よし坊のあっちこっち

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レーガンとトランプ

2017年09月04日 | アメリカ通信
トランプ政権の迷走が止まらない。ケネディ以来現在までの大統領の中で異色の経歴を持ち、サプライズ当選を果たした大統領にレーガンがいる。政権スタート当初は迷走も危惧されたが、終わってみれば輝かしい業績を残し、近年の大統領の中ではトップランクの評価を受けている。両者共に異色の経歴ではあるが、政治家としての資質は雲泥の差があるように見える。トランプをいまだに政治家と呼んでいいのか、と迷わざるを得ない。

俳優出身のレーガンが、カリフォルニア州知事として政治の世界を経験しているのに対し、トランプは実業家の背景しかない。これは重要かつ決定的な違いである。オーナー実業家は、その発する言葉がルールとなり、誰も反論する者はいない。気に食わなければ「You are fired」と簡単にクビに出来る。大統領になってもこのスタイルが抜けないから迷走が止まない。

昨年、ナンシー・レーガンが亡くなったのを機会に、レーガン大統領の偉業達成の陰には常にナンシーの存在が大きかったことが語られ始め、長年ワシントンの政治世界を見てきた或るジャーナリストによれば、「お互いに信頼し合う、最強のチーム」と言わしめている。

元々レーガン大統領は、民主党に対しては巧みな言葉使いで舌鋒鋭く迫るスタイルを身上とし、国際政治では強硬な反共スタンスの持ち主であった。ナンシーから見ると、このままいけば大した大統領にはなれまいと、理念だけでなく実務的にも成果を上げられる大統領にするにはどうすればよいか、を共に考え、陰で支えようと決める。

中絶反対の声が強まり、女性を法律で縛って追い込む流れが出てきた時、大統領として中絶反対の声に理解を示しても、女性の権利を尊重し、具体的な法案で女性を追い込んではいけない、と説得している。ゲイに対する差別が広がる中、積極的にホワイトハウスに彼らを招き、政権の差別反対のイメージを見事に作り上げている。

議会対策では、対民主党強硬路線を和らげ、超党派議会運営へと転換させる黒子を演じている。更に、旧ソ連との対話さえ拒否していた反共の士を翻意させ、時のゴルバチョフとの間で大陸間弾道ミサイルの削減に漕ぎつけ、ゴルバチョフとの強力な信頼関係を築いた。その結果ソが連崩壊につながったことは記憶に新しい。冷戦に終止符を打った立役者である。

ナンシーは大統領のよき理解者、アドバイザーであった。会社で言えば、出過ぎず、社長に花を持たせる、よく出来た大番頭である。今のトランプとその周囲には望めない事である。