よし坊のあっちこっち

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クロンカイトの教え -揺れるNBC ニュースアンカーのスキャンダル

2015年02月12日 | アメリカ通信
この10日間は三大ネットワークの一つNBCにとっては激動の10日間であったに違いない。NBCの顔ともいうべき、ゴールデンタイムのニュースアンカー、ブライアン・ウィリアムスの当座の処分が”無給6ヶ月間降板”と決まった。伝統あるアンカーマンの末席を文字通り”汚して”しまった。

事の起こりは、2003年のイラク戦争の現地取材に遡る。被弾して帰還した攻撃ヘリを前にして、あたかも自分が搭乗し、危うく危険な目にあったかのような報道をしたのだ。その後、トークショーを含め、機会ある毎に、同じような内容の話を続けてきた。”危険な状況でも報道に立ち向かうニュースマン”を見せ続けた。あまりなテキトーさを感じたのか、当時のパイロットはフェイスブックでつぶやいたからたまらない。”全米No.1アンカーの嘘”が知れるところとなった。

アメリカの良心、と言われたCBSニュースのアンカー、ウォルター・クロンカイトの第二次世界大戦時の逸話がある。彼には戦時報道における行動規範を設けていた。「Never self-aggrandise」。自分の行動を自慢げに話したり目立とうとする言動をしない事。ニュースマンの仕事は事実を正確に伝えることだと説き、Self-Deprecation(自分を目立たせない)を信条としていく。

逸話その1。欧州戦線を決定付けたノルマンディ上陸作戦。有名なオマハビーチの戦い。そのビーチを最初に飛んだのがクロンカイトだったのだが、後年、あなたがオマハビーチを飛んだ最初の記者なのでは、とのインタビューに対し控えめな答えをしている。「恐らくオマハビーチだったのだろうが、当時はビーチの名前など知らされていなかったから、私が飛んだのは”ビーチ”に過ぎないのだよ」。

逸話その2。オランダ上空でドイツ軍の攻撃に遭い、ジャガイモ畑に不時着したのだが、そこは連合軍に開放された地域であった。彼の仕事は、ドイツ軍攻撃で不時着したことを報じることでなく、開放された町が祝う状況を伝えることであった。

人間は自分をよく見せ、自慢したい気持ちがどこかにある。しかし、ニュースマンはニュースマンであって、ショーマン(Showman)ではない。ブライアン・ウィリアムスは事実をでっち上げたショーマンを演じてしまった。6ヶ月の降板後どうなるかが取り沙汰されており、その一つが復帰であるが、どう考えてもそれはあるまい。視聴者が彼のニュースを”眉につば”をつけて聞くようになれば、視聴率は壊滅的打撃を受けること必死である。