よし坊のあっちこっち

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見て見ぬ振りは塀の中 (Don't Turn Your Blind Eye)

2013年02月18日 | ビジネス横丁こぼれ話
厄介なことに巻き込まれたくないから“見て見ぬ振り”をする。よくある事だが、そのツケの大きさを後から知る。それで人生を台無しにするのがアメリカ。甘い日本では考えにくい事だが、文化的社会的な違いがそうしている。端的に言うと、日米間でルールの厳しさに雲泥の差があるということだ。この国では「見て見ぬ振り」は許されない。不正や事件の現場では刑事罰の対象だから、日本人のように能天気に構えているとアッと言う間に転落する。そんな厳しい国に住むアメリカ人でも、いざとなったら見て見ぬ振りをしてしまう。そこが人間の悲しさだ。輝かしい人生の勲章をもぎ取られ、塀の中に消えていく。

そのお手本の様な事件が、一昨年全米のスポーツ界を揺るがした“サンダスキー事件”である。著名なアメフトのコーチ(日本でば監督)を擁していたペン・ステート大学のアメフトチームのアシスタント・コーチが長きに渡って少年達に対し、性的暴行を働いていたことが発覚した事件で、まだ記憶に新しい。事件というのは、発生当初はなかなか全貌が見えないが、その後の裁判の進捗によって事実が明るみに出て、真相に近づいていく。この事件も捜査が進むにつれて、新しい事実が次々と明らかになり、“見て見ぬ振り”をした為に受けた大きなダメージに皆ショックを隠せないでいる。

まず、全米アメフト史上“最高のコーチ”と賞賛されていたジョー・パテルノの輝かしい公式記録は剥奪となった。モレステーションという犯罪行為の報告を受けていながら、何らアクションを取らず“見て見ぬ振り”をした為である。彼は、事件のあと、病気が顕在し、あっという間にこの世を去った。余程ショックが大きかったのだろう。しかし、生きていたらもっと辛い日々が続いたはずだ。もう一人、当初は無傷かと思われた大学の学長。幹部達とのEメール交信で報告を受けていた事が発覚。“見て見ぬ振り”をして起訴された。

全米大学体育協会は、不祥事を起こした大学そのものにも厳しい制裁を下した。まず、罰金6000万ドル。約48億円である。これはペン・ステート大学のアメフトの年間収入に匹敵する。更に4年間の試合禁止。最後に各種スポーツの奨学金カット。当初はアメフトチーム解体も論議されたが、それだけは免れた。しかし、“真綿でじっくり絞める死刑“みたいなものだと評されているように、将来的存続が危ぶまれている。この他にも、性的暴行を受けた被害者からの集団訴訟を控えており、金銭的な問題だけでなく、失墜した大学イメージを回復させるのは至難の業のようである。

Don’t turn your blind eye. いかなる組織の責任者もすべからく肝に命ずべき事の様だ。