ふぶきの部屋

皇室問題を中心に、政治から宝塚まで。
毎日更新しています。

韓国史劇風小説「天皇の母」70(フィクションです)

2012-09-02 15:23:54 | 小説「天皇の母」61話ー100話

宮内庁には「大膳課」というのがあって、天皇・皇后・皇太子・ノリノミヤの

食事を作っている。さらに宮中晩餐会等の料理も大膳課が担当。

「天皇の料理人」は日々、天皇の健康を気遣い、食材は御料牧場から仕入れ

御用達の店から仕入れ、予算にあわせつつも健康的でおいしい食事を作る。

先帝もそうだったが今上も「質素」の人であったので、

食事はよほどのことがない限り、大膳に「お任せ」メニューで品数も少なく

するのが常だった。

若いノリノミヤも同じで食事に文句をつけたり注文をするといった事は

ほとんどない。

出されたものを静かに食べて終わる・・・それが天皇家の聖なる食事風景。

 

だった筈なのに。

ここ最近、やたら伊勢えびだの、フォアグラだのと高級食材の注文が多い。

誰の注文だ?」

皇太子殿下だよ。何でも彼女が来るからって」

彼女って誰?例の外務省の女か?」

それそれ。最近やたら東宮御所に来るんだよ。食事時に。で、

そのたびに晩餐会だぜ」

外務省ってのは贅沢な所なんだな。皇室の食事が本当は質素だって

知ったら結婚しないんじゃないか?」

そうかも・・・・皇太子殿下自体は食べ物に好き嫌いはあまり言わないけどな」

そんな会話が聞こえつつ、仕事をしている所に、突如現われたのが

ヤマシタ侍従長。

これは侍従長。わざわざこんな所に」

ワタナベ調理長はにっこり笑って出迎えた。

外は冷えますな。やはり冬だし」

ヤマシタは寒そうに手をこする。

東宮御所にしても宮内庁にしても暖房は十分に行き渡っているわけで。

そんなに寒いわけではないだろうに。

「ロッシーニステーキを作れないか」

は?ロッシーニステーキ?いや、作れますけど随分と値がはります」

うん。最高級のフォアグラを使って欲しい。出すのは19日」

そうなると生フォアグラを空輸して取り寄せないといけませんが、予算は

大丈夫でしょうか。そうでなくてもここ最近は高級中華料理を夕食に

振舞われる事が多くて文句を言われます。

このままでは陛下の耳にも届くのではないかと」

「会計の方は何とかするから。19日は大切なお客様が来て皇太子殿下は

きちんとおもてなしをしたいと考えておられるのだ」

はあ・・・」

料理店じゃあるまいし、おもてなしが高級料理というのは皇室らしくない。

そうはいっても仕事だから・・・・

承知しました」

ワタナベは食材確保に駆けずり回る日々を送る。

 

そして、その前の12日。

最高級中華料理店「富麗華」ではオワダ一家が集まって

乾杯の音頭がとられていた。

マサコの結婚を祝って」

紹興酒の強い香りが五臓六腑に響き渡る。

ありがとう」

マサコはにっこり笑っていた。

それで最終的には何を約束させたの?」

レイコの台詞にマサコはぷっと吹き出した。

さすがにユミコが「ちょっと失礼よ。まあちゃんは純粋な気持ちで受けたんだから」と

たしなめるがセツコまで

でも、1度断ったのにまた受けるってことは・・」と続ける。

えへん」

マサコは偉そうに立ち上がった。

皇太子殿下はこう言ったわ。「マサコさんの事は僕が一生かけて守ります」って」

きゃーー!」

双子が一斉に甲高い声をあげたので、それは個室の外にも漏れ響いた。

やっだーーキザ。あの顔で」

さすが本物の皇子様よねー」

マサコは紹興酒で染めた頬をさらに真っ赤にして

やっぱりこれくらい言わせてからじゃないと結婚は出来ないわよね」と言った。

いよいよお姉様は皇太子妃なのね。将来の皇后だわ」

レイコがちょっとうっとりした顔で言った。

何を言ってるの。皇族って大変なのよ。きっと皇后様からいじめられるわ。

だって皇后様だって昔、苛められたんでしょ」

セツコは冷静に言う。姉が皇太子妃と言われても今ひとつぴんとこないのだ。

でも彼は・・・守るって言ったし」

マサコは自信ありげに笑う。

皇后だって何もいえないわよ。私には。だって聖心でしょ?」

「まあハーバードのお姉様には負けるわよね」

レイコのおもねるような口調にセツコは「学歴なんて結婚したら役に

立たないんじゃないの?」と水を差す。

っていうか、お姉様、外務省を辞めて本当にいいの?」

そうねえ・・・」

外務省・・・北米2課の連中は何て思うかしら?つまらない事でぶつぶつ

文句ばかり言ってる上司とか、陰でこそこそ言ってる同僚とか。

そんな連中を一気に見返してやれる。

このまま外務省にいても女性差別のせいで出世できないかもしれない。

でも

外務省にいて外交をやるのも皇室で外交をやるのも同じですよ」

と皇太子は言ってた。「皇室外交」これこそが自分の目指す道だ。

私は国と結婚するの。皇室に入って皇室外交をやって貢献するのよ」

国と結婚って・・・・随分大きく出たわね

まあちゃんは理想が高いのよ。でも実際の結婚はそんなもんじゃないけど」

ユミコもちょっと心配そうな顔になる。

娘が結婚というものを全く理解していない。転職するかのような言い草に

ちょっとひっかかるものを感じた。

毎日一緒に過ごす相手に「情」がなければ暮らすことなど出来ないだろう。

それをマサコは本当にわかっているのだろうか?

マサコが皇室入りしたらお前達も「妃殿下の妹」になる。心して暮らせよ。

準皇族のつもりでな」

ヒサシの言葉に全員が頷いた。

多分後々、この日が最も幸せと感じた時だったろう。オワダ家にとって。

 

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」69(フィクション!!)

2012-08-23 10:26:05 | 小説「天皇の母」61話ー100話

その2週間後、オワダ家から東宮職に正式に「お断り」の返事があった。

今は結婚そのものが考えられない」と。

しかし、この断りには追伸として「しかし、両陛下から直接のお言葉があれば

本人も受諾するかもしれない」とあった。

さすがにヤマシタもヤナギヤもこの台詞には「あまりにも不敬」と思ったが

今やすっかりリベンジを果たしかけているヒサシの前では何もいえなかった。

何でしょうか。直接の言葉というのは

もうすぐ中国訪問・・・というこの時期、いきなりそういわれても皇后はぴんと

来なかった。

なにせ、皇太子が極秘にマサコと会っていた事すら知らなかったのだから。

それは・・多分、皇后陛下から直接マサコさんに来て欲しいというような。

そんなお言葉をかけて頂ければオワダさんの方も納得して、皇太子殿下と

結婚を前向きにですね・・・」

冷や汗が出てくる。

ヤマシタの言葉に皇后は当然のごとく眉をひそめる。

私に直接皇太子妃になってくれとお願いしろと?」

その言葉には小さな・・というより静かな怒りが含まれている。

皇后は内心「随分と甘く見られている」と感じ、絶望的になった。

先帝の時代はそんな事はなかった筈。

なぜ、今、そうなのか。自分が民間から出た妃だからなのだろうか。

それでも時代的な事を思えば、突っぱねるわけにもいかない。

「なんと言う事でしょうか」

皇后は呼吸を置いた。

いつの間にそんな話になっているのですか

それはその」

ヤマシタは事の経緯を隠しておくわけにはいかないと思った。

実は、お断りがあってからも、マサコは東宮御所に来ているし、電話連絡も

しているのである。

彼女側からすれば「結婚はしないけど友達でいよう」という考えなのかもしれない。

しかし、東宮職からすれば

「妃になる事を断ったのになぜ頻繁に電話をしたり遊びに来たりするのか」と

いうことになる。

無論、それはマサコの意志というより「父親」の差し金である事はわかっているが

その通り皇后に伝えるわけにはいかなかった。

そもそもなぜ私が直接お願いしなくてはいけないのでしょうか。私が出て行く

事でまとまる話というのはおかしいのでは?オワダ家は何を望んでいるのですか

はあ」

確かに皇太子妃という立場は重い。私も同じように悩み考え、最終的に

陛下の思いを受けました。でもそれは誰かにお願いされたからではなく

私が心から陛下をご信頼申し上げ、尊敬と敬愛をもてる方だったからです。

あちらの方は違うのですか?」

陛下はご結婚後、民間出身の妃として様々なご苦労をされてきました。

オワダ家もそれを知っています。それゆえに娘さんの心配をされているのです。

マサコさんが皇后陛下のように苛められはしないかと」

私は苛められてはいませんが

皇后の唇は小さく震えていた。

と・・とにかく、それで両陛下からのたってのお願いでご成婚という運びに

なればオワダ家も安心してですね」

まるで政治ですね」

そうだ。これは政治なのだ。何気ない皇后の言葉が的を得ている事に

ヤマシタは今更ながら感心した。

しかし、見抜く事は得意でも政治力があるかどうかは別の問題だ。

皇室の人間になっていくというのは、自分自身の精進の問題ではありませんか」

その通りですがマサコさんはアメリカ育ちで非常に現代的な女性です。

ご優秀で成績もよく、滅多にいない女性ではありますがそれゆえに皇室に対する

感情も・・・・」

なせ、皇太子はそのような人と結婚したがるのでしょうか

ヤマシタは黙りこんだ。親子なんだから自分で聞いてくれというような気持ちだった。

でも、皇太子が立太子し、東宮御所に移った時点で天皇も皇后も

口を出さなくなった。独立した東宮家をたてようとの気持ちらしかった。

結婚の話も、アキシノノミヤの時は散々口を挟んで、あれやこれや指示し

今もキコ妃は皇后の監視下にある。

でも、皇太子に関しては、というより皇太子妃の件に関してはほとんど

口を挟まず、なりゆきに任せるといった具合。

皇太子の自立を重んじているというのが前向きな意見だが、果たしてそうなのか。

もしかしたら両陛下は皇太子は一生独身でもいいと考えているのでは?

そんな事すら頭をよぎるほど。

今になって「なぜそんな人と」とは言うものの、皇太子の訴えを本気で

受け取らなかったのは天皇と皇后だ。

マサコさんはキコ妃殿下よりも学歴があり、しかも美しく聡明でいらっしゃいます。

財産も持ち家もありますし、お父様は外務事務次官。将来は国連大使にも

なろうという方。そんな方を皇太子妃として臨まれた皇太子殿下は大層

お目が高いと私は思います」

学歴と財産」

皇后は呟き、押し黙った。

それを言われると反論の余地はなかった。

まさか「学歴でもなく財産でもなく血筋だ」と皇后の口から言える筈もない。

もっともそれを否定してきたのは自分自身なのだから。

天皇も同じ気持ちだろう。

皇室の中でもっともリベラルな考え方を持っている天皇が「血筋」で人を

評価するはずがない。では何で?

それはやっぱり「学があるかないか」なのかもしれないと皇后は思った。

一方のヤマシタは皇后を論破できたと確信した。

ミチコ皇后こそ、日本の高度成長期時代の申し子なのだ。

皇室という「血」い拘る特殊な世界に、美貌と知識を武器に入ったのだから。

皇后について今まで語られてきた事は全て

「高学歴ゆえの成績優秀者」と「学と教養があるゆえの気遣いの細やかさ」

一度会った人の顔は忘れない。どんな会話をしたかも決して忘れる事はない。

訪問する相手の事は事細かに調べ上げて「出会い」をプロデュースする。

そんな「皇室の中におけるキャリアウーマン像」を作り上げたのは皇后自身。

その証拠に、キコ妃は同じ道を歩み始めている。

 

でもやっぱり私から何か言う事は出来ないと思います。陛下も同じでしょう。

それでダメになるならそれでいいわ」

ヤマシタはがくんと頭を下げた。

この事は陛下に申し上げますが、きっとお怒りになると思います。それは

私がなだめるとしても、皇太子にはもう少し礼儀を弁えて貰わないといけません。

東宮侍従長であるあなたがもっと、きちんとした事を教えてあげてください」

皇后は微笑みながらも目は笑っていなかった。

 

ダメになるならそれでいいだと?」

ヒサシは拳を握り締めた。

この事はすでに陛下の耳にも届いている筈。これ以上高飛車に出る事は

やめた方がいいでしょうね」

電話の向こうのヤマシタは怖気づいているようだった。

・・・・・」

ヒサシは考え込む。

マサコの結婚を成功させるにはどうしても「お墨付きが欲しい」のだ。

無理を言って皇室に来てもらった」という。

そうでなくては意味がない。

わかった。ではこちらで何とかするから。そっちは皇太子に諦めずに

プロポーズしろといえ。そうすればマサコは必ず受けると」

電話を切り、ヒサシはふと新しい考えにとりつかれ、繭をしかめつつも

少し笑った。

マスコミを利用すればいいか

いくらかかるだろうか・・・・と金勘定をしてみる。全額我が家で支払うのは

馬鹿な話だ。フクダに言って外務省の機密費を融通させよう。

そうすれば大々的なキャンペーンが打てるではないか。

すなわち

マサコさんは本当は外務省でキャリアを積み、将来は大臣になる事を

夢見ていたのに皇太子のプロポーズを断れず、泣く泣く皇室に嫁いだ。

両陛下から三顧の礼を尽くされた以上は断れないとオワダ家も考え

娘を説得した」と。

皇太子の諦めない粘り強さがここに来て役に立つ。

いや、自分は思われていない事にも気づかない純情青年なのか?

どっちにせよ全ては皇太子の性格が招いたこと・・・・と思う事にした。

 

 

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」68

2012-08-09 11:45:14 | 小説「天皇の母」61話ー100話

全ては極秘裏に・・・なぜか。

彼女の入内に反対する勢力が存在するから。

その第一番目が両陛下。ゆえに・・・・

 

10月3日。天皇と皇后は山形国体の開会式に向かった。

二人が御所を出て羽田に着いた丁度その頃、東宮御所はしんとしずまり返っていた。

皇太子は東宮御所の中で何をしているのか・・実は侍従も内舎人も知らなかった。

彼の部屋はぴったりと扉が閉じられ、誰も近づかないように指示されていたし、

とりたてて今日の予定はないと知らされていた。

東宮御所の中は、何となくのんびりとおっとりとした空気に包まれていた。

 

だから、一台のあずき色のワゴン車がこっそり東宮御所を出た事に関しても

別に誰も注意を払わなかった。

考えてみれば窓には黒い布で目隠しをしていたし、誰が乗っているのか皆目

検討がつかない。その割には後ろからセダンが1台ついて、覆面の先導車も

ついている。

ちょっと考えれば「地味なふりした仰々しい車列」になるのだが、その時は

誰も・・・そう、誰も気にしていなかった。

ワゴン車はまっすくというよりひた走り・・といった方がいいようなスピードだった。

市川にある「新浜鴨場」に向かって。

ヤマシタはドキドキしながら東宮御所の守衛を抜け、とにかくひたすら何事も

起こらないように祈り続けた。

天皇や皇后にすら秘密のこの行動・・・ばれたら大変だ。

手に汗握るとはこのこと。いつも新浜鴨場は遠い距離ではないのに今日は・・・

 

やがてどれだけの時間が経ったことか。

永遠より長く感じた時間がすぎて、車は秋晴れの鴨場に着いた。

毎年12月、ここで外交官らを接待するのが皇族の重要な役割になっている。

鴨を放し、それから鴨料理を食べながら歓談が行われる。

その為に景色は四季折々にふさわしい上品でロマンチックな風情を持っていたし

施設はいつでも使えるようにしてあった。

ワゴン車が止まると、施設の中から一人の女性が出てきた。

迎えたのはオワダマサコだった。後ろにはヤナギヤも控えている。

そしてワゴン車から降りてきたのは皇太子その人だった。

マサコさん

皇太子は満面の笑みで声をかけた。

「どうも」マサコも笑顔で答えた。

まだ紅葉には早いけど、空気もきれいだし。鴨にはいい日和だ」

鴨のステーキは好きですよ」

二人は施設の中に入ると、早々に一室にこもる。

ヤマシタはヤナギヤに目配せして場を離れた。

 

どうなんですか?オワダ家は」

どうって・・・本人以外は乗り気だよ

本人以外ですか?マサコさんは違うんですか?」

あの娘が結婚に向くと思うか?」

ヤナギヤはくすりと笑った。

でもまあ、皇太子がご執心なんだからそれでいいけどね」

ヤマシタは不安で一杯になる。

 

一方、個室では皇太子がいつものごとく、一生懸命に会話を試みていた。

今日は小さな頃のアルバムを持ってきていた。

これが初等科の時の運動会の写真です。テストではよく0点をとったりも

したものですよ」

学習院で?それってありえない

マサコさんは勉強が得意だったんでしょうね」

ええ。父が厳しくて。勉強が出来ないと人間じゃないみたいな?」

そんな話をひとしきりした所で昼食。

皇太子の意向で特上の鴨肉を用意するように言われていたし、マサコの

好きなフォアグラもふんだんに用意された。

テーブルに並ぶご馳走にマサコは目を輝かせる。

皇族の人って毎日こんな食事なんですか」

まさか。今日は特別ですよ」

でもマサコは「毎日こんな食事だ」と信じている風だった。

実際、マサコはよく食べたしよく飲んだ。

大膳では「予算が・・・」なんて言葉がちらほら飛び交っている事には

全く気づかずに。

なんと言っても今日は皇太子の一生に関わる日なのだから。

 

僕と結婚してくれませんか

皇太子がやっとその言葉を言ったのは、大夫遅くなり日もとっぷり暮れてから。

ヤマシタなどは着かれきって控え室で今度はひたすら帰りたい衝動に

かられている。

何でこの二人こうも腰が重いのだろう。

昼食後にちょっと散歩したものの、あとはまたも部屋にこもりきり。

何となくだらだらした感じだ。そろそろ帰らないと東宮御所にばれてしまう。

 

お断りするような事があっても構いませんか」

マサコが答えた台詞は皇太子にはどう理解したらいいのか一瞬わからなかった。

断るつもりなのか、それとも答えを保留するという事なのか。

これが「お断りします」というのであればわかる。でも最初から断るつもりなら

食事まで一緒にする筈ないし。

じゃあ、前向きに検討する・・・という事なのだろうか。でも「お断りする可能性」も

視野に入れているという事で。

何が不安とか、心配とか、具体的に言ってくれれrばいいのに、いきなり

その答えだ。皇太子は内心傷ついていた。

あの・・マサコさんが不安に思っている事などがあるなら」

今はなかなかそういう事が考えられなくて

考え・・られない?」

ええ。仕事があるしやりがいもあるし

ああ・・そうか・・・これは断りなんだ。やっと皇太子は理解した。

でも、断られてももういちど検討するように説得しろとヤマシタにも言われている。

マサコさんのような優秀なキャリアウーマンが皇室に入ることは

色々難しい面もあるかもしれないけど、もう一度考えてくれませんか?」

思い切ってそういってみた。

すると「はい。そうですね」という答えが返ってきて、またもびっくり。

この「はい、そうですね」は前向きに検討する事なのか、それとも単なる

社交辞令なのだろうか。

今度は東宮御所に来ませんか?マサコさんの好きなケーキを用意しましょう」

ケーキ?ティラミスとか?」

ティラミスですか。わかりました」

マサコは無邪気に笑った。

(また会ってくれるんだ・・・・)

皇太子は心底ほっとしていた。

 

 

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韓国史劇風小説『天皇の母」67(フィクションだって)

2012-08-05 11:00:00 | 小説「天皇の母」61話ー100話

1992年の10月は天皇・皇后にとって忙殺される月だった。

山形国体の開会式に出席の後はいよいよ中国訪問が待っている。

日々の忙しさにただ身を任せているような状態だった。

このチャンスを逃してはならなかった。

皇太子は未だに両親や皇族方が彼女との結婚に反対している事を知っていた。

しかし彼にしてみればそれは「偏見」であるし、自分こそがその「偏見を打破して

新しい皇室を作り上げる先鋒にならねばと思っていたのだ。

そんな皇太子に入れ知恵をしたのはヤマシタ東宮侍従長、ヤナギヤもフジモリも

一枚噛んでいた。

彼らは言葉巧みに「プロポーズの事実は絶対にマスコミに知られてはなりません」と

言う。

先にそんな事がしれたら大騒ぎになりますし、どんな横槍が入るかわかりません。

極秘裏に絶対にわからないような日を選んで結構せねば」

ミステリアスな言葉を言われて皇太子の心は舞い上がった。

どうすればいいの?」

3日、両陛下は山形へ行かれます。出発されたら極秘に新浜鴨場にご案内

します。そこにマサコさんも来ていますから、そこでプロポーズをされては

いかがでしょうか」

新浜鴨場。千葉県にある外交官接待施設だ。綺麗な庭もあるし、鴨肉も

食べられるし・・かなりロマンチックな場所だ。

「うん。それでいいよ

皇太子は二つ返事で承諾した。

 

一方、オワダ邸ではヒサシが考え込んでいた。

彼の頭の中にはただ一つのこと「オワダ家の出自」をどうするか・・・このことだけが

あれやこれやと浮かんでくる。

いずれ早晩、宮内庁はオワダの歴史を調べることになる。

そしたら先祖が不明、墓が不明である事がわかってしまう。

その時、誰の力を利用したらいいのか。

無論、エガシラ家の問題もあった。

チッソ問題の他に家柄の話だ。家柄家柄家柄・・・ああ、全く皇室というやつは。

家柄がなんだ、血筋がなんだ。

頭が悪いくせに。自分で努力もせずに税金で暮らしやがって。

日本一恵まれた家庭じゃないか。絶対に破産しないんだからな。

そんな能天気な脳内お花畑の皇室をズタズタに傷つけてやりたい衝動に

かられる。

俺たちが貧乏のどん底で這い上がるようにして大学を卒業し、家柄や血筋が

利用できないハンデを背負いながら、汚い事までやって今の地位を築いた

というのに、皇族はただ「皇族」というだけで尊敬される。

全く莫迦な話だ。

しかし、その莫迦な家に娘を嫁がせてさえしめば、ヒサシは「皇太子妃の父」

だった。将来は「皇后の父」だ。将来の天皇の義父で祖父に。

それを考えると笑いが止まらない。

先祖が不明なのに、そんな家から皇太子妃が出る。皇后が出る。天皇が

出るのだから。

レイコやセツコの縁談もこれで安泰になる。

オワダ家は社交界に重要なパイプを持ち、それが政治と結びついて

将来は総理大臣以上の絶対権力を持つのだ。

 

いいか、鴨場に言ったら必ず皇太子はプロポーズするだろう。そしたら

答えは保留しろ。あとはこちらに任せるように」

じゃあ、結婚しなくていいのね」

そうじゃない。答えを引き伸ばすだけだ。二つ返事で受けたらいかにも

皇族と結婚したがっているように見えるだろう。この結婚は皇太子が無理に

押し付けたものでなくてはならない。三顧の礼を持ってお前は迎えられるのだ」

面倒なのね。何だか実感がないわ」

マサコはつまらなそうに答えた。

連日マスコミに追いかけられるのは気分がいいけどうんざりするし、

東宮御所みたいに堅苦しい場所へ行くのも自慢できるけど肩が凝る。

いくらお父様の為とはいえ・・・

「でも結婚したらお父様は私を認めてくれるかしら?男の子でなくても」

それえがただ一つの希望だった。

 

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」66 (フィクションです)

2012-08-02 19:04:26 | 小説「天皇の母」61話ー100話

え?マサコさんと会えるの?」

思わず皇太子は腰を浮かした。

ええ。ただし東宮御所はまずい。外務省の人間の家を借りましょう」

そう。やっと再会出来るのか。でもマサコさんはそれでいいの?」

お断りはなかったですから。あとは殿下次第です」

皇太子は目を輝かせて「僕だって」と言った。

ヤマシタ侍従長は(ここまで皇太子が乗り気なら、当のマサコさんも

お断りにはなるまい)と思った。

再会について天皇・皇后の了解をとったわけではない。

でも、今、両陛下は中国訪問の準備で忙しいし。このゴタゴタの中で

全部運んでしまわなくては」

 

天皇の中国訪問。

それはパンドラの箱を開けるようなものだった。

中国は天皇を自国に呼ぶことで、共産党政権の成功と安定をアピールする

狙いがあった。もし、天皇から直接謝罪があればこれに越したことはない。

「日本鬼子」がついに中国に頭を下げる・・・・そして次は領土問題。

この件に関しては、国内でも賛成・反対の二つが議論を戦わせていたが、

マスコミ操作の為なのか「賛成派」の意見の方が大きいように感じた。

しかし、皇室内部から見ればこの訪問は大きな「問題」だった。

いわゆる「皇室外交」として中国へ行くのだが、相手国に失礼にならず

なおかつ日本の尊厳も守らなければならないという重大な使命が

あったからだ。

中国がどんな罠をしかけ「日本が謝罪した」といわせるタイミングを狙って

来るかわからない。おかしな事で因縁をつけられることもあるかもしれない。

それを考えると、天皇も皇后も眠れなくなる程悩んでしまった。

何度進講を受け、説明を受け、全ての仕事を全部頭の中に叩き込んでも

それでも心配な状態。

とても息子の結婚話どころではなかった。

 

その年の夏は暑かった。

そんな夏の真っ只中。

ヤナギヤの屋敷に最初に入ったのは皇太子だった。

私的な訪問であり、車も目立たないものを使った。

再会に東宮御所を使えない理由を考えもせず、ただひたすらスリル満点で

「秘密の恋」を演じるようなドキドキ感に喜びすら感じていた。

いらっしゃいませ。皇太子殿下」

ヤナギヤはにこやかに出迎える。今日の為に新しい茶器を買ったし

紅茶もフォートナム&メイソンでイギリス製を強調。

調度も洋風にして、「いかにも外国好きなマサコさん」の好みに合わせた。

頑張って下さい。殿下」

ありがとう

ヤナギヤやヤマシタの思惑が何か知らない皇太子は、ただただひたすら

二人に感謝していた。

 

そして・・・かなり遅れて1台の車がヤナギヤ邸に到着した。

ひらりと降りてきたのは28歳のマサコだった。

最初に会ったのはまだ22歳の頃だった・・・皇太子は待たされた事も

忘れて立ち上がった。

ああ・・全然変わらない。最初にあった頃の彼女だ。

大きな瞳が魅力的な快活ではっきりとものを言う女性。

どうも

マサコはにこやかに言った。

別に感慨はなかった。相変わらず背が小さい人だなあと思ったくらい。

職場で自慢してやろう。「皇太子殿下と話をした」と言ったらみんなの態度が

また変わるかもしれないし。

 

じゃあ、私は奥におりますので

再会から10分ほど雑談の後、ヤナギヤやヤマシタらは席を外した。

広いリビングには二人きりになってしまった。

以前もそうだが、今回も二人の間には共通の話題がない。

そもそも育ってきた環境が違うのだ。

しかし、そんな事皇太子にはどうでもよかったし、マサコにとっても問題では

なかった。お互い違う意味で同じ事を考えていたのだ。

あれこれ考えた皇太子が最初にひねり出した言葉は

イギリス・・・イギリスはどうでした?」

だった。

「よかったですよ」

それに対しての切り返しがこれである。普通はそこで会話が途切れる筈だが

皇太子は負けなかった。

僕もイギリスのマートン・カレッジにいたんですよ

ああ、知ってます

以前、話しましたか?」

はい

オックスフォードの教授はみな優しくて親切でしょう?英語もわかりやすいし。

ああ、マサコさんは英語が堪能だったんですよね」

はい。ロンドンにいた時はよくハロッズに買い物に行きました。やっぱり買い物は

ハロッズじゃないと。服はスローン・スクエアで買っていたんですけど、

アメリカの英語とイギリスの英語って違いますね。なかなか難しいっていうか」

ハロッズ?僕も行った事ありますよ。といっても、買い物はあまり。

そうそうロンドンといえばパブでしょう?ノーネクタイで入り損ねたパブが

ありましてね」

信じられない。本当ですか?皇太子なのに追い出されたんですか?

すごく笑える話ですね。パブではビールを飲むんですか?」

大体ビールでした」

私も。パブで飲むのってすごく楽しくないですか?」

楽しくない?」

あ、すいません。楽しいですよね?って意味です。時々有名人なんか

来たりして。ああ、殿下もそうですよね」

ええまあ・・・」

夏休みはベルギーとかスイスに行ってたんです。妹がスイスにいたので。

日本と違ってヨーロッパの夏は過ごし易いし、遊ぶところも多いし。

断然ヨーロッパですよね」

そうですね」

正直、皇太子はマサコの言葉の半分も理解できていなかった。

何が断然ヨーロッパなんだろう。登山は好きだし、アルプスなどは上りたいと

思うけど。他にはスポーツだろうか?

多分、湿気がある分、日本の夏は過ごしにくいといいたいのだろう。

そんな風に理解した。

 

ただ皇太子は別の所で感動していた。

マサコが自分に対して全く気後れしていないという事に。

非常に「普通」に話すのだ。

学友だってこんなにフレンドリーに話す人はいいないだろう。

それでつい聞き役に回ってしまう。

何とか話題の共通点を見つけようと、学生時代の話をふったら

デンフタって礼拝堂があるんですけど、そこのホスチアを盗み食いして。

どんな味か調べてみたかったんです。でも全然おいしくなかったわ。

同級生にねずみみたいな顔の子がいて「ねずかあさん」って呼んでいたんです。

高校の時、先生にあだなをつけるのが得意で。それから防犯ベルを

わざと鳴らしたりとか、いたずらばかりやってました。スポーツはソフトボール部で

野球が好きなんですよ。追っかけした事もありました」

お・・おっかけ?」

そうです。好きになった選手の練習場所に駆けつけるんです。で、一緒に

写真をとってもらったり」

よくしゃべり、よくお茶を飲む。そこにマサコがいるだけで熱気が伝わって

来る。やっぱり自分が選んだ人に間違いはないと思った。

マサコはいちいち皇太子が目を丸くして聞いてくれるのが嬉しくて

仕方ないようだった。笑うマサコは勝利の女神に見える。

 

一足先に帰ったマサコの余韻を確かめつつ、皇太子は席を立った。

今日は場所を提供してくれてありがとう。とても楽しい一日でした

ようございました。それで感触は・・いや、つい下品な言葉を」

ヤナギヤはわくわくしながら尋ねた。

リビングからは時折笑い声が漏れ、本当に楽しそうに感じたからだ。

まるで夢みたいだよ。本当に再会できると思わなかったから。

今度は東宮御所にお呼びしましょう。ねえ?」

振り返ったヤマシタの顔は一瞬ゆがんだが、次には笑顔になった。

はい。そうですね」

ヤマシタにはついさっき帰ったマサコが、ヤナギヤに何の礼も言わずに

帰ったことが気になっていた。

今日、ここで会う事は彼女も承知の筈だったのに。

しょせん、父親の部下などは眼中にないという事だろうか。

まだ若い娘のくせに随分と高飛車な。

ヤマシタには不安が募った。

あの女性は本当に皇室でやっていけるのだろうか?

マサコさんはフカヒレが好きなんだそうです。だから次に会う時は

最高の料理をお出しすると約束しました。ヤマシタ、それでいいよね?」

「え?はい。大膳によく言いましょう」

食べ物の話で盛り上がったりしたんです

ちょっと照れた顔で皇太子は言った。

この無邪気な純粋な将来の天皇の結婚は間違いであってはならない。

間違いであっては・・でも・・・ヤマシタは一人悩み始めたのだった。

 

 

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」65(フィクションでした)

2012-07-29 10:41:02 | 小説「天皇の母」61話ー100話

皇太子様、あるいは皇后陛下から直接言葉を頂いたらあるいは・・」

こんな言葉が雑誌に載った。

キャリアウーマンの道を着々と歩み始めているマサコさんを諦めきれない皇太子。

でも直接プロポーズなりお願いがあればあるいは・・・という思わせぶりな記事だ。

え?オワダさんってまたお妃候補にあがってるの?」

外務省の北米2課では、この記事を読むなりひそひそとささやき声が

あちらこちらから聞こえてくる。

だってあの人、結婚したくないって言ってるじゃないの」

そうそう、あんな家には行かないとか言ってたのに・・・まだお妃候補って」

皇太子があきらめきれないんだろ」

「もはやストーカーよね」

でも、あいつにストーカーする奴なんているか?俺は御免だなあ」

蓼食う虫も好き好きよ。本当の彼女を知らないから結婚したいと思えるの」

でも、本当に皇太子妃になったら目上だよ」

あーあ、頭下げなきゃいけないのか・・・・」

頭下げてでも北米2課から出て行ってくれるならありがたい。皇太子頑張れ」

「北米2課というより外務省からでしょ」

そうそう、何かって言うとすぐに「おとうさま」を持ち出すからなあ」

マサコがトイレから戻ってきたので、みんなは一斉にばらけた。

仕事しないでダベリングしてていいの?」

マサコはにやりと笑いながら言った。

そうよね」と答えながら(30分ごとにトイレに行ってるそっちはどーよ)と

思っていたが口には出さない。

オワダマサコに手を出すとあとからとんでもない「しかえし」が来るという

もっぱらの噂だった。

例の不倫のカレシもイラクへ飛ばされてしまったし。

 

「あの・・・オワダさん。また皇太子妃候補にあがってるのね」

恐る恐る聞いてみる。するとマサコは得意そうに笑った。

そうなの。何でかしらねーーお断りしているのにね」

お断りしているの?」

ええ。だって興味ないもの」

そのわりには、本当に嬉しそうだし、このところのマサコの専横ぶりを

みていると、もしかして本気で皇太子妃になろうとしているのかも。

でも結婚したい気持ちはあるんでしょ?」

そりゃあ。結婚って一種のステイタスじゃない?一生独身の負け犬には

なりたくないわ」

負け犬の遠吠え・・・・かあ・・・最近流行の言葉だ。

「じゃあ、結婚しても外務省は辞めないの?」

うーん・・辞めないと思う。だってこの仕事は天職だし」

どこから来るんだろう・・・その自信。ああ、親か。

その時は何となく苦笑いしていた同僚達も、やがて「お妃候補」が本格化

しているとみおるや、みな彼女には近寄らないようになった。

 

週刊誌や雑誌にはまた

宮内庁長官が直接オワダ氏に会ってマサコさんを正式なお妃候補として

考えて欲しい」とお願いに行ったと書かれた。

マサコに言ってみますがお断りするかもしれません」とオワダ氏は答えたと。

「マサコは結婚そのものが考えられないのです」とも。

フジモリが直接ヒサシに会った事はすぐに天皇・皇后の耳にも入った。

一体これはどういう事でしょうか」

皇后の厳しい問いにフジモリは汗を拭きながら答えるしかなかった。

はい。皇太子殿下の強いご意向があり、オワダさんをもう一度お妃候補に

して正式に申し込みを」

聞いてない」

天皇は静かに言った。

聞いてないよ。どうして私の知らない所で話が進むのか」

お話していないという事はないと思いますが・・・」

フジモリは私が聞き違えたとか、聞いていたのに忘れたとか・・思っているの?」

いえ、決してそのような事は。しかし陛下。皇太子様のご遺志は強く

何が何でもオワダさんでなければ嫌だとおっしゃり、それを聞いた宮内庁の

職員が色々根回しを始めているのです・・・」

何を人事のように」

皇后はさらに厳しい顔つきになった。

オワダ家に直接行ってお願いしたのは長官であると、ここに書いてあるでしょう」

はあ・・・やむにやまれず。この件に関しては外務省が深く関わっており

ヤナギヤ氏なども動いているようで私としては逆らうわけにはいかず・・・

そもそも殿下のご遺志が」

そんなに彼女に執着しているのですか」

皇后はため息をついた。

はい。もし、ここで変に両陛下が反対を唱えたりしたらどんなスキャンダルが

起こるかわかりません。これまた噂ですが、皇太子殿下とマサコさんはその・・・

すでに・・・というような話もありまして。それを知ったオワダ氏が非常に立腹

しているとの情報も」

何だって!」

天皇は声を荒げた。

これじゃまるで美人局ではないか。仮にも皇太子の結婚だぞ。それを

こんな風に既成事実を積み上げるような、脅すような形で進んでいいものか」

あの・・陛下はチッソのお孫さんという事でオワダさんはふさわしくないと

お考えですね。でもチッソの孫であるという事は今時の結婚では障害には

ならないのではないかと。法的に。むしろそのような箏で反対なさると

差別であると国民から言われかねません」

オワダ家は3代前が不肖であると聞いている」

それも理由になりません。戦後、身分制度はなくなり日本人は誰もが家柄などを

気にせずに結婚する自由を得たのです。その象徴的な例が・・恐れながら

皇后陛下で」

皇后は絶句し、思わず椅子に座り込んだ。

フジモリ、皇后をたばかるのか」

とんでもないことでございます。私達国民はみなあの時のショウダミチコさん

の皇室入りに大賛成いたしました。時代が変わったと。華族制度がなくなり

皇室に民間妃が入ることで「法の下の平等」が実現されたのですから」

いつの間にかフジモリは地雷を踏んでいたようだった。

天皇も皇后もそれきり貝のように口を閉ざしてしまったからである。

 

一方で水戸の有料老人ホームに暮らすヒサシの両親は、息子達と暮らせない

ことに不満を抱きつつも、孫たちがみな高学歴でキャリアの道を選んでいる

ことに非常な満足を得ていた。

これこそが「恨」をはらすという事なのではないか。

貧しい家の中で必死に勉強をさせてきた子供達。そして見事にみな東大に

入り、しかもヒサシの娘は皇太子妃候補にすらなっている。

しかし、オワダ家のルーツが何であるかと尋ねられたら、息子は何と答える

のだろうか。新潟には墓すらまともにない。

この先、誰かが建ててくれるのだろうか。

一抹の不安がよぎる。もし、オワダ家が純粋な日本人でないとわかったら。

いや、そうなったら同胞の力を借りればいい。

日本にはすねに傷持つ「新日本人」が多々いるのだから。

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」64(フィクションさ)

2012-07-26 14:30:13 | 小説「天皇の母」61話ー100話

カイフ元首相の息子の結婚式にひときわ目立つ格好で出席した女性が

いた。マスコミは結婚式の主役達より色めき立ち

捨てがたい美と気品」というフレーズの元、写真をとりまくり、雑誌に載せた。

マサコは有頂天になっていた。

マスコミに注目されるのがこんなに気持ちのいいものだとは思わなかったからだ。

「美と気品」などとキャッチフレーズをつけられ、「皇太子妃候補の本命」と

評される。

それはマサコの外務省勤務において「錦の御旗」になりつつある。

もはや誰も自分に意見しようとは思わないし、ささいなミスに目くじらを

たてられることはない。

 

ノリノミヤは無事に学習院大学を卒業し、ヤマシナ鳥類研究所に職を得た。

今度はノリノミヤの「婿候補」が取りざたされるようになる。

ノリノミヤは自分が母ほど美しくない事は十分に承知してたし、派手な事より

質素を好み、アニメや時代劇が好きな今時の「オタク少女」だという事も

十分に承知している。

だから自分に趣味があう人なんてそうそういるわけない事も。

それでも、ちょっとハンサムなお公家さん出身のボウジョウ氏には熱くなった

事もあるけど・・・所詮は生きる世界が違うなと思った。

 

アキシノノミヤケでは年に数回、学習院出身の友人達を集めて

テニス大会が行われる。

お互いが食べ物を持ち寄り、テニスに興じ友好を温めているのだ。

ノリノミヤの卒業を祝ってのテニス大会が行われたのは4月の

まだちょっと寒いとき。

あまりテニスをしないノリノミヤだったけれど、兄夫婦の思いやりだし

何となくこれは「見合い」風味もあるのかしら?などと思いつつ参加した。

そしてこの会にはさらに珍しく長兄の皇太子も出ていた。

とはいっても、皇太子の場合、テニスよりひたすら日本酒やワインを飲んで

いる方が多かったのだが。

サーヤも大学を卒業したし、そろそろ結婚を考えないといけないな」

兄宮の言葉に姫宮は笑った。

私より東宮のお兄様の方が先じゃなくて?」

男は遅く結婚したっていいさ。でも女性の場合はね。特にサーヤは

自分からは絶対に動かないから心配してやってるのさ」

「余計なお世話だわ」

口をとがらせたノリノミヤにキコはそっと飲み物を差し出した。

結婚はお互いの価値観が同じでないとなかなかね

そうよ。同じ価値観の人なんてそうそういないわ。特に皇族とは。

お兄様がお姉様と結婚できたのは奇跡のようなものだもの。

私なんて・・・美人じゃないし」

顔なんて関係ないですよ」

と言ったのはアキシノノミヤの学友、ヨシキだった。

背丈はあまり高くなく面長の顔は家柄のよさを感じさせるが、決して

ハンサムとはいえない人物だった。

名門華族の末裔ではあったが本家ではないし、父親を早くなくして

大学卒業後は一旦銀行に就職したものの、実は今、公務員試験を受けようと

している所である。

こんな地味な愛称「クロちゃん」(苗字がクロダなので)がアキシノノミヤと

仲がいいのは、彼の性格がおっとりしてて上品で、決して出過ぎない

部分だったからだろう。

あら、男性はみな美人がお好みでしょ」

そうですか?顔なんて歳をとったら誰でも衰えるし、僕は性格の方が

大事だと思うけどな」

じゃあ、クロちゃんは恋人いるのかい?」

宮の問いかけにヨシキはしどろもどろになって「いたらここにいないでしょ」と

答えたのでみな笑った。

僕は今の所車とカメラが趣味だし。こういうの、理解してえくれる女性じゃ

ないと結婚なんてなかなか」

まあ、車とカメラがご趣味なの?」

ノリノミヤは目を丸くした。彼女にとってスポーツカーなど値段もわからない

代物だし、写真は皇太子がよく撮影してはいるけど、そこまで夢中になれるのか

どうかわからなかった。

「普通の人はそれでもいいけど、僕はそうはいかないよ」

皇太子がちょっと赤い顔でちゃちゃをいれた。

「誰だって皇太子なら妃なんて選びたい放題だって思うだろう。

ところが僕ときたら・・たった一つの恋愛でさえ成就できないんだから。

みーんな反対して。家柄も育ちも関係ない。価値観が合えば結婚できるなら

絶対に僕だって結婚出来る筈だ」

価値観だけじゃないよ。皇室には古くからの伝統やしきたりがある。

そういうものを受け入れてくれるかどうかが大事なんだと思う。

サーヤだって降嫁しても皇室との繋がりが切れるわけじゃない。

サーヤの夫になる人もそれなりの立ち居振る舞いを要求されるし、

慣れてもらわなくちゃいけない。自己主張ばかり強い人では困るでしょ」

アキシノノミヤの言葉にみな頷いた。

僕ら庶民とは違って、皇室はそういう伝統やしきたりをきっちりと

守っていかなくてはならない使命がありますからね」

へえ、クロちゃん、たまにはいい事いうね」

いやーー殿下の学友をやっていればおのずと・・っていうか、ここにいる

みんなそれぞれ「家」を無視する事は出来ない連中ばかりでしょう」

そうそう。ハイソだのなんだのって言われてもしがらみの多い家ですから」

そんなもの関係ない」

皇太子は怒鳴った。それでみな、絶句して黙ってしまった。

どうやらかなり酔っ払っているらしく目がすわっている。

殿下、お水を」

気をきかせてキコ妃がつめたい水を差し出したが、皇太子は受け取ろうと

しなかった。

僕は別に皇族に生まれたくて生まれたんじゃない。皇族の生活がどれだけ

堅苦しいか知ってるだろう?義務ばかり押し付けられて。

やる事といったら勉強ばかり。鉛筆一本買うのにも皇后陛下のお許しを

貰わなきゃならなかったことを僕は忘れないね。二言目には国民の税金で

暮らしているんだからって・・制服もお下がりならランドセルもそう。

そんな生活のどこがいいのかわからない。

結婚くらい好きにしてもいいじゃないか。僕が天皇になったら・・・」

にいさま」

宮が途中で言葉を止めた。それ以上言わせるわけにはいかなかった。

そんな事だからいつまでも結婚できないんですよ」

辛らつな一言に皇太子は顔を真っ赤にして「何!」と怒った。

いつまでもって何だよ。いつまでもって

外務省勤務の彼女はダメだと周りが言っているでしょう?なのに今更

話を蒸し返してどうするんですか?価値観が合わないのは火を見るより

明らかでしょう」

どこが違うの。え?どこが」

政治的な癒着を報じられるような人の娘が僕達と同じ世界に生きられると

思いますか?いわば成金主義ですよ。皇室の生活は普通の金持ちの生活

とは無縁です。実は非常に質素でシンプルだという事が彼女には理解

出来ますか?それに、日本一の公害を出した会社の社長の孫です。

国民の賛同を得られるとは思いません」

もうすぐ21世紀になるのに家柄や血筋で決めるなんてよくない。

それに彼女は聡明で学歴も高い。皇室の生活にはすぐに馴染むさ。

怯えさせているのは宮内庁だ」

だから・・人を見る目がないって・・・」

アキシノノミヤは悲しそうに言った。

私もあの人は好きになれないわ。あの方、新人職員はマイカー通勤禁止

なのに堂々と父親の名前で省内の駐車場にマイカー通勤していたんですって。

雑誌に書かれてすぐやめたと言っているけど、そういう「特権」を

ふりかざすような人は」

彼女は知らなかったんだよ。マイカー通勤が禁止だなんて。知っていたら

やらないさ。彼女の父上が教えなかったんだから知らなくて当然だろう」

お兄様・・・そういう風にお考えになるのね」

サーヤはため息をついた。

 

ちょうどその頃、千代田区のある有名ホテルの一室で会合が行われていた。

出席は東宮侍従長のヤマシタ、宮内庁長官のフジモリ、外交官のスノベ

法学者のダンドウ、そしてヒサシだった。

ではオワダさんのお嬢様を皇太子妃候補として決定する事に意義は

ありませんね」

司会役のヤマシタは確認するように回りを見渡した。

全員が黙って頷いた。

フジモリ長官、根回しをよろしくお願いします」

わかりました。でもオワダさん・・本当に大丈夫なんですか?」

何がですか?」

私の見た所、お嬢様が皇室に馴染むとは思えないのですが。ご優秀で

バリバリのキャリアウーマンが皇室のしきたりを受け入れる事は出来ますか」

無論です。私がよく言い聞かせます。なに、あれは頭のいい娘です。

自分が何をするべきかくらい出来ますよ。長官はそこに問題があると?」

いえ・・そういうつもりは。ただ現代的なお嬢様というイメージがあった

ものですし。この縁談を進めるという事は両陛下や他の皇族方を敵に

回しかねない程危険な話です」

大事なのは東宮殿下のお気持ちです」

ヤマシタは遮るように言った。

もし、長官が腰がひけて動けないというのであれば・・・・」

いや、そんな事はないけど

長官は言葉を濁し、立ち上がった。

わかりました。出来るだけの事はしましょう」

泥にはまってしまったようだ。宮仕えの悲しさでもある。

時流がこちらに有利になっている以上、従わねばならない。それが権力者に

おもねる国家公務員の使命だ。

しかし・・・この結婚は波乱含みだ。と、フジモリは頭を抱え込んだ。

先帝が生きていた頃、ヒロノミヤとオワダマサコとの結婚意対して

有名政治家のゴトウダはこういった。

そんな結婚を許したら皇室に筵旗が立つ!絶対に阻止!」と。

あれからほんの数年の間に世の中はすっかり変わって

誰も表立って反対しなくなった。世情が「皇室」から離れつつあることは確かだ。

アキシノノミヤの恋愛結婚が「皇室にも新しい風がふいた」と捉える

国民が多いからだ。

「皇室」=「平民」・・・実はアキシノノミヤの結婚こそ、保守的な面を大いに

持っていた事を国民は知らない。

キコ様は決して今時の女性ではないしなあ・・・」

フジモリはそれを思うたびに、キコ妃が皇太子妃だったらよかったのにと

思うのだった。

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韓国史劇風小説「天皇の母」63(フィクションでした)

2012-07-22 16:30:43 | 小説「天皇の母」61話ー100話

はい、赤ちゃんを抱っこして笑って下さい」

カメラが笑いを誘うと、マサコはスミヨの子供を抱き上げてにっこり笑った。

赤ちゃんはびっくりした目でカメラを見つめる。

オワ、その抱き方はどうかと・・・・」

スミヨは正直、はらはらしながらみていた。

軽い気持ちで依頼を受けた。要請はユミコからだった。

何でもマサコがお妃候補に急浮上するらしいから、ぜひ「学友」として

マスコミ対応をしてくれと・・・・まるで雲をつかむような話。

スミヨだって週刊誌は読むから、オワダマサコが皇太子妃候補として

名前が挙がったことは知っている。

でも、彼女は「自分には関係ない」と言い切ったではないか。

それなのに、なぜ今になって?

それはね。皇太子様がぜひにってしつこくおっしゃるからなの

ユミコは自慢げにそう言った。

うちのまあちゃんは外務省で官僚として生きたいって言ってたのよ。

でも皇太子様は忘れられないみたいで再三お誘いになるの。

相手が皇室じゃ断れないじゃない?

マサコも次第に心が向いてきてね。それで、あなたのような方が「学友」として

ついてくれたらまあちゃんも安心だと思うのよ。

何といってもデンフタ時代の同級生だし」

同級生といっても親しくしていたわけはありませんし。何をどうすればいいのか

スミヨは戸惑いながらそういうのが精一杯だった。

大丈夫。こちらでシナリオは書くから。

普通、小学校時代とか高校時代とか詳しく覚えている子なんていないわよね。

だけど皇族が結婚する時って必ず「学友」が出て来て色々しゃべるじゃない?

それをやって欲しいの。

あなたがまあちゃんの学友で「親友」だったら、きっとあなたにも得があると

思うのよ」

得ですか」

本当にやっかいだ。ヒサシとスミヨの父がたまたま同じ東大出身で

仲良くしていたからといっても、自分はマサコと仲がよかったわけではなかった。

あの子はいつも悪ふざけばかりして周囲を驚かせていたし

自分としてはそういう人って苦手だなと思っていたほど。

社会人になってからの付き合いもない。

それなのに、今になって小学校やら高校時代やらの写真をあれこれ

持ってこられて「このエピソードは何だった?」などと聞かれながら台詞を

つけていく作業。

そして当のマサコは今、自分の子供と一緒にビデオに写って楽しそうだ。

オワ、本当に皇太子妃になるの?」

スミヨはつい質問してしまった。

カメラがストップし、マサコは子供を放り投げるようにスミヨに渡すと

意味ありげな笑い方をした。

さあ

さあって・・・皇太子殿下はマサコさんのこと、好きなんでしょ。でもあなたは

その話、断ったはずよね」

結婚そのものには興味がないっていうか?」

じゃあ、何で今、こんなビデオを撮影しているの?」

それはお父様がそうしろとおっしゃったからよ」

スミヨは絶句した。お父様の言うことなら何でも聞くのか・・・・・

皇太子殿下の事は?」

興味があるかも。日本一のお家柄だし。やっぱり皇太子妃っていえば

だれでもなれるものじゃないし」

すみません、次はウインナーを炒めてくれますか?」

カメラマンが台所に入ったので、マサコは立ち上がりおもむろに

フライパンを火にかけた。

とはいえ、料理など一度もしたことのない娘である。油のしきかたも

わからないし、ウインナーをどういためたらいいのかすらわからない。

それでも「一応出来ます」と笑いながら「ふり」をする演技力には感嘆した。

そうはいっても、コンロの側に子供がよちよちと歩いて行った時には

ひやりとして、慌てて抱っこしたのだが、マサコは気にならないらしかった。

このビデオを一体、いつどんなときに使うのだろう。

これからは頻繁に会わないといけないわね

オワ、皇太子妃になるってどんな事かわかってるの?皇室ってとても

古いしきたりがあってそれをきっちり守らなくちゃいけないし、いつも

色々な人が回りにいるのよ」

それくらいなに?大した事じゃないんじゃない?皇室だって人間でしょ。

たかが学習院出身の集まりじゃないの」

よくわからないマサコの台詞にスミヨは頭を抱えた。

一番信じられなかったのは、こんな意味不明のビデオを嬉々として

撮影しているマサコの気持ちだ。

彼女は単純に自分が話題の中心になる事が嬉しいようだった。

 

ヒサシが外務省の事務次官に就任すると、事は急激に動き始めた。

宮内庁の職員に外務省からの出向組が増え、東宮侍従長になった

ヤマシタを始め、元ソ連大使のナカガワやヤナギヤなどがヒサシに近づき

密かに会合を重ねていた。

政治家などは空気を読むと動くのが早い。

つい先日まで「機密費」がどうの息を巻いていた連中が、週刊誌に

皇太子妃オワダマサコさん再浮上」の記事が載ると、急に声を出さなくなった。

今回の記事は「皇太子の忘れられない恋心」が中心となっており

最初の出会いから6年も一つの思いを抱き続けている皇太子に

同情的な風合いになっている。

宮内庁内では相変わらずフジモリ宮内庁長官が反対しているし

皇族方もおおむね反対の立場をとっていた。

常盤会も当然学習院出身でないマサコには反対の立場をとっていた。

しかし、それらは全て「負け犬の遠吠え」もしくは「時代遅れの人達」

そのものの言い草だった。

華族制度が崩壊し、いまや身分制などないのだ。

皇室だってこっちが敬ってやってるから立場を維持できているのであって

いくらそんな連中が「血筋が」「家柄が」と言っても何も怖いことはない。

要は「権力」さえ持っていれば、そんなものはひねり潰せる。

 

ヒサシはヤマシタを通じてタカマドノミヤに接近した。

タカマドノミヤは「文化交流」を通じて外務省とは繋がりが深いし

お手元不如意の宮家の為に外務省は度々仕事を斡旋。

互いに「金と名声」を交換しあいながら均衡関係を保っていた。

それゆえに、皇太子とマサコの最初の出会いの場を提供したのは

タカマドノミヤだったのだが、その後は交流が途絶えていた。

そこにもう一度楔を打ち込むのだ。

末端宮家とはいっても皇族は皇族。これを味方につければ皇室内の

反対勢力をじわじわと追い詰める事が出来る。

特にタカマドノミヤの父であるミカサノミヤは先帝の末弟だが、今は

長老としてそれなりの発言権を持っている。

戦後は「赤い宮様」などと言われていたくせに、今は保守派の権化のように

マサコの入内を反対しているという。

その父親の牙城を崩すにはまず息子から・・・・・

 

勿論、タカマドノミヤはそこまでヒサシが考えていたとは思っていない。

ただ

今後、皇太子殿下の恋の相談に乗って差し上げてください

とヤマシタに頼まれ、「兄とも慕うタカマドノミヤのご意見なら聞くでしょう」

と持ち上げられれば悪い気はしない。

日頃、東宮職から見たら末端宮家なんて・・・と見下げた態度をされている・・・

と感じている宮にとっては、相手が下手に出るのは嬉しい。

何が出来るの?」

そうですね。まず、マサコさんの人柄をもう一度知るために、

ピアノリアイタルにご一緒されてはいかがでしょう」

ああ・・・中村紘子の。一緒に行けばいいの?」

はい」

宮は軽く応じた。今時有名な外務省の美人キャリアを侍られていると

なればこちらの知名度も上がるかもしれない。

案の定、会場に現われた自分達がマサコを連れている事に会場は

ざわつき、マスコミがしゃったーを切った。

アキシノノミヤケ誕生以来、こんなに注目されたのは初めてだった。

お礼はいかようにもさせて頂きます」

ヒサシからのメッセージを受け取り、宮はにっこり微笑んだ。

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韓国史劇風小説「天皇の母」62(フィクションよん)

2012-07-19 12:36:12 | 小説「天皇の母」61話ー100話

例え、それが嘘だったとしても100回同じ事を言い続ければ

「真実」になると、ヒサシは信じていた。

大衆をコントロールする為には「噂」が必要。そしてそれを裏付けるさらに「噂」が。

 

ある時から秋篠宮家をめぐって一つの噂が流れ始めた。

キコ様はアヤノミヤの子供を中絶している」

という噂だ。

都内のとある病院の産婦人科に父親に付添われてキコさんが現われた。

「さるやんごとなき人の子供を身ごもったが産むわけにいかない」と

父親が説明をしていた。それゆえに堕胎した。あの顔は確かにキコ様だ」

よく考えれば「さるやんごとなき」などという言葉を使う筈はなく、いちいち

おなかの子供の説明などしなくても中絶は出来る筈だが、そこが都市伝説の

信憑性の証明のようなもので。

噂はあっという間に広がり、いつしかそれは「真実」になった。

同時期に今度は「アキシノノミヤにはタイに愛人がいて子供もいる

という噂があった。

これは都市伝説ではなく、週刊誌に堂々と載ってしまった為、宮家としても

黙視するわけにいかず宮は「火のない所に煙が立った」とコメントした。

 

ほぼ同時期に出てきた二つの「噂」にアキシノノミヤケはどうしたらいいのか

さっぱりわからなくなった。

そもそも都市伝説に抗議など出来ない。いくら否定しようとしても

誰を対象に否定すればいいのか。

愛人説の方は宮が否定したにも関わらず、その噂は何度も何度も

週刊誌に取り上げられ、まるで確定事項のように書かれてしまう。

家庭の中では小さなマコ内親王を間に挟んで忙しい日々を過ごしている。

公務・子育て・大学院での勉強。この3足のわらじを履くのは非常にきつい。

宮は意外と短気な所があって、特に時間にうるさかった。

少しでも予定が狂えば側近に迷惑がかかると思うのだろう。

支度に手間取り、数分遅れても「その数分がどれだけ迷惑になるか」

とこんこんと言い聞かせられる。

のんびしとした性格のキコではあったが、意識を変えなくてはと思った。

宮邸には犬や鳥や爬虫類などの動物・生物の類が沢山飼われるように

なり、その世話の仕方も全部キコが覚えなくてはならなかった。

自分の研究に没頭し始めると回りが見えなくなる宮は、結婚して

安心したのかますます「家庭の事は全部任せたから」状態になってしまった。

週に一度参内し、天皇・皇后と共に食事をしているが、そこでは

「そういえばあの時のキコちゃんはね・・・」と皇后の「注意」が始まる。

小さな事でも覚えている皇后の記憶力には舌を巻くが、自分でも

忘れているような小さな失敗を注意されるのは辛かった。

お辞儀の仕方が少し違っていたわ」

「あまり宮にべたべたしないようにね」

「言葉遣いでは・・・・」

そして最後は「私もあなたも民間出身。だからよほどしっかりしないと

回りからどんな事を言われるかわからない」といわれるのだ。

その「どんな事」の中に都市伝説やら愛人説が入っているのだろうか。

「堕胎説」に関してはとても言葉に出来そうになかったし、タイの愛人説に

ついては・・・・それこそ「息子を信じないのか」といわれそうで。

当事者である宮が「気にするな。無視しなさい。皇族とはそういう存在」

などと抽象的にしか言ってくれないし、食事会とはいえ公人である

皇后にどこまで何を言えばいいのかわからない。

出口のない穴に入ってしまったような気がした。

 

そんなある日の夕食会の時。

お兄様は短気ですぐに怒るでしょう?お姉様、やりにくくない?」

口火を切ったのはノリノミヤだった。

いえ・・そんな

私ならお兄様みたいな旦那様は嫌だわ。ものすごく亭主関白なんですもの」

あら、サーヤはどんな旦那様がよろしいの?」

皇后がにっこり笑った。

そうね。優しい人がよろしいわ。どんな時でも私の味方になってくれる方」

アキシノノミヤはそうじゃないのかい?」

「いえ・・あの・・」

天皇の言葉にキコは言葉を濁した。

何でもかんでも妻の言いなりになる夫がいいとは思えないけどね」

と宮が言い出した。

「僕がでんとしているからキコだって心おきなく家庭を守る事が出来るんじゃないか」

そうなの?まあ、お兄様はおもてになるから裏では何をしているか」

サーヤ」

皇后が注意をした。

あんな根もはもない事を気にしてはいないわ。ねえ?キコちゃん

はい。も・・勿論」

私だって本当にお兄様がタイに愛人がいるなんて話を信じているわけじゃ

なくてよ。でも、お姉様が何もおっしゃらないのをいい事にお兄様は

少しほったらかしになさっているのじゃないかしら?

そりゃあ、お兄様がタイの鶏研究に夢中なのはわかるわ。勉強なんだから

仕方ないと言われたら何も言い返せなくてよ。でも、私がお姉様だったら

きっと鶏と私とどっちを大事にするのかって言い出しそうな気がするわ」

アーヤはキコをほったらかしにしているのかい」

天皇ちょっと真顔になった。

そんな事ありません。なんだいサーヤは。言いがかりだろう」

言いがかりじゃないわ。お姉様が痩せられたの、ご存知じゃないの?」

え?痩せたの?」

確かにサーヤの言う事は一理ある。女というのは男性からみたら

どうせもいいような事を気にするものです。私は幸い、そのような事はなかった

けれど。宮の噂は宮妃には辛いでしょう。きちんとお話しましたか?」

言わなくてもキコはわかりますよ。だってキコですから」

なかなか鈍感だったのだね。アーヤは」

天皇が口を挟んだ。

キコは慣れない公務に加えてマコを大事に育てているし、宮家の采配も

大したものだと聞いている。そんなキコに甘えてばかりでいいのかね」

僕、甘えているでしょうか」

まあ・・夫婦のことだし」

と皇后は微笑んだ。

でもどうなの?キコちゃん。本当は気にしているでしょう?」

は・・はい・・あの・・・」

馬鹿だなあ。何で気にするのかな

馬鹿じゃないわよ。お姉様はご立派よ。どなたにも愚痴一つこぼさず

頑張っていらっしゃるのに。でもお姉様、少しがつんとおっしゃった方が

よろしくてよ。タバコをやめなさいとかお酒を飲みすぎるなだけじゃなくて

浮気するなって」

浮気なんてしてない」

あの・・・

キコはやっと言葉を声にした。

私は宮様を信じています

けれど、その瞳からぽろぽろ涙があふれでてしまい、キコはどうにも

ならなくなった。

これはアーヤが悪いね」

そうですわね。悪いのはアーヤですわね」

わかりました。僕が悪いです。キコが痩せた事にも気づかず。笑っているから

てっきり気にしてないのかと。男としてはそういう噂を立てられるのも勲章の

一つくらいに考えていた部分もありますし。でも、はい。僕が悪いんです。

あらためて誓います。僕はキコだけです。彼女を一生大事にします」

まあ、そこまでおっしゃらなくても。何だか嫉妬しちゃうわ」

ノリノミヤの言葉に全員が笑った。

キコもなきながら笑ってしまった。

それにしても週刊誌は何を根拠にあんな記事を・・・・・」

天皇がつぶやいた。

これが小さな始まりであった事を、今はだれも気づかなかった。

 

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韓国史劇風小説「天皇の母」61(フィクションだって)

2012-07-17 06:00:00 | 小説「天皇の母」61話ー100話

事は急がなければならなかった。

皇太子は期待し始めたし、あとはマサコ次第だ。

しかし、当のマサコは皇太子との結婚など考えてもいなかった。

しかし、かといって仕事に集中していたかといえばそうでもない。

実は彼女自身、北米2課で「生き辛さ」を感じ始めていた。

一応「オワダ氏の娘」という事でいじめられたり、迫害されたりという事は

なかったし、彼女自身、そういう事をひけらかす性格だったから

回りがびくびくと自分を取り巻くのは愉快だった。

でも、仕事となれば話が違う。

自分はもっと出来る。

自分は他の人とは違う。ハーバードを出て東大に学士入学し

外交官試験に一度でパスしたバリバリの女性キャリアウーマンなんだから。

そんな自負があるにも関わらず、回ってくるのは単純な事務作業ばかり。

それすら「ちょっと・・・」と注意されることがある。

こんな職場にいたのでは出世できない。

自分は「女性初の総理大臣」と思われているのに、外務省でのこの扱い。

なんと言う女性差別だろうか。

自分より学歴のない女の方が、男性職員からちやほやされて

「気が利くねえ」なんていわれているのを見ると猛烈に腹立たしくなってくる。

恋愛に関してもそうだ。

件の彼は妻と別れる気はないみたいだし・・・・・まだ入省して数年しか

たっていないのにもう行き詰まっている。

 

マサコ、ちょっと話がある」

そんなある日、父に呼ばれて書斎に入った。

お茶を運んできた母は緊張している感じだった。

なあに?」

お前の今後の事だが」

今後のことって」

お前に皇太子妃になって欲しいのだ」

父の単刀直入の言葉はマサコの胸を貫いた。

皇太子妃って・・・あれは冗談じゃないの?マスコミの暴走じゃないの?

何でここで「皇太子妃」の話が?

お前にその気があってもなくても、この話は進めたいと思う」

どういう事なの?」

父のただならぬ雰囲気にマサコは怯えた。

お前に日本で一番家柄のいい家に嫁ぎ、跡継ぎを産んで欲しい。

そうすれば我がオワダ家は天皇家の外戚となる。

そうすれば先祖代々、いわれなき迫害を受け「恨」を抱えていった同胞に

顔向けが出来る。

いいか。日本という国は明治維新後、間違ってばかりなのだ。

半島や中国を侵略し、虐待し、強制的に日本に連れてきた。

日本などという国はアジアにとって迷惑の種でしかない。

敗戦国のくせに散々富を享受し、偉そうに領土権まで主張している。

侵略の事実はなかったことにしたいし、強制連行も慰安婦問題も

なかったことにした国、それが日本だ。こんな卑怯な国があるだろうか。

その象徴が天皇家なのだ。

天皇はその昔「現人神」と呼ばれ、権力を握り、アジア侵略における指揮を

取った。それなのに敗戦後、死刑になる事もなく現在に至っている。

外務省の人間としてこんな恥ずかしい話はない。

だからこそ、私は「日本はそもそもハンディキャップを背負っているのだ。

ここは謙虚にアジアに対して謝り続けなければならない」と主張してきた。

しかし。

その主張は受け入れられるどころか、私を個人攻撃するくらいだ。

そして今、外務省の機密費の件で無実なのに告発されるかもしれない。

それを避ける為には、お前の結婚しかない。

どうか、私、いや、オワダ家の為に皇室にとついでくれ」

マサコは唖然として聞き入るばかりだった。

まあちゃん。私は母親としてあなたをどんな家に嫁がせても大丈夫と

信じて育てて来たわ。結婚って言うのは相手次第。

どんなに相手がいい人でもこちらに気持ちが向いていなければ意味がないし

気持ちが向いていてもお金も財産もない人ではもっと意味がない。

皇太子殿下はどちらも持っている人だわ」

でも私、外務省でキャリア官僚としてお父様の跡を継ぎたいのよ。

お父様だってそれを望んでいたんじゃないの?だから私、沢山勉強して

ハーバードまで行ったのに。あんな背が低くてかっこ悪い人と結婚しろ

なんてあんまりだわ」

容姿はこの際関係ない。お前はいつまで子供みたいな事を言っている?

現実を見ろ。お前の実力でこの先外務官僚として上がっていけると

本気で思っているのか?」

あなた、それはないんじゃないの

お前は黙っていなさい。私だってこんなことをいうのは嫌なのだ。

お前にキャリア官僚は向かん」

その一言にマサコは衝撃を受けて黙り込んだ。

知らず知らずに涙すら浮かんでくる。

今の一言は自分が今まで生きてきたこと全てに対する否定に思えた。

それをそんな大事な一言を、父は何であっさりと口にするのだろうか。

私にキャリアは向かないって・・・・どうして」

どうしてもだ。しかし皇太子妃なら出来る。なぜならみんなお前に

ひれ伏すからな。お前はそういうのが望みだろう」

皇太子ってそんなに偉いの?天皇家って何?私には全然わからないもの。

それに、アジア侵略をしたような家になんで私が行かなくちゃいけないの」

私のため。オワダのため。最終的にはお前の為」

・・・・・」

もし機密費の件で捕まったらお前は罪人の娘だぞ。それでもいいのか」

・・・・・」

おろおろしているユミコは必死に慰めようとした。

まあちゃん。皇太子というのは将来天皇になる人なの。天皇家は日本で一番

お金持ちで尊敬される家柄よ。将来、皇后になったらミチコ様のように

なれるわ。綺麗な服を着てどんどん外国に行って」

外国・・・・?

ぴきっとマサコの目線が揺れた。

そういえば帰国してから仕事が忙しくてあまり外国にいけない。

マサコの脳裏に、外国で話題の中心になっている自分の姿が浮かんだ。

でも、あの皇太子の横に立たなくてはならないなんて。

どうだ」

今のままではただ外務省に勤めているという立場で終わってしまう。

心の底では自分を馬鹿にしている同僚や上司に一泡吹かせてやりたい。

皇太子妃になればみんな驚くし、跪くだろう。だって立場がちがうんだもの。

これはもしかして壮大な「しかえし」になるのではないか?

具体的に誰がどう自分を馬鹿にしているかなんてわからなかった。

でも、、鳴り物入りで入省した自分が取り立てられないのは嫌がらせにしか

感じられない。

考えてみると外務省というのは旧弊な場所なのだ。

男女差別も激しいんだろう。自分が皇太子妃になればそこに風穴をあけられる。

わかったわ・・・お父様の言う通りに」

マサコはそう答えた。

 

自分を受け入れない場所に対して敵対心を持つのはマサコの癖だった。

勝手に理屈をつけて正当化するのも。

考えると父の「お前はキャリア官僚に向かない」という言葉は激しく彼女を

傷つけたが、そんな父に対しての最も大きな仕返しが皇太子妃になる

事ではないかと・・・・マサコは考えた。

そして娘の思考回路を読んでいた父は、その成り行きに一応満足した。

 

あとは・・・都市伝説だ。

 

 

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