ふぶきの部屋

皇室問題を中心に、政治から宝塚まで。
毎日更新しています。

月組 エリザベート

2018-10-25 07:00:00 | 宝塚コラム

 後ろの席にいる若い方々が「エリザベートってめちゃくちゃストーリーも音楽もいい話じゃん」と言っているのを聞いて何だか時の流れを感じてしまいました。

誰もが見慣れていると思ってはいけない。それが「エリザベート」ですね。

 毎回気になる演出改悪点

 シシィが木から落ちた後のトートの登場

以前はコーヒーカップみたいで笑えると思ったんですが、今回はトートが骸骨を持っているし椅子の感じがまるで・・・ぷっ・・・まるで・・・ホーンテッドマンション

怖くないのよーー笑ってしまうのよーー何でこんなシーンを付け加えたんだか。椅子が回るなんて変だし移動するのも変だよーーイケコー

 

 ミルクのシーンでの全員銀橋

月組というのは過去2回「エリザベート」を上演しています。1度目は彩輝直、二度めは瀬奈じゅん主演で、どちらも欠点として言われたのが「コーラスの迫力不足」です。確かに過去2回を見た時には、大勢いるのになぜかコーラスに迫力がないと思っていました。そこでイケコさんは庶民たちを銀橋に出してトートを真ん中に歌い上げる方法をとり、今に至るのですが、私はこれが大嫌いです。

何でって、トートが背が低いというのが丸わかりだからですよ

トートが銀橋で人間たちと並んじゃったら「黄泉の皇帝」もへったくれもないじゃない?ここは距離をおくべきだと思います。今回は珠城りょうにあまり存在感がないので余計にダメダメなんですよね。

 今回の月組全体の印象

ハプスブルク家の家族物語に見えました。息子が可愛くて大事に育ててきた皇太后。そしてそんな母を尊敬しているから逆らえない皇帝は意志もちょっと弱そう。そんな彼がはちゃめちゃに元気なエリザベートと結婚したんだけど、しょっぱなから嫁姑戦争に巻き込まれて戸惑うばかり。「私はマザコンではない。ただ母が好きなだけだ。でも嫁も愛している」なんでうまくやってくれないの?ってエリザベートの方が分が悪い。でもどこでもよくある話で、それが何でペーパーナイフで死を選ぼうとまでするのかさっぱりわからない。一つ一つおおげさなんじゃない?って思えてくるんです。

おとなしくて回りに逆らえないフランツ・ヨーゼフの血を色濃く引いているルドルフはお父さんそっくりの性格で思いがけなく独立運動に巻き込まれてしまって、おまけに「皇位継承は難しいぞ」なんていわれてびっくり仰天。慌ててママに助けを求めたけどなしのつぶてで・・ああ、僕ってこういう奴だよね。いつだって僕の人生は思い通りにならないし誤解されてばかりだよ・・・もう生きるあてもないやといって死んじゃう。

で?じゃあトートはエリザベートの何なんだ?それがわからないから困っちゃうわけです。エリザベートの影でもなければ意志もでなく、そうかと言ってエリザベートに恋をする黄泉の皇帝でもない。いらない存在です。

「エリザベート」を上演すればするほど、「一体トートはエリザベートの何なのよ」という疑問が演じる側にも見る側にも生じてきます。

 一路真輝版 → 「死」は人間にべったりと張り付く影のよう

 麻路さき版 → 黄泉の皇帝がエリザベートに恋をした

どこの組もどちらかのトートに寄り気味になりますが、近年は一路版に近く行こうという方針なのでしょうか?そういう演じ方でうまくいったのは近年では水夏希だと思います。爬虫類系のメイクに髪型も個性的でしたが、どこか悪魔的な嘲笑がみられとてもよかったと思っています。

でもそれなりの工夫をしないと、トートが凡庸になってしまう。そこらへんにいるストーカー男と変わりがなくなってしまうんですね。

朝夏まなとも珠城りょうも今一つ「トートはエリザベートのなんだろう」と考えられなくてとりあえず型通りにやってみました風でした。東宝版と宝塚版の間で悩むトートの気持ちがわからないではないのですが、せっかく黒天使を率いていることですし、もう少し「個性」を打ち出して振りをかえても良かったんじゃないの?と私は思います。

「ベルばら」もそうですが、「型」だけが一人歩きして全然心が伝わってこなくなっている・・・それが今の「エリザベート」なんです。

そしてそれはトートだけでなくエリザベートも考えないといけない。心の中に自我と孤独を併せ持つエリザベートを演じる時、やはり参考になるのは花總まり版か白城あやか版になると思うのですが、最近ではより「エリザベートってわがままじゃない?」と思わせてしまうことが多く、それは多分に「孤独」を表現しきれてないからなんです。何がそんなに孤独なのか、何がそんなにつらいのか、見る側にはっきりわかるように演じて欲しいと思います。

 出演者について

珠城りょう・・・一口でいうと東宝版初演の山口祐一郎みたいな・・・登場した時から「普通の人」で、トートいう役がどうであるかというより、とにかく言われた通りにふるまわないといけないという事が先立ってしまい、一つ一つの仕草に個性がなく、自己アピールすらないんですね。おまけに背丈はエリザベートの方が高いものですから、トートの面目が立たないっていうか。

一番気になったのが「音のずれ」です。半音まではいかないんですけど完璧に音がずれてますよね。全ての歌で。「最後のダンス」ですごくそこが気になってしまい、以降トートが歌う度に「半音低い」という気持ち悪さが残るんです。よくルドルフは音程を外さずに歌えるもんだと感心しました。

その「最後のダンス」でも黄泉の皇帝の威厳を見せられず、衝立から出てくるときもあまり怖くもなく、1幕最後の銀橋寝そべりでも怒りも悲しみも何も感じず、とにかく怖くない。

エリザベートが倒れてドクトル・ゼブルガーになっている所は背中を曲げて「お歳より感」を出したんだなということはわかるけど、エリザベートのリボンを外すシーンも色気も怖さもなく、看護しているみたいで。「あなたはっ!」って驚くエリザベートに「いやいやそんなに驚かなくても、この間だって喧嘩してたじゃん」って言ってしまいそうで。

死んだルドルフにキスする時も多分にルドルフの方が背が高いので不格好になるというか・・・棺桶に立つのも意味があるのか?と思ってしまい。

ラストシーンはほぼ無表情で歌っているんですけど、トートさん、あなた、嬉しいの?征服したぞーて感じなの?何なのよーー エリザベート一人で盛り上がって行ってるぞ。

 

愛希れいか・・・そもそもちゃぴ様は女帝と呼ばれつつもあまり美人ではないんです。どこに気品を感じるかといえばダンスでならしたそのお振舞です。元男役だけあってさっぱりしててリーダーシップに長け、明るくて強いって感じです。だから陽の役なら本領発揮出来るけど、「陰湿で孤独でこだわりが強い」なんて役柄は全然に合わない。

だってこのエリザベートは非常に幸せそうなんですよ。フランツ・ヨーゼフと「永遠のすれ違い夫婦」とか言ってるけど実は全然すれ違ってなくて息がぴったり。「エーヤン・ハンガリー」では自分がーーというより完璧に皇帝陛下のお力になりたいんです感満載。これでまた夫婦に子供が出来るわねーーって感じ。1幕最後も無事に仲直りしてまた子供が生まれそうみたいな幸せ感があるんです。

そんな彼女の優しさは病院訪問で発揮されて、ヴィンディッシュ嬢を抱きしめる姿は自分を憐れんでいるんじゃなくて一人の患者として「慈愛の皇后陛下」でしたよ。だからルドルフに冷たくしたのもたまたま旅で疲れていたからかなーーって思ったりして。「夜のボート」ほど説得力のないシーンはありませんでしたね。

外部へ行ったら「1789」のアントワネットでお願いします。

美弥るりか・・・病み上がり?だから?それとも役作りで?いやにひ弱な印象をうけました。きっと病弱だったからゾフィーに大事に育てられてきたんだろうな。そういう母の気持ちがわかるから逆らえないんだろうなあ。いい息子じゃん的な?

発声が弱いのはしょうがないので、よけいにひ弱に見えて、それがまたわかるわーーてきな共感をえてしまいました。お友達は「美弥ちゃんはフランツが合わない」って言っていたけどそんな事ありませんでしたよ。

 

月城かなと・・・代役のフランツ・ヨーゼフを経てルキーニを演じ、今回は月組の救世主というかとにかく何もかも+に動いた月城かなと。私から見るとさしたる欠点もなく、可もなく不可もなくといったところでしょうか?「ミルク」のシーンでちょっと怒った所はトートより怖かったし、最後、ナイフを受け取るシーンの豹変ぶりは本当に彼女なりによく考えたシーンなんだと思います。ただ、トートがトートなだけに子分でもなく仲間でもなく、単なるナレーションに見えなくもなかったです。

暁千星・・・ルドルフ。私、風間柚乃のすごいルドルフは見てませんから比較しようがないのですが、風間柚乃のルドルフの方が年長に見えて、しかも国家を憂う皇太子になっていたのではないかと。暁千星のルドルフはそこまで思ってなかったけど、なぜかエルマー達にそそのかされて、知らず知らずのうちに急進派の手先にされてしまい、心の準備が出来ないまま闘争に入って、気が付いたら皇帝に叱られて絶望しちゃった感がすごかったです。思わず可哀想で泣いてしまいました。こんなに血の繋がりを感じた皇帝とルドルフは初めてでそれだけによけい、父親から皇太子失格の烙印を押されて悲しかったんでしょうね。おまけにママにまで拒絶されて。

前述したようにトートの外れた音程によく惑わされず歌い切ったと思いますし、今の月組で発声が最もいいのは彼女です。でも彼女は童顔だし、丸顔だし、演技力の点でいうと今一つなのは認めざるを得ません。社会的経験が少ない。それを補うのは読書とか舞台を見ることだったりします。どうか暁千星には今一度星組版の「エリザベート」を見て、演技を作るという基本を学んでほしいと思います。今の暁千星は演技を作るといってもちょっと「ごっこ」的にしか見えないので、なかなかいい評価が出てこないんじゃないかなと思うんです。自分を見せるということ、自己アピールするということ、そして視線の先には観客がいるということを肝に銘じて頑張ってほしいと思います。

風間柚乃・・・シュテファン。やっぱり大人っぽいし演技力もあるんです。この子は伸びるでしょうね。華という点で今後どうなっていくかなと思いますけど、実力だけでどこまで上がれるか楽しみです。

蓮つかさ・・・エルマー。蓮つかさを見るといつも「革命」が思い浮かぶ程、そういう役がピッタリで、物語にリアリティがでる貴重な男役です。もし蓮つかさがルドルフだったらこれぞ完璧だったかもしれないと思う程です。この実力派を何とか上に上げて欲しいです。

 

憧花ゆりの・・・非常に息子が一番なゾフィでした。今までのゾフィは単に意地悪か国家の母としての自覚に溢れているかどっちかしかなかったのですが、最初から最後まで「皇帝の母」としてのゾフィであったことは貴重です。っていうか、息子の事しか心配してないわけで、そこにあんな嫁が来たら怒るわねと。その怒り方も静なのでよけいに怖いというか。最後なので衣装はほとんど新調。どれもよく似合って素敵でした。

海乃美月・・ヴィンディッシュ嬢。気が狂ってるとは思えないです。どちらかというとうつ病で、回りに止められたので悲しくて頭をおおって泣いている。その姿があまりに可哀想でちょっと涙。ヴィンディッシュ嬢としては間違った演技なのかもしれませんが、こういうのもありかなと。

 

 

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする