よし坊のあっちこっち

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コマネチを知ってますか? (4)訪れたチャンス、決断、そしてアメリカへ

2017年11月23日 | アメリカ通信
国内に閉じ込められ、失意のうちに6年が過ぎようとしていたある日のパーティに、その男はいた。アメリカのフロリダに住むその男は、数年前にダニューブ川を泳いで西側に脱出亡命したコンスタンチン・パナイートであった。そのパーティで彼はコマネチに国を脱出しないか、と持ち掛けた。その意思があるなら手助けをすると言う。正体不明のパナイートではあったが、コマネチは考えた。このようなチャンスはそう訪れるものではない。後にも先にも唯一のチャンスかもしれない、と。

出国すれば二度と家族には会えないだろうと思ったが、脱出を決断し、家族に告げた。家族もコマネチの希望をかなえようと後押しした。

冬の寒い夜、ハンガリー国境を目指して歩き始めた。国境近くまでは、最も信頼していた弟が付き添った。ハンガリー側の国境管理の担当者には、徒歩で来た少女が、かつて世界中を沸かせた、あのコマネチであること、そして目的が何であるかは瞬時に分かった。これほどの有名人、追い返すことも出来ただろうが、担当者は何も聞かず、ハンガリー入国の許可を出した。こうして、コマネチは脱出の手引きを手伝うパナイートが待つオーストリア国境を目指し、彼と合流後、米国大使館へ駆け込み、ニューヨーク行きのチケットを手にしたのである。かくて、コマネチはアメリカに新しい第一歩を踏み出したのだが、更なる波乱が待ち受けていた。