういう旧勢力に反対したい気持ちがおありでしょう。

生まれつきの皇族である私達にはわからない孤独感のようなものを

抱えていらっしゃると思う。

それが各宮家との間に溝を作ってきたことは事実でしょう?

今回の事で、またそういう溝が大きくなったらと思うとやりきれないわ」

「サーヤの言っている事はわかる。でも、今は動けない。両陛下の意志が

全てを決めるし、皇太子殿下を差し置いて意見するわけにはいかない」

これからどうなるのでしょうか」

キコはそっと呟いた。

皇太子殿下のご結婚が決まることで決着するのでしょうか

終わりがよければ全てよし・・・ですめばいいけれどな」

それが全ての始まりであることにはまだ誰も気づいていなかった。

 

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国史劇風小説「天皇の母」72(フィックションだ!)

2012-09-13 07:25:47 | 小説「天皇の母」61話ー100話

1月1日。

真夜中より「四方拝」の儀が行われ、天皇は粛々と儀式に臨んだ。

皇后は宮殿にてそれを見守り、ノリノミヤも一緒に待つ。

「火が消えた」

かがり火が一瞬にして消えた・・・・という椿事が起きた。

ただの「風」によるものと考えられたが、神官達はなにやら後味の悪いものを感じていた。

皇太子を始め、皇族、旧皇族、政府関係者らが祝賀に訪れる。

1月2日。

新年の「天皇ご一家」映像が公開される。

スキー場でその映像を見ていたマサコは「来年はあの中に自分が」と一瞬

考えてみたが、すぐにそんな事忘れてしまった。

1月3日。

元始祭の儀。皇太子、アキシノノミヤ、ノリノミヤらが列席して見守る。

今年は去年以上に「冷たい」空気を感じる。

それが気のせいならいいが・・・と思う。

1月4日。

アキシノノミヤ邸にカワシマ夫妻が挨拶に訪れる。

まあ、マコ様。本当に大きくなられて」

2歳のマコ姫は愛くるしい年頃になり、祖父母を喜ばせる。

二人目はお考えですか?」

母の言葉にキコはちょっと顔を赤らめた。

修士論文も控えていますし

大学院生と宮妃と母宮の3足のわらじは結構きつい。しかし、皇太子がいまだ

独身であることを考えると、産める時に子供を産まなくてはならない。

これもまた義務。

自然に任せましょう」アキシノノミヤはにっこりと笑った。

なにやら温かい雰囲気にカワシマ夫妻はほっと胸をなでおろす。

心の中では常に娘を案じている両親だった。

1月5日。

小さなお子を持つって楽しいわね」

華やぐと思いますわ。羨ましいこと」

チチブノミヤ邸に集まったキク君、ユリ君、キコは、小さなマコを真ん中にして

その幼い娘のちょっとした動作に夢中になっている。

お子がいるのに職員用宿舎だなんて可哀想。

私が死んだらここに住めばよろしいわ

セツ君はふっとため息をつく。

キコが入内して以来、同じ会津に繋がる者として誰よりも目をかけてきた。

キコはそれに見事に応えてくれている。

セツ君様。お正月早々何て事をおっしゃるのかしら」

キク君がちょっとたしなめる。ユリ君は黙って聞いている。

あらだって私達くらいになると言える時に言っておかないとね」

本当にセツ君様はズケズケとおっしゃるから。ところこで二人目は?」

「あらキク君だって負けてはいないわね

キコはマコを抱き上げてあやしつつ微笑んだ。

色々宮様とご相談して

まあ、お熱いこと」

セツ君はからからと笑った。

セツ君、無粋ですわよ。アーヤ達はまだ新婚みたいなものですしねえ。

相談も何も、産める時にどんどん産んでおかないと」

東宮様があれですからねえ

ぼそっとユリ君が口を挟む。

やはり序列を考えると」

まあ、ユリ君さん。あなた、ご自身でそんな事おっしゃるの?私達に構わず

散々お産みになったじゃないの。私達は序列なんていわなかったわよ

セツ君の鋭い言葉は一瞬、回りを震撼させたが次の瞬間、セツ君自身が

大笑い始めた。

全く・・遠慮も何もあったもんじゃなかったわよねーー6人も産んで」

「お姉様方ったら」

ユリ君が真っ赤になる。

東宮様なんて気にしなくていいから、どんどん産んで私に見せて頂戴。

最初は苦労するかもしれないけど、大きくなったらちゃんと返してくれるわ」

セツ君は真っ赤な顔のユリ君に目配せして、それからもう一度マコを抱き上げた。

小さなマコ姫は泣きもせず、にこにこと笑っていた。

1月6日。

まあ、マコちゃんはまた大きくなったのね」

ハナコは沢山のおもちゃを広げながら嬉しそうに言った。

どっちに似てると思う?アーヤかな。キコちゃんかな」

ヒタチノミヤは観察するようにマコを見つめる。

どちらに似ても可愛いと思いますわ。成長が楽しみね」

キコは宮邸を走り回る犬達にしせんを移した。

私がマコちゃんを構っているとやきもちをやくのよ

ハナコは白い小さな犬を抱き上げて頭をなでる。

動物達ってわりと独占欲が強いのかしらね」

私がハナコと話していてもね」

そんな台詞にキコも笑った。

二人目は?」

はい。宮様とご相談して」

キコの優等生的な言葉にハナコは思わず頭を振った。

ダメダメ。考えるとダメって誰かが言ってたわよ。そういうのは自然がいいの。

アーヤも跡継ぎが欲しいでしょう」

何だか今年は誰からも「二人目は」と聞かれるなあ・・・とキコはほんの少し

うんざりしていた。

けれどそれをおくびにも出さず淡々と受け答えするキコはもう立派な宮妃

といえる。

サーヤの結婚だって考えてあげないとね。そこらへんはどうなってるの」

さあ・・・」

東宮が結婚していないんだからサーヤだってまだ先でしょう。今時の女性は

結婚年齢が高くなっているというから」

男と女は違いますわ。巷では独身が増えていても皇族はそうはいかないもの。

そうそう東宮様の事だってね」

お兄様はのんきなところがおありになるから」

のんきにしている間にあっという間に歳をとるんですわ。誰でもよろしいから

くっつけてしまえばいいの」

ハナコの過激な台詞に宮は細い目をさらに細めて笑った。

本当にハナコは口がお悪いね」

そう?」

ハナコのものいいにキコもたじたじとなったが、そのうち宮邸に涼やかな

笑い声が響いた。

 

毎年繰り広げられる各宮邸での正月。挨拶か始まって親戚の噂話まで

約1時間。若い宮妃にはかなり苦痛の筈だったが、それでもキコは何も

言わずに黙って話を聞いていた。

 

そして1月6日の夜。

皇室は全てにおいて通常業務に戻り、天皇と皇后は明日の先帝の

祭事の打ち合わせをしていた。

武蔵野陵への参拝はノリノミヤで・・・・などと食後のお茶を挟んで

天皇・皇后・ノリノミヤは話をしていたその時。

失礼いたします。あの・・・」

飛び込んで来たのは侍従長。顔が真っ青である。

そのただならぬ様子に天皇の顔にも緊張が走る。

もしや大宮御所の皇太后が・・・・?

たった今、テレビでニュース速報が流れまして。皇太子妃にオワダマサコさん

内定と」

午後8時45分に流れたニュース速報。

国民だれもが「え?」と思い、次には「あのマサコさん?」と思いさらには

「何でいきなり?」と思った瞬間だった。

 

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国史劇風小説「天皇の母」71(フィクションだね)

2012-09-12 07:57:16 | 小説「天皇の母」61話ー100話

12月20日。

誰が結婚を承諾したって?」

天皇は思わず椅子からずり落ちそうになった。じっとヤマシタの顔を見る。

ヤマシタはこういう反応が来るだろう事を予測していたので、慌てるでもなく

ただ淡々と報告しようと決心していた。

オワダマサコさんです。東宮様のプロポーズに承諾したとオワダ家から連絡が」

まだあの話は続いていたの?」

天皇は皇后の顔を見る。

皇后は「自身で説得を」と言われた事に心から気を悪くしていたので

ヤマシタの方を見なかった。

今回の事では本当にオワダ家の見識を疑っていたしむしろダメになってほっとしていた。

それなのに。

皇太子殿下から直接のご報告があると思います

何で自分で参内して報告しないのか?

天皇は「筋が違う!」と叫んだ。

それはまあ・・色々ございましたので。殿下は今、ご公務にお忙しいので

一足早く私に伝えるようにと。ですから陛下。東宮様とお話を」

天皇が受けたショックは計り知れないものだった。

 

12月25日。

ようやく皇太子との食事会。

天皇・皇后が東宮御所に着いたのは夜の7時すぎ。それから約2時間

夕食を共にして皇太子の報告を聞いた。

皇太子は嬉しそうに「マサコさんがオーケーしてくれました」と報告。

「でも、いきなり言われても。私達は聞いてなかったし」

天皇が不機嫌に黙り込んでいるので皇后がとりなす形に。

ですから今日、こうやってご報告を」

でもそれはまず御所に参内して

皇后の様子にさすがの皇太子も何だか変だと思ったらしい。

この結婚、反対なのですか?」と言い出した。

反対も何も終わった事だと思っていたから。過程をきちんと報告せずに

いきなり決まったと言われて承諾できる話ではない」

父の厳しい言葉に皇太子は少なからずショックを受けた。

誰もが待望する自分の結婚。

それも世界一のキャリアを持つ女性との結婚についてこんな反応をするとは。

よく考えてみましょうね」

夕食が終わり、お茶の為に別室に向かいながら皇后は優しく言った。

おたあさまはアーヤの時はすぐにオーケーしたのに

皇太子は口をとがらせる。天皇はまたも黙ったまま。

そこに侍従が駆け込んできた。

あの・・・お客様が」

お客?」

お客?天皇・皇后が東宮御所にいるこの時間に客?二人は目を見合わせる。

でも皇太子はにこにこしながら「ああ。お通しして」と言ったのでさらにびっくりする。

一体誰が?」

オワダさんですよ」

言う間もなく、満面の笑みで登場したのはマサコだった。

時計の針は9時を過ぎていた。

未婚の女性がこんなに夜遅くに誰かの家を訪問するというだけでも非常識なのに

ましてやここは東宮御所。しかも両陛下までいる。

こんにちは」

物怖じせずマサコは言った。そのフランクな物言いにさらに仰天する。

(この場合、せめて「こんばんは」ではないかと)

よく来てくれましたね。両陛下にご紹介しましょう。オワダマサコさんです」

・・・・こういう場合、どんなリアクションをすればいいのか。

一瞬、天皇は思考が停止してしまった。

天皇も皇后も「誰かに会う」時には、あらかじめ双方の予定が検討され

時間も決められる。

ハプニング的に突然の来客もなきにしもあらずだが、でもそれだって数時間前には

参内してもよろしいでしょうか」と連絡が入る。

ゆえに、そういったことが一切ない・・・状況が飲み込めなかったのだ。

今日は遅かったね」

皇太子がにこにこと笑いながらマサコに話しかける。

仕事帰りなの。今日はクリスマスでしょ。だからと思って」

何が「だから」なのか。クリスマスって?皇室では祝わない事を知らないのか?

しかも自分達を完璧に無視して会話している。

両陛下と皇太子殿下はこれから別室お話をされます。マサコさんには

お待ち戴きますか?」

沈黙に恐れをなした侍従が思わず声をかけると

一緒に話しましょう。これからのこともあるし

いとも簡単に皇太子はそう答えた。

いいでしょう?」

私は帰る」

天皇は言った。こんな失礼な態度をされた事がない。完全に不愉快になっていた。

客が来るなら最初からそういえばいいものを

ちょうどよかったじゃないですか」

邪魔だろうから帰る」

低く声を抑えた天皇の静かな怒りが全くわからないマサコは

いえいえお構いなく。ご一緒に」などと言う。

さすがに侍従が「マサコさん。両陛下はお忙しい中、東宮御所にいらしたのです。

やはりご遠慮を」

そうでなくてもさっきから寒い廊下に立ちっぱなしになっている。

とりあえず部屋に」

皇后が口を挟んだ。ここで怒りに任せて帰っては負けになると皇后は考えたのだ。

皇太子とマサコは当たり前のように部屋に入り、お茶を飲み、会話した。

天皇にも皇后にもマサコの言葉の半分も理解できなかった。

今日はクリスマスじゃないですか。デートする人は銀座あたりのホテルの

レストランでディナー。プレゼントはティファニーのオープンハート」

へえ。ネックレスがいいんですか?」

他にもシャネルのバッグとかファラガモの靴とか。絶対ブランド品じゃないと。

で、鍵を渡すんですよ」

何の鍵?」

やあだ。殿下。部屋の鍵に決まってるじゃないですか

これはもう結婚について具体的に話し合いも何もなかった。

ペースはすっかりマサコのもの。

結果的に天皇・皇后は先に帰り、マサコは深夜0時を過ぎても帰らなかった。

クリスマスだというので、皇太子は急遽大膳に晩餐会に出す高級な

シャンペンとつまみを要求し、慌しくそれらが用意され、夜勤の侍従や内舎人

達は仮眠も許されず、ただひたすら

マサコさん、いつまでいるんだろう・・・」

早く帰ってくれ」と祈るだけの時間が過ぎていった。

神道の皇室にあって「キリストでもいいから誰か救いの手を」と望まれたのは

初めてではなかったろうか。

 

12月26日。

そして外務省では淡々と準備が進んでいた。

トウゴウ君、頼むよ」

ヤナギヤの言葉に外務省ロシア局長のトウゴウは

任せてください」と言った。

「これで兄のスキャンダルが消えるなら私としては恩の字ですよ」

現在、ワシントンポストの記者をしている兄は

「痴漢」で捕まったという前科があった。

それで新聞記者を首になり、それでも元々が名門トウゴウ家の子孫という事で

ワシントンポストの1記者に鞍替え。

一方の弟は外務省ロシア局長というポストにつきながらも、兄の不名誉に

頭を悩ませてきた。

が、そこに救いの手を差し出してきたのはヒサシと外務省。

兄に恩を売れば今後、何かと得をするかもしれない。

 

12月29日。

仕事納め。

マサコは福島のスキー場へと直行した。

今回は家族全員揃ってのスキー。結婚したらこんな事もないかもしれない。

ヒサシが一生懸命にビデオを回している。

家族の思い出を作る為というより、年明けにマスコミに配る心積もりなのだろう。

あーあ、のんびり出来るのも今だけかあ

マサコは来年からの忙しさを考えないようにひたすらすべりまくった。

来年のスキーはSP付きでスキー場貸切とか?

それを考えるとちょっと鬱陶しさも消えた。

 

 

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする